【映画評】劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール

天才プログラマー・茅場晶彦が開発した革新的なフルダイブ専用デバイス“ナーヴギア”が、VR(仮想現実)の世界に無限の可能性をもたらしてから4年。次世代ウェアラブル・マルチデバイス“オーグマー”が開発された。フルダイブ機能は排除されたものの、AR(拡張現実)機能を最大限に広げたオーグマーは、覚醒状態で使用することができ、専用ゲーム“オーディナル・スケール”は、爆発的な人気と広がりを見せた。アスナたちに続き、キリトもゲームに参戦するが、次第にオーディナル・スケールに異変が起り始める…。

ロールプレイングゲームに仕込まれた陰謀を巡る新たな戦いを描くアニメーション「劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」。原作は、全世界シリーズ累計1900万部発行の大ヒットを記録した川原礫の小説で、TVアニメ、ゲーム、コミカライズ、グッズなど、多彩なメディアミックスで知られる大人気作だ。本作は、原作者・川原礫が自ら書き下ろした完全新作ストーリーで、TVアニメの続編的な位置付けとなり、ファンには嬉しいプレゼントのようである。ソードアート・オンライン(以下、SAO)に関しては、私は“一見さん”なので、えらそうな批評はできないのだが、仮想現実、拡張現実という世界観や、過去に起こったバトルなどは、推察できる作りになっているので、SAO初心者でも何とかOKという内容だ(無論、アニメ既見の方が数倍楽しめる)。かつてSAOゲームをクリアに導いた英雄のキリトが、序盤からなんともグダグダしていて、ゲームにも乗り気ではないので、前半は少しフラストレーションがたまるかもしれない。だが、オーディナル・スケールに異変が起こり、かつてのゲームとの関わりや、ある悲しい理由からの恐ろしい陰謀が明らかになって、キリトが本気をだしてからは、前半との対比で一気に爆発する感がある。クライマックスの大バトルは、鮮やかな色彩設計が素晴らしく、随所に登場する歌とともに大きな魅力になっている。ただストーリー展開が、AIアイドルのユナの力に頼りすぎなのは少し気になった。それにしても、ポケモンGOの登場で、SAOの世界観をぐっと身近に感じる人も多いだろう。この物語は、もはや絵空事ではないのかもしれない。
【60点】
(原題「劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール」)
(日本/伊藤智彦監督/(声)松岡禎丞、戸松遥、伊藤かな恵、他)
(ファンサービス度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月14日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。