男性よりも女性のようが知力・情緒力ともに上手(うわて)であり、夫よりも妻の方がはるかに奸智に長けていると、私は書籍等で何度も述べています。もちろん、モラハラ等のDV夫は別問題です。尾藤氏に以前ご紹介いただいた記事でも同様の内容が述べれています。
その結果、それなりの財産のある夫婦の離婚では、夫が損をするケースが圧倒的に多いと感じます(ただし、財産がなく夫の収入も不安定な場合は、職のない妻にとっては悲劇ですが…)。
ところが、離婚に際して夫に強力な援軍が現れることがあるのです。
夫の母親や姉、つまり「夫側の女」です。
大昔から、「嫁姑問題」が家庭内のトラブルとしてドラマや小説で描かれてきました。実際に、嫁が姑に恨みを持つことが多かったようです。
別居していても姑を天敵のように嫌う妻がたくさんいます(もちろん、同居していても仲のいい嫁姑もいます)。
夫と子供達と東京で暮らしていてる妻が、年に2度の里帰りが憂鬱でたまらないという話を何度となく耳にしたことがあります。簡単に騙したり丸め込める夫と違って、同じ奸智を持った女である姑は油断ならない相手なのでしょう。
拙著でご紹介した「子供は別の男の子供だった」という実話で、子供が夫の子ではないのではないかと最初に疑ったのは姑でした。夫は自分の子供と信じて疑わず、離婚によって離れて暮らさなければならないことを本当に嘆いていました。息子を育てた経験を持つ姑が、孫を見て「どうも息子の小さい時に似ていない」と直感的に感づいたのかもしれません。
それ以外の離婚事件でも、妻の隠し口座を夫に代わって発見したり価値のある動産の引き渡しをしっかり指摘する姑が何人もいました。夫の姉が妻の弱みを見つけたこともありました。
夫側の女性陣が表立って活躍した例は、私の経験値では十数件にすぎないので一般化はできません。
しかし、母親や姉のアドバイスを自分の意見として語っていた夫がいたとすると実数はもっと上がります。
和田秀樹先生が書いた「マザコン男は買いである」というタイトルの本がありますが、精神科医ならぬ弁護士の私としてはマザコン男は避けたほうが無難だと断定します。
息子の離婚事件で裁判所に付き添ってくる母親は思いのほか多いのです。
60歳の息子の離婚事件に80をゆうに超えた母親がすごい形相で控えているのを見たときはさすがにすくみました。
市役所の法律相談では、息子の代わりに離婚の相談にやってくる母親が本当にたくさんいました。「ご子息はおいくつですか?」と尋ねると「40歳」「50歳」という答えが返ってくることがザラでした。しかも、遠方に暮らしているケースの方が多かったのです。
離婚問題に介入してくるのは、決してマザコン男の母親だけではありません。普通の母親や姉なども介入してくることがあります。
そのあたりを斟酌すると、マザコン男は「買い」ではなく「売り」(正しくは「スルー」)でしょう。
離婚まで至らなくても、結婚生活が鬱陶しくなること請け合いです。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。