シェフに聞く!誰も知らないチョコレートの真実とは

写真は氏家健治シェフ


皆さまは、チョコレートは好きだろうか。また、美味しさをもたらす要因をご存知だろうか。実は主原料であるカカオ豆には甘味があるわけではない。独自の味わいには「風味」「香り」などがある。口に入れた際の「口どけ」「コク」なども重要な決め手になる。

これまで数回にわたり、チョコレートの歴史について紐解いてきたが、思いのほか反響があったので、新しい情報を紹介したい。今回も、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)の氏家健治シェフ(以下、氏家)に、チョコレート業界の歴史について伺った。

同店のガトーショコラは、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、TBS「ランク王国」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「おしゃれイズム」「嵐にしやがれ」などで紹介されたことがあるので、ご存知の方も多いことだろう。

■チョコレートに関する大きな誤解

――チョコレートはいくつかの製造ステップによって商品化される。この製造過程でカカオの味は失われてしまうことが多い。カカオの味はどのように変化するのだろうか。

「チョコレートは、カカオ豆の香味、砂糖やミルクなどを混合させます。この絶妙なバランスがチョコレートの個性を生み出します。カカオ豆独特の風味や、苦味、渋味は、カカオ豆に含まれるポリフェノールによるものです。」(氏家)

「ポリフェノールの主成分にはカテキンやエピカテキンがあります。ポリフェノールは赤ワインや緑茶などにも多く含まれ、タンニン、カテキン、色素のアントシアンなどの成分は、病気や老化を防ぐ効果があることで知られています。」(同)

――ポリフェノールの含有量に増加すると、苦味、渋味が強くなるそうだ。苦味、渋味が強くなりすぎないようにカカオは収穫後に発酵にまわし緩和させるのが一般的である。

「元々、カカオ豆には酸味があります。この酸味は発酵することで緩和させることができます。ダークチョコレートなどは、爽やかな酸味にほろ苦さが溶け合うことで味わい深くなります。ポリフェノール含有量や調整によって、味のバラエティが生み出されているのです。」(氏家)

「カカオ飲料(ココア)は『高価』な飲み物でした。高価でも消費されたのは、ココアが『薬品』として認知されていたからです。『健康』に対する意識がより価値の高いものに引き上げました。一般的に流通されるまでは王侯貴族の薬品だったのです。」(同)

――また、チョコレートを製造する過程で、大量のバニラが加えられる。さらに、コストを削減するために大量の砂糖も使用される。私たちが普段、食べているチョコレートは「バニラや砂糖の味」ということも珍しくないそうだ。カカオ豆の量が少ないとフレーバーを味わうことができない。

「有名な商品やブランドであっても、なかには本来のカカオ豆の味が失われているものが存在します。原材料をよく見てチェックをしましょう。」(氏家)

■消費者の選択肢が拡大した市場

――さらに、ココアやチョコレートが「スイーツ」として認知されるようになるのは、最近(20世紀半ば以降)のことである。

「いまは、品種・産地を限定したダークチョコレートに関心が集まっています。大手GMSやショツピングーモールに置かれる、小さなチョコレートエ房で職人がていねいに作る『クラフトチョコレート』と呼ばれる、少量生産のチョコレートも存在します。いずれにせよ消費者の選択肢は拡大しています。」(氏家)

――なお、当時は、高価なココアセットが流行していたそうだ。高価な陶器・磁器で作られたココア専用のポットや受け皿が開発された。これは権威を誇示的に演出する位置づけだったようである。参考:チョコレートココア協会

現在でも、チョコレートポット、チョコレートカップがあるとより楽しめると言われる。高価なものでなければ、Amazonや雑貨店でも入手可能である。

今回は、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)の氏家健治シェフに、チョコレートの歴史について伺った。謹んで御礼申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト

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