子どもの前でタバコを吸うのは「喫煙虐待」である

駒崎 弘樹

気管支の弱い、二人の子どもの父の駒崎です。

先日、おじいちゃんらしき人が孫の散歩をしているのを見ました。

微笑ましいなぁと眺めていたら、おじいちゃんが屋外喫煙スペースに入り、そのまま子連れで喫煙を始めました。子どもは喫煙スペースでぴょんぴょんしていて、それを見て、暗澹たる思いになりました。

子どもにとって、受動喫煙がどれだけ害をなすか、理解されていない、と。

乳幼児突然死症候群の割合が8倍にも

保育園を経営している自分にとって、一番怖いのが子どもの突然死です。主にお昼寝中に、突然亡くなってしまうこの現象。

理由はうつぶせ寝や温めすぎであること等、いろいろありますが、たばこはその主な要因の一つ。

家庭での受動喫煙の多さにつれ、子どもの命が突然奪われるリスクも上がるのです。

(こうした危険性もあることから、我々認定NPO法人フローレンスでは、両親が喫煙される場合は病児保育サービスの入会を制限しています)

ぜんそくは1.5倍に

子どものぜんそくによる入院率は、1.43倍~1.72倍に。

喘息は発作中は息ができないくらい咳が出て、本当に苦しいものだし、場合によって命を落とすこともあります。

知能が低下する

アメリカで、6歳から16歳の小児約5700人を対象に、読解力、計算力、積み木ならべ能力と受動喫煙との関連を検討する調査が行われました。

知的能力は受動喫煙の増加(体内のコチニン濃度)に伴い有意に低下していました。特に読解能力は大きく落ちました。

出典: Yolton K, et al: Exposure to environmental tobacco smoke and cognitive abilities among U.S.children and adolescents. Environ Health Perspect. 2005 (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1253717/

法規制が有効

受動喫煙が子ども達に与える負の影響はまだまだありますが、もう十分お分かりになって頂けたかと思います。

子どもに受動喫煙させることは、「喫煙虐待」と言っても良いくらい、子どもの健康を害するものであることを。

こうした状況を改善するためには、子どもを受動喫煙から守る法律が有効なのは、スコットランドで受動喫煙防止法が施行された時から、小児ぜんそく入院数が減ったことからも、明らかでしょう。

子どもを守るために、意思表明を

日本でも、子どもを受動喫煙から守るために、法律が必要です。

厚生労働省は現在、「受動喫煙防止法」を国会に提出しようと準備しています。

僕は個人的には、「子どもの前では家庭でもどこでも吸うな」という法律を作ってほしいのですが、「受動喫煙防止法」は、「病院とか学校とか、飲食店とか、公共の場所では基本的には禁煙ね」という穏やかな法律です。

もっとがっつりいってほしいですが、しかしそれでも受動喫煙天国の今よりは、あった方がずっと良いでしょう。

しかし、「受動喫煙で1.5万人死んでるから、屋内禁煙に!→国民「イイね!」→自民党の半分が猛反対」でも紹介したように、

自民党たばこ議連が猛反対していて、潰されかけています。

民間側からも、子どもを守りたければ、声をあげなくてはいけません。

ネット上では、署名活動も始まりました。

https://www.change.org/p/内閣総理大臣-安倍晋三-受動喫煙防止法に賛成-受動喫煙対策を強化して-救える命を救ってください

喫煙虐待で苦しむ子ども達を一人でも減らすために、我々は立ち上がるべきではないでしょうか?


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年3月20日の投稿を転載させていただきました(アイキャッチ画像は、禁煙推進学術ネットワークのキャンペーン画像より)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。