近代私法の三大原則と言われているものがあります。「権利能力平等の原則」、「私的所有権絶対の原則」、「私的自治の原則」の3つです。
3番目の「私的自治の原則」というのは、私法上の法律関係については個人が自由意思に基づき自律的に形成することができるという原則です。つまり、個人間の私法上の契約内容などは、原則として当事者間で自由に決めていいということなのです。例外的に「公序良俗に反する契約」は無効とされます(民法90条)
この大原則を誤解している方々が実に実にたくさんいるのです。
法律相談に来て、「取引先とこういう契約(約束)をすることは法律的に可能なのでしょうか?」と訊ねる人がたくさんいます。
こういうご質問に対して、「個々人などの私人間や私企業間では、どんな契約(約束)をしても自由であるのが法律の大原則なのです。社会的に見てあまりにも酷いものやアコギなものだけが、例外的に無効とされたりするのです」と説明すると、多くの相談者は驚いた顔をします。
おそらく、そういう人たちは、世の中は法律でがんじがらめになっていて、何か法律的なことをやる場合は「法律に合わせなければならない」と誤解しているのでしょう。「六法全書に書かれている法律どおりに行動しなければならない」と考えているのかもしれません。
しかし、本来「何をやっても自由」というのが近代法の大原則であり、例外的に他人に迷惑をかけたりすることが禁止されているのです。
なぜ多くの人たちが誤解するかということをつらつら考えてみると、不必要なまでに多数の行政法規や規制が存在するからではないでしょうか?
たとえば、風俗営業法では、いわゆる「ラブホテル」の室内設備についてもあれこれ規制をしています。鏡張りの部屋などは禁止対象になっているので、ラブホテルを新設する時にはそういう部屋を作ることができません。この規制が一体誰の利益を守っているのか私には全く理解できません。嫌な人は入室や宿泊をしなければいいのであって、利用者が減れば自然に淘汰されるはずです。
免許を受けずに運賃をもらって車で送迎をしたりすることは、いわゆる「白タク」行為として禁止されています。当人同士の合意を全面禁止にする理由についても私には理解できません。
ウーバーのようにシステムがしっかりしていれば乗客がボッタクられる心配もありませんし、安全性に不安があるというのなら、友人・知人の車に乗せてもらうことも危ないということになります。かつては、個人タクシーの免許の売買のようなものが公然と行われていました。こういう事情を知ってしまうと、規制の目的は「既得権の保護」じゃないかと疑いたくなります。
繰り返しますが、私人間(私企業間)の取引等は自由であるのが大原則です。それを制限することは必要最小限度であるべきで、むやみやたらと制限を加えるのは「れっきとした人権侵害」であるということを規制当局は再認識すべきでしょう。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年4月1日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は写真ACより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。