もし売りたいならお客様の言葉は信用すべきではない!

写真は財津氏。

かなり前の話に、「NOと言わない日本人」という言葉が流行ったことがある。これは日本人の国民性とも言える特徴を、わかりやすく表現したものだ。外国人からすると、「日本人は頼まれごとをされたときに、イヤでもハッキリ断ることができないので、何を考えているかわからない」という意味になるのだろう。

財津/優(以下、財津氏)は外資系企業に勤務する営業マンである。世界的規模の外資系医療機器メーカーに在籍し、トップセールスとして毎年表彰されている。その営業手法は社内外でも話題になっている。今回、紹介する『世界No.1営業マンが教える やってはいけない51のこと』(明日香出版社)は、財津氏の営業スキルが紹介されている処女作でもある。

■武勇伝のある営業マンは危険

――日本人は、嫌われるのがイヤだったり空気を壊すことに抵抗がある民族である。この性質は、営業活動において非常に厄介だ。お客様と話をする中で、リアクションが良かったり、笑顔で対応してくれたり長時間雑談ができたりすると、思わず「脈アリ」だと思ってしまう傾向がある。

「しっかり関係構築ができていないのに感じが良いお客様は、あなただけではなく、誰にでも感じが良いものです。すぐ競合他社に浮気もします。厳しい言い方になりますが、あなたの力で感じの良さを引き出したのではありません。そこを勘違いしないように気をつけるべきです。」(財津氏)

「人は自分に対する評価は誰よりも高い場合が多いので、自分だけがそのお客様を攻略できたと思いがちです。しかし、その高い自己評価は大きな危険性を含んでいるケースがありますので,注意が必要です。」(同)

――好印象を引き出したのは、自分の実力だと誤解してしまっている営業マンが潜在的にも多いことは間違いない。あなたの周りにも「お客様を攻略した自慢」をしている営業マンはいないだろうか。

「話を元に戻しますが、むしろ感じが悪いお客様の方がわかりやすくて、良いお客様になってくれる可能性があります。最初はすごくやりにくいと思いますが、何度も通って関係を構築していくと感じの悪さが薄れてきます。そして信用を得ることができれば、あなたの理解者になってくれることは間違いありません。」(財津氏)

「そうなったら、それはあなたの実力だと言えますので、堂々と胸を張ってください!では、『感じが良くてNOとは言えない日本人』のお客様を見込み客としてカウントすべきかどうかのポイントは、どこにあるのでしょうか。」(同)

――それはズバリ、「前向きな言葉をストレートに受け入れるのではなく、案件に対して行動してくれたかどうか」が重要とのことだ。

■八方美人で感じのいい客に気をつける

――例えば、良いリアクションだった主婦のお客様を再訪したときに、旦那さんに相談してくれていたら行動していると判断することができる。

「仮に1度目はダメでも、そのあとに旦那さんをどうやって説得していくか、一緒に考えられるような関係になったら最高です!より詳しい資料か見積もりを請求された場合も、『手応えアリ』だと考えていいでしょう。上司への相談だったり、その前の段階で説得するための材料になりますから『脈アリ!』と思っていいと思います。」(財津氏)

――そして留意すべきは、八方美人で感じの良い人だ。このような傾向の人はハッキリ断ってくれない。そのためには、しっかりと行動をチェックすることが大切だ。

本書は営業マン向けに書き下ろされたものだが、内容自体は平易であることから、様々な場面に転用することが可能である。多くのケースを理解することで営業活動の正しい道筋を見つけられるかもしれない。

尾藤克之
コラムニスト

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