人間はなぜ戦争をするの

写真は向谷匡史氏。ブログより。

1932年、ノーベル賞受賞から10年を経て、アインシュタインは、国際連盟から「人間にとって最も大事だと思われる問題を取り上げ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」と依頼され選んだテーマが「ヒトはなぜ戦争をするのか?」である。そして、その相手はフロイトだった。

1932年から既に85年が経とうとしているが、その後、ナチスの台頭があり、第二次世界大戦があり、戦争は遠い昔のように聞こえるが、周りをよく見ると戦争の名残はいろいろなところに残っている。貴方は子供に戦争をどのように伝えるだろうか。

この問いに対して、わかりやすい答えがあるので紹介したい。浄土真宗本願寺派僧侶、保護司、日本空手道「昇空館」館長も務める、向谷匡史(以下、向谷氏)の見解である。

■恨みの連鎖を断ち切らなければ戦争は無くならない

――まず、子供に説明する際には、難解な話ではなくたとえ話が効果的とのことだ。

「低学年には例え話をします。『ケーキを1つずつ食べていて、もっと食べたいと思ったら、どうする?』。『ちょうだいって、ママに言う』。『ママがもうありませんと言ったら?』、『我慢する』と子供。『でも、もっと食べたいと思って、人のケーキを取ってしまおうとする人もいる。だからケンカになる』。これが戦争なんだと話します。」(向谷氏)

「みんなで仲良く分け合って食べれば戦争は起きないんだけど、自分だけケーキをたくさん食べようとする人がいるからよくないんだ!という話でいいでしょう。」(同)

――高学年になると、子どもの性格と、社会に対する問題意識に応じて説明方法を変えないといけない。

「まずは、『生き方論』からのアプローチです。人類は戦争の歴史です。浄土真宗が根本経典とする『無量寿経』のなかに《兵戈無用》という言葉が出てきますが、これは『武器も軍隊もいらない』という意味で、はるか2500年前の時代から、お釈迦さんは戦争を憂えていたということになります。」(向谷氏)

「自分の都合、自分さえよければいいという利己的な価値観が争いを引き起こし、それが国家規模になったものが戦争です。戦争がなくならないということは、私たちが利己的な価値観にとらわれ続けているということでもあるんだ。」(同)

――ここからが大事である。「利己的な価値観は、それぞれが自分が正しいと思い込んでいるところに問題がある」という話をすることにある。

「たとえば、浄土宗の宗祖法然のエピソードがわかりやいでしょう。法然の父親は、法然が9歳のとき、勢力争いをしていた宿敵の夜討ちで殺されてしまうのですが、臨終に際して法然にこう遺言します。『仇をとろうとしてはならない。私の仇をとれば、次はおまえが狙われる。恨みの連鎖は永遠に尽きることがなくなってしまう』。当時、仇討ちは当たり前のことでした。」(向谷氏)

「法然には『父の仇をとる』という大義名分があるため、「自分が正しい」ということになります。そして仇をとれば一転相手も『自分は正しい』になる。それでは永遠に争いはなくならないぞと法然の父は諭したのです。」(同)

――これは、お釈迦さんが説いた次の言葉によるものとされている。

「『この世において、いかなるときも、多くの怨みは怨みによっては、決してやむことがない。怨みを捨ててこそやむ。これは永遠の真理(法)である』。こうして法然は仇討ちをすることなく、比叡山にのぼって僧侶としての道を歩み続けることになります。」(向谷氏)

■知識を養って本当の姿を俯瞰する

――いまのような話は太古を遡った話ではない。つい数十年前にあった戦争につながる話でもある。さらに、「戦争で儲ける人や企業がいるから」と、戦争の実相を教える方法も効果的とのことだ。

「戦争するには兵器がいるだろう? 兵器を作って売る産業を”軍需産業”と言うんだけど、世界のあちこちで戦争してくれれば、それだけ高価な兵器が売れて儲かる。軍需産業が儲かれば、その国も儲かる。だから平和反対、戦争大歓迎というわけだ。」(向谷氏)

「世の中は、プラスとマイナスを足せばゼロになるようにできているんだ。たとえば、受験があるから塾が繁盛する。病気があるから病院が成り立つ。戦争があるから軍需産業が儲かる。何事も自分の視点だけで見ていたのでは、本当の姿は見えない。知識を吸収することの意味は、ここにあるんだ。」(同)

――なお、本書は子供向け教育に書き上げられたものだが、ケースにリアリティがあることから大人にもお勧めできる。上司のコネタとしても役立ちそうだ。多くのケースを理解することで物事の正しい道筋を見つけられるかもしれない。

参考書籍
考える力を育てる 子どもの「なぜ」の答え方

尾藤克之
コラムニスト