トランプ米大統領、オバマケア代替案の採決で勝負に出る

医療保険制度改革(オバマケア)撤廃・代替案、いわゆる米国医療保険法(American Health Care Act、略してAHCA)への移行は、難航を極めています。

米下院の歳入委員会、エネルギー委員会を経て予算委員会でスンナリ通過したとはいえ、保守強硬派の壁は厚かった。23日には保守強硬派フリーダム・コーカスの猛反発に屈し、採決先送りとなりました。AHCA修正案を提出したものの、フリーダム・コーカスの支持を取り付けられなかったためです。

単純過半数で可決できるものの民主党からの賛成票は全く見込めないため、237議席を保有する共和党の間で22名以上の不支持が出れば廃案を余儀なくされます。フリーダム・コーカスに属す米下院議員の25名以上が不支持を表明し、さらに所属していない議員まで反対にまわるリスクをはらみ、状況は極めて厳しいと言わざるを得ません。

医療費の税控除に焦点を当てた修正案は、議会予算局(CBO)の試算によると2026年までの10年間で財政赤字を1,500億ドル削減させる見通し。当初の3,370億ドルから44.5%縮小するとはいえ、保守派を抱き込むには不十分だったようです。ちなみに医療保険加入者は従来案と変わらず、2018年で1,400万人、2026年までに2,400万人の減少が見込まれていました。AHCAへの移行に伴い無保険者は2026年までに5,200万人に届くと予想され、オバマケアを維持した場合の2,800万人の倍以上に膨らみます。

AHCAをめぐる保守強硬派の糸を引くのは、長く共和党の支援者で知られティーパーティ―運動の支援者と言われるコーク兄弟です。両氏が資金援助を行う保守派アメリカン・プロパティーとフリーダム・パートナーズの2団体は、下院で予定していた採決直前の22日夜、AHCAに反対票を投じた下院議員のための特別別基金を設立する発表。中間選挙に合わせ何百万ドルもの資金を注ぎこみ、政治広告をはじめダイレクト・メールその他の草の根運動を展開していくと約束しました。

フリーダム・コーカスの支持を獲得しないまま、交渉を打ち切ったトランプ米大統領は24日の採決を要請しています。


(出所:Twitter

しかも、否決されれば撤廃・代替案への移行を諦めオバマケアを存続させるというではありませんか。オバマケアの支持率が高いだけに、リスクを冒してたくないのでしょう。就任100日どころかまだ2ヵ月しか経過していないところ、直近の支持率低下も脳裏によぎったに違いありません。
オバマケアに対する世論調査結果、即時撤廃派はわずか20%に過ぎません。

(作成:My Big Apple NY)

AHCAへの移行につき「オバマケア、トランプのディール手腕の試金石に(Obamacare tests Trump’s deal-making prowess)」と報じられていただけに、トランプ米大統領は政治的な指導力の欠如を指摘されるのは我慢ならないはずです。逆に、ここで起死回生の大逆転を達成できれば、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後、23日まで6日続落中のダウが大幅反発するきっかけとなりうる。運命の女神は、果たしてトランプ米大統領に勝利をもたらすのか、24日の採決を待つとしましょう。

(カバー写真:Fibonacci Blue/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年3月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。