本当に「関ヶ原」と化した千代田区長選。現職地滑り的圧勝

新田 哲史

選挙戦最終日に石川氏を応援した小池知事(4日、千代田区・飯田橋で:筆者撮影)

東京・千代田区長選は5日、投開票を迎え、NHKが午後8時ちょうどに「当確」を出し、小池都知事が支援する現職・石川雅己氏が5選を早々と決めてしまった。報道機関の出口調査の中には、自民党都連が推薦した与謝野信氏の約3倍の差を付けたところもあるなど予想以上の大差。「第3の候補」五十嵐朝青氏も含めて寄せ付けなかった(※追記・文末に最終結果)。

石川氏は高齢こそネックだったが、待機児童ゼロ、病児保育、23区で唯一の高校生までの医療費無料、介護世帯へのサポートなど、豊かな財政基盤をフルに生かした手厚い福祉施策の実績が、旧住民からタワマン族の新住民まで支持を得た形だ。

小池知事が自ら「代理戦争」と言い切ったあたりの凄みに目を見張ったが、事実上の都議選の前哨戦であり、「都議会のドン」内田茂・都議のお膝元とあって、与謝野氏の擁立が決まった時点では、小池陣営も当初の楽勝ムードが一変。産経新聞が「25人の区議のうち、20人程度が与謝野陣営に付いた」といった報道をし、熾烈な選挙戦も一時予期されたが、某政党が水面下で行った情勢調査では、終始石川氏がダブルスコアで圧勝するという数字をはじき出しており、その通りの展開になった。

「関ヶ原」の西軍のように与謝野陣営の区議が動かず

選挙戦中は、アゴラでも小池陣営の伊藤陽平・新宿区議と、都議会自民党の川松真一朗都議が論争を交わし、私も編集長としてレフェリングするなど、今回の選挙戦は、純粋に第三者の立場から各方面の取材・情勢を分析してきたが、先日、「関ヶ原の戦い」に例えた通りの展開になってしまった。

蓋を開ければ、与謝野陣営は5000票にも満たず、陣営に参集したとされる20人近い区議たちの持ち票(区議選での総得票数)どころか、主力のはずの自民区議が区議選で獲得したコア票のはずの8000票も大きく下回る「惨敗」。リンク先の記事でも触れたように、一部の自民区議だけしか本気で組織を動かしていないという情報が入っていたが、この結果はそれを裏付けた形だ。

関ヶ原の西軍は、毛利勢、小早川勢などの主力が戦略通りに動いていれば東軍に勝てた可能性が高いわけだが、さすがに小早川秀秋のように露骨に造反した者はいなかったものの、多くの区議が事務所には顔を出していたが、戦場にだけは現れた毛利勢のように「動かない」選択をした区議が多かったとみられる。

もっとも、なぜ動かなかったのかは、小池知事の支持率が高くて夏の都議選での小池新党の躍進を恐れたからという単純な理由だけではないようだが、西軍のお家事情はともかく、この圧勝結果を受けて、テレビを始めとするマスコミ報道は、「小池陣営が都議選に非常に大きな弾みをつけた」という評価一辺倒になる。「小池圧勝」の世論が醸成されていくに連れ、内田都議の求心力低下は避けられず、都議会自民党の中で、すでに水面下で新たな動きを模索している都議たちの「造反」が表面化しそうだ。都議会政局は非常に混沌とした情勢になるのは必至だ。

舞台は都議選“夏の陣”へ

「関ヶ原」はあっけなく終わった。そうなると次は「大阪の陣」だが、東軍・小池陣営は“幕府”の基盤固めへと順当に進むのだろうか。

小池知事にとっては豊洲移転問題というアキレス腱はある。豊洲問題での「石原バッシング」を百条委などの政治ショー化に舵を切ったり、あるいは豊洲移転を中止するといった極論に走ったりすれば、今の追い風がどうなるかはわからない。ネットではここのところ、小池人気が微妙になっているという向きもある。

とはいえ、劇場型選挙の流れを作るのは、まだまだテレビの影響力が圧倒的だ。小池氏の巧みなテレポリティクスが、どこまで発揮できるのか、今後も推移を見守りたい。そしてアゴラでも、小池劇場を巡る当事者たちによる白熱した政策論議を期待したい。

※確定票など深夜に改めて更新します(20:05)。

※追記・千代田区選管発表の最終結果(22:20)
当 石川雅己  無所属 16,371
  与謝野信   無所属  4,758
  五十嵐朝青 無所属  3,976

開票率(%)100.00
投票率(%) 53.67(前回42.27)

新田 哲史
ワニブックス
2016-12-08

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