【映画評】素晴らしきかな、人生

渡 まち子

ニューヨークでの広告代理店を経営するハワードは、最愛の娘を亡くして以来、深い喪失感から仕事もプライベートもままならない。やがて会社の業績も悪化し、ハワードの同僚たちも気が気ではない。そんな時、ハワードの前に3人の奇妙な舞台俳優たちが現れた。年齢も性別も異なる3人は、ハワードに次々に謎めいた言葉を投げかける。そんな3人との出会いでハワードの人生は少しずつ変化していくが…。

愛するものを失って絶望した男が、愛、死、時間などの抽象概念を演じる3人の舞台俳優たちとの交流によって再生していくヒューマン・ドラマ「素晴らしきかな、人生」。愛する娘の死で、心が壊れてしまったハワードを心配する仲間は、ハワードのことはもちろん、傾き続ける会社の心配もしている。そんな彼らが思いついた突拍子もない秘策が、ハワードを救うべく動き始める…というハートウォーミングなストーリーだ。主演のウィル・スミスをはじめ、オスカー俳優、ノミネート俳優たちが大挙して出演するなど、名優たちの競演が贅沢である。

舞台となる大都会ニューヨークのおしゃれな風物も見所だ。傷ついた主人公の再生は、無論、いい話である。ハワードが何度も通うセラピーの主催者の女性との顛末にも感動するだろう。ただ、ハワードを救うプランが、あまりにも手が込んでいる上に、展開が都合が良すぎて、正直、引いてしまった。「プラダを着た悪魔」で鮮やかな手腕をみせたデヴィッド・フランケル監督だけに、笑いも感動も中途半端な出来栄えではがっかりさせられる。ちなみにジェームズ・スチュワート主演の名作クリスマス映画とはまったく関係ないので、ご注意を。…というか、本作にこの邦題って、どういうセンスなの?!何と言ってもこれだけの豪華キャストを集めておきながら、凡庸なお涙頂戴映画に成り下がったのが、あまりに惜しい。
【45点】
(原題「COLLATERAL BEAUTY」)
(アメリカ/デヴィッド・フランケル監督/ウィル・スミス、ケイト・ウィンスレット、ヘレン・ミレン、他)
(豪華キャスト度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。