【映画評】パッセンジャー

近未来。新たな居住地を目指す“人類移住プロジェクト”として、5000人の乗客(パッセンジャー)を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が地球を出発する。到着までの120年間を冬眠装置で眠るはずが、エンジニアのジムと作家のオーロラだけが予定よりも90年も早く目覚めてしまう。絶望と孤独の中、何とか生き延びようとする二人は、次第に惹かれあっていくが、予期せぬ困難が彼らの前に立ちはだかる…。

宇宙空間を舞台に目的地到着より前に目覚めてしまった男女の運命を描くSFアドベンチャー「パッセンジャー」。宇宙空間での孤独とサバイバルを描いた作品には「オデッセイ」や「月に囚われた男」などがあって、なかなかの秀作が多い。前2作がひとりぼっちだったのに対し、本作はふたりぼっち、しかも男女。当然生まれるのはロマンスということになる。物語は、最初に目覚めたジムの、ある行為と秘密が重大なキーポイントになっていて、命がけのサバイバルや壮絶な心理戦になってもおかしくない設定なのだが、見終わってみれば単なるラブ・ストーリーに仕上がっていて、ちょっと力が抜けた。

だが、そんな内容でもほぼ強引に楽しませるのは、これが第一級のスター映画だからである。オスカー女優で売れっ子の美女ジェニファー・ローレンスと、どこか間が抜けたルックスながらナイスガイのクリス・プラットという旬の二人の共演は、華やかでスクリーン映えする。膨大な製作費のほとんどがこの二人のギャラだというのもあながち嘘ではなさそうだ。ツッコミどころの多いストーリーはあくまでも薄味だが、宇宙船内のクールで壮麗なデザイン、無重力プールやバーテンダー・ロボの役割など、そう遠くない未来の姿を思わせる設定が楽しかった。
【50点】
(原題「PASSENGERS」)
(アメリカ/モルテン・ティルドゥム監督/ジェニファー・ローレンス、クリス・プラット、マイケル・シーン、他)
(ラブストーリー度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月23日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。