仮想通貨リップルは、なぜ10倍に急騰したのか

内藤 忍

仮想通貨と言えばビットコインが有名ですが、リップル(XRP)に注目が集まっています。交換価格も急騰しており、日本円との交換レートは、2014年頃1リップル=2.5円程度であったのが、一時1円以下に下がっていましたが、4月3日には一時的に最高値が8円以上まで上昇したようです。

交換価格上昇の原因は、三菱東京UFJ銀行が来年初めからリップルが提供するブロックチェーン技術を使って、バンクオブアメリカ・メリルリンチやスタンダードチャータード銀行といった欧米の大手金融機関6行と連携して具体的な仕組みづくりを進めるという先月末の報道です。

同行も下記のプレス発表を行っています。

株式会社三菱東京UFJ銀行(頭取小山田隆)は、今般、ブロックチェーン関連技術を応用したクロスボーダーでのリアルタイム送金等の実現に向け、米国Ripple 社が主催するグローバルなコンソーシアムであるGlobal Payments Steering Group(以下、GPSG)に参加することを決定いたしました。

高コストで手間と時間がかかる海外送金が、新しい技術によって低コストで活用できるようになれば、既存の業界秩序が大きく変わります。大手金融機関にとっては、大きな脅威でもあり、自らが新しい技術の世界に乗り出していく動きが加速しているのです。

仮想通貨はビットコインやリップル以外にも多数のものが出回っています。ビットコインが流通量では圧倒的ですが、それをイーサリウムやリップルが追随している状態になっています。乱立している仮想通貨ですが、最終的に生き残るのは恐らく3つくらいになってくるのではないでしょうか。ビットコインは別格とすれば、残り1つか2つのデファクトスタンダードの座を巡っての競争が続くと予想します。

中には、本当に存在するのか怪しいものも存在します。金融詐欺の温床になる危険性もあるので注意しなければなりません。ビットコインやリップルにしても、価格の変動が極めて大きく、急騰することもあれば急落することもあり得ます。また流動性が低下することもあるので、売りたくても売れないことがある点にも注意です。「通貨」ではありますが、ドル円のような流動性は保証されていないのです。

仮想通貨と言うのは、あくまで価値の交換ですから、株式や債券、不動産のように投資の対象になるものではありません。貨幣として送金や決済手段として活用するのが本来の目的です。

ブロックチェーン技術は金融業界や流通業界の送金、決済の仕組みを根本から変える可能性があります。既存の大手企業が仮想通貨を手がけるベンチャーと提携する動きは今後も進むと思います。

今後、他の仮想通貨に関しても、今回のようなニュースがきっかけになって投機的な資金がマーケットに流入し、さらに価格が乱高下する可能性もあります。とは言え、個人投資家は今回のような仮想通貨マーケットの過熱に巻き込まれる必要はありません。ただし、資本主義の未来を変える可能性のある仮想通貨の今後の行方について、最新の情報を収集しておく必要はあると思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。