【映画評】WE ARE X

渡 まち子

1982年の結成以来、ミュージック・シーンのトップを走り続けるロックバンド、X JAPAN。結成、メンバーの交代、脱退、解散、HIDEとTAIJIの死、Toshlの洗脳騒動、2007年の再結成から2014年のアメリカのマディソン・スクエア・ガーデンでの公演成功まで。カメラは、迫力のライブの様子や舞台裏を中心に、バンドの軌跡と音楽性、スキャンダラスな側面まで、切り込んでいく…。

日本が世界に誇るロックバンド、X JAPAN の軌跡に迫った音楽ドキュメンタリー「WE ARE X」。音楽評は専門外だし、X JAPANについても有名なヒット曲を知っている程度。そんな私でも、このバンドの偉業とバンドにふりかかったあまりにも壮絶な問題の数々は、表層的だが知っている。記録映画として興味深いのは、バンドの内面にまで切り込めたのは、監督がアメリカ人で“異邦人の視点”があったという点だ。スティーヴン・キジャック監督はもともと音楽ドキュメンタリーを得意とする監督なので、ライブや舞台裏に密着する手法も巧みである。心身ともにボロボロというリーダーのYOSHIKIを中心に描かれるこの作品では、メンバーの死というこれ以上ない悲劇についても、遠慮なく踏み込んでいく。もちろんファンにとっては周知のことも多いとは思うが、ここまで素顔をさらし、語らせ撮らせたのは、キジャック監督がバンドに信頼されている証だ。

圧巻はやはりライブシーンだろう。この映画のサントラも好評だそうだし、ドキュメンタリー映画としてもしっかりと作られている。海外のアーティストにも多大な影響を与え、今もなお走り続けている世界的なバンドを知る意味では、最良の入り口になっている。音楽を楽しむのはもちろん、悲劇と葛藤を乗り越え輝き続ける人間たちの、ヒューマン・ドラマとして見るのもいい。
【70点】
(原題「WE ARE X」)
(アメリカ/スティーヴン・キジャック監督/X JAPAN)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月16日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。