まずは一つのことに集中しよう !

写真ACより(編集部)

脳科学によると、脳は「汎化」という特徴を持っているそうです。

具体的には、何か得意なものを持っていると脳全体のレベルがアップして他の分野も得意になるというものです。例えて言えば、一定の深さの井戸を掘るときに、最初から井戸の面積を満遍なく広く浅く掘り進むより、細くて深い穴を最初に掘っておいてその周囲を広げていくような掘り方でしょうか?
実際の井戸掘りがどういう方式かは知りませんが…。

「脳の汎化」を斟酌すれば、子供には同時にたくさんの習い事をさせるより、何かひとつ得意なものをガツンと身につけさせた方が他の習得も速くなるそうです。勉強でも、ひとつ得意科目を先に作った方が、他の科目も伸びるのだそうです。

この「脳の汎化」はスポーツでも同じなのかもしれません。
テニスでフォアハンド・ストロークは得意だけどバックハンド・ストロークは苦手だという選手がいたら、バックハンド・ストロークの補強をするよりフォアハンド・ストロークを徹底的に磨かせたほうが強い選手になるという話を聞いたことがあります。

また、ひとつのことをやり遂げることは「やり抜く力」(GRIT)を身につける意味でも有効だそうです。GRITの著者アンジェラ・ダックワースは、スポーツなど子供の課外活動を勧めており、あれこれ試して自分に向いた種目を選んだら「とことんやり抜く」ことが大切だと説いています。もちろん、頑張った結果として挫折するのは何ら問題はありません。

私は中学生のころ、軟式テニス部に入っており(3年時は陸上部にも参加していましたが)、朝5時に起きて早朝練習、土日も練習、雨天は屋内でトレーニングと明けても暮れても部活漬けで、どうやれば上手くなるかばかり考えていました(私自身はたいした結果は残せませんでしたが、国体で2年連続チームを優勝に導く名選手に成長した同級生がいました)。

その後の大学受験で、私が東大文一に現役合格しただけでなく、京大医学部と阪大医学部に現役合格した秀才たちが同じ中学のテニス部に在籍していたのは…偶然にしてはできすぎた話です。
地域の学校群進学校の合計900人の中で、同レベルに合格したのは(他中出身で東大理一に合格した同級生と合わせて)4人だけなので、4分の3が同じ中学の熱血テニス部出身者という結果です。
もっとも、彼らは(私と違って)中学時代から優秀な成績でしたが(笑)

おそらく、この「脳の汎化」は大人になってひとつの専門分野を極めた場合にも通用するものと考えます。司法試験と公認会計士試験と通訳試験(?)に合格した「資格三冠王」と言われた人もいますし、ひとつの難関資格を取った後、他の資格を短期間で取得する人は決して少なくありません。

また、脳の発達は後ろの方から進むので、勉強や仕事をこなす上で決定的な役割を果たす前頭葉は遺伝の影響をほとんど受けないそうです。

橘玲氏の著書には遺伝決定論的な実験結果が紹介されていますが、私の身近を見渡しても「遺伝なんて関係ないよなあ〜」という例がいくらでもあります。おそらく、読者の方々の周りにも「トンビが鷹を産む」ような例は山のようにあるのではないでしょうか?

受験勉強で失敗しても(受験できなくとも)社会人になってから挽回する人たちもたくさんいます。
要は、「投げないこと」が大切だということなのでしょう。

荘司 雅彦
2017-03-16

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。