来月になれば新入が入社してくる。では、新入研修に効果的なコンテンツとはなんだろうか。新人研修でまず思い浮かべるのが“マナー教育”ではないだろうか。特にCA出身のマナー講師は人数も多くバリエーションも豊富である。
航空機が定時発着を実現するためには、空港地上支援業務などのグランドハンドリング、整備、クルーの役割が一体化して機能する必要性がある。そして、社員を巻き込むための理念やビジョンが必要になる。このような企業努力をサービスに転嫁することは容易ではない。
今回は、現役CAの丸山美子(仮名)氏にCA出身のマナー講師が多い理由について聞いた。
■CAのマナーが求められる理由
――日本と欧米ではCAに対する認識が異なる。日本におけるCAは洗練された女性の職業と捉えられている。一方、欧米では保安要員としての認識が強いため、男性CAも多い。また、欧米と日本とではCAの評価軸も異なっている。
「CAは、航空法で定められた保安要員としての業務と、接遇の仕事の二面性があります。保安要員としての業務は訓練から厳しく、安全であることの重要性を徹底的に教え込まれます。仕事の側面をお客様が知ることはありませんが、なにもないことは安全にフライトが行われている証拠でもあるのでいい事なのです。」(丸山)
「接遇においては、日本航空がフラッグキャリアとして経済発展を担っていたため、国際線を中心にサービスが確立されました。機内でおしぼりを配るサービスを始めたのは同社の取組みがはじめてで、その後、世界中の航空会社に広まりました。」(同)
――日本では、日本航空と全日空が切磋琢磨することでサービスレベルが向上し、日本らしいおもてなしが確立されたようだ。
「CAは、多種多様な人を接客します。年齢も幅広く、あらゆる職業や人種の人と接する機会があります。そのような経験をしたCAが退職後のパスとしてマナー講師をするので説得力があるのでしょう。さらに日本でのCAのポジショニングも影響しているように思います。」(丸山)
「また、フライトメンバーは毎回異なりますので、チームをまとめたり、お互いが意志疎通するためのコミュニケーション力も必要とされます。さらに、個々のCAが実務をつうじて多くの経験をしていますから説得力があります。」(同)
――新人研修やマナー研修の依頼があるのは当然といったところか。その豊かな経験からニーズがあることも理解できる。
■CAのマナーは日本人に適合している
――日本人の好みやニーズもあるのだろう。日本人には型を知りたいという心理がある。例えるなら法則性を学びたいニーズである。このケースであればCAの法則性である。
「日本人は型にあてはめるのが好きなんだと思います。ベテランCAの方であれば、気配りや相手の気持ちに沿ったコミュニケーションの方法を自分流にアレンジして抑えている方が多いです。CA出身のマナー講師は総じて接遇スタイルに特徴がありますが、知りたい側のニーズとマッチングしているのでしょう。」(丸山)
――世界から称賛されるCA流の“おもてなし”は、日本人の細かさに対応するために作られたものともいえそうだ。
人々の安全を守りハイレベルなサービスを提供する航空業界。企業努力によって培われたサービスには奥深いものがある。今回は現役CAの丸山美子(仮名)氏からいくつかの情報提供をいただいた。この場を借りて深謝したい。
なお、新刊『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』は、「007ジェームズ・ボンド」が社内の理不尽に立ち向かう想定で書き起こしたマネジメント本になる。社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対応するのか、映画シーンなどを引用しながら解説している。
尾藤克之
コラムニスト
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