山本地方創生相の「学芸員はがん。一掃を」発言が波紋を呼んでいる。
インバウンド:山本地方創生相「学芸員はがん。一掃を」 – 毎日新聞
「一番のがんは文化学芸員だ。観光マインドが全く無く、一掃しないとだめだ」と発言したとされている。リンク先に映像があるが、「学芸員はがん」という発言はなかったような。もっとも、釈明をしているようなので、失言だったという認識はあるのだろう。
この手の失言報道は、たまに完全に揚げ足取りだったり、文脈切り取り型だったりするので、注意しないといけない。とはいえ、政治家の「失言」は実は「ホンネ」だったりするので。これはこれで、政治家たちの本音を垣間見るチャンスだとも言える。専門家を軽視していないか。なんでもかんでもやらせようとしていないか。
リンク先の映像内での彼の発言に関しては、次の3つの点で問題があると考えた(この3つあるという言い方は、一橋大学商学部の屈指の名門ゼミと言われた竹内弘高ゼミナールに伝わる話法だぞ)。
1点目は、これはこの記事を書いた毎日新聞(電子版で購読しているぞ)も申し訳ないが同罪なのだが、実は「インバウンド」呼ばわりである。「訪日観光客」と言って欲しい。インバウンド呼ばわりは、何かこう、訪日観光客を金づるにしか思っていない考えのように聞こえてしまうのだ。
「商売の本質を知らない人」の浅すぎる思慮 「インバウンド狙い」という時点でアウト! | 「若き老害」常見陽平が行く サラリーマン今さら解体新書 – 東洋経済オンライン
この記事の3ページ目くらいを読んでもらいたいのだが。もちろん、用語として浸透しているのだろうが、インバウンド、インバウンドと連呼するのは、海外から日本にやってくる方々を「手段」としか見ていない言い方にしか聞こえないのだ。何が「おもてなし」だと言いたくなる。
2点目は「現状の」学芸員に観光マインドを「いますぐに」要求するのは酷ではないかということだ。言ってみれば、無茶振り、後出しジャンケンである。それによる労働強化も問題だ。観光「だけ」が仕事ではあるまい。学芸員に押し付けるのではない方向性も考えられるのではないか。
3点目はクビを想起させる言い方である。簡単に解雇をちらつかせてはいけない。できない→クビという発想はいかがなものか。育てるというマインドがないのか。
結局のところ資本主義というゲームのもと人々を踊らせ、スゴイ人になれ、そうじゃないとクビだと労働者に圧力をかける一億層搾取社会のドス黒さを感じるものである。
この山本地方創生相の発言からも、「働き方改革」の美名のもと、サービス残業を誘発させ、結果としての労働強化を続発させそうな政権の腹黒さを垣間見ることができるものである。
山本某もこれくらいではパージされないかもしれないが、トカゲのしっぽ切りを許してもなるまい。いや、むしろ稲田某同様、閣僚を継続してこそ、政権のボロがどんどん出てくるというもので、むしろ泳がすのも手かもしれない。
万国の学芸員よ、心からの声を振り絞り、観光マインドの前に学芸員マインドを戦闘的に高揚させ、奮闘するのだ。「働き方改革」の美名のもとのさらなる労働強化、搾取という腹黒い企みを学芸員たちは許してはならない。
この山本幸三地方創生担当相の失言を聞き、私も行動する知識人として「働き方改革は所詮、働かせ方改革だ」「その美名のもと、労働者がますます搾取される社会の実現を断固として阻止しなくてはならない」という旗幟も鮮明に、たたかう決意を打ち固めたのだ。
まったく働きすぎなんだよ。私の本もよろしくな。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。