日銀は1月31日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定した。1月25日の国債買入で予想された中期ゾーンの買入をスキップし、27日には5年超10年以下の国債買入を前回の4100億円から4500億円に増額するなどし、「保有残高の増加額年間約80兆円」というめどの数字を修正、もしくは削除してくるのではとの見方があったが、それは今回見送られた。
すでに日銀は金融政策の調節目標をマネタリーベースという量から、長短金利という金利に変更しており、国債買入額の「80兆円」という数字にあまり意味はない。むしろ来年度の国債発行額の減少や、物価等のファンダメンタルズの好転による長い金利の上昇に伴う国債への国内投資家ニーズの増加を考慮すると、80兆円という買入はかなり困難になることが予想される。それでも外為市場や株式市場への影響等も考慮するとなかなかこの数字を下ろすことはできないようである。ただし、国債買入における調整は今後も継続されるとみられ、日銀の国債買入はかなり柔軟なものとなるであろうと予想される。
日銀は31日に展望レポートも公表した。ここでは2016年度と2017年度の経済成長率見通しをそれぞれ上方修正した。2016年は前回10月発表分の1.0%から1.4%に、2017年度は同1.3%から1.5%に上方修正した。また消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しは2016年度分は10月のマイナス0.1%からマイナス0.2%に下方修正したが、ここにきてのコアCPIの足元数値を確認してのものとみられる。2017年度については1.5%という強気の数字を維持している。ただし、2月のコアCPIあたりからプラスに転じると予想されており、1.5%と言う数字はさすがに高いとみられるが一時的にそれに近い数字となることもありうるか。しかし、今後の見通しについては展望レポートで日銀は次のようなリスクも指摘していた。
「経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、海外経済や中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に、下振れリスクの方が大きい。」
海外の懸念材料とは、具体的な名前は出してはいないが、いわゆるトランプ米国大統領の登場とトランプ大統領による保護主義的な政策への懸念が挙げられよう。さらには保護主義的な政策がフランスやドイツの選挙などを通じて拡大する懸念を示しているのではないかと予想される。たしかに今年の経済や物価のリスクとして、これは意識せざるを得ないとみられる。
*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***
「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。
ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)
講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年2月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。