北朝鮮が生き延びる道

高 永喆

北朝鮮と金正恩氏は生き残れるか(Prachatai/flickr:編集部)

政治外交史を見ると、強大国同士が秘密戦略や協定を結び、30年~40年の秘密保持期間の解除後に一般公開されることが度々ある。

第二次世界大戦では、米国の対日石油禁輸措置によって生存危機に陥った日本は危機脱出の選択肢として真珠湾攻撃に踏み切った。当時、米国は参戦の大義名分をつくるためにわざと対日禁油措置を取っていた事実が秘密解除文書で公開されている。

現在、北朝鮮の核とICBMをめぐる米朝間の緊張が高まる中、日韓中露の周辺4カ国が絡んで地域の緊張状態がエスカレートしつつあり、一触即発の危機にまで拡大する危険性を孕んでいる。

今後、北朝鮮は危機を正面突破するために第6回核実験とICBM発射に踏み切る可能性があり、それを受けて中国が対北石油パイプを遮断すると北朝鮮の挑発は本番に入る恐れが強い。すると米国は待った無しのチャンスと受け止め、軍事行動に踏み切ることも十分あり得る。

真珠湾攻撃の先例に照らしてみれば、米国の軍事的な圧力は北朝鮮の軍事挑発を誘い出そうとしているのかもしれない。経験が浅い若い指導者のわがままな冒険が大変な事態の火種になる恐れがあるわけだ。

しかしながら、「危機は危険ながら機会になり、災い転じて福になる」こともある。危機が逆に北朝鮮の核施設を取り除く機会となり、独裁者は自ら自分の首を絞める悲惨な結果を招くこともあり得る。米朝と関係周辺国が危機管理を上手く処理できれば、地域平和定着のきっかけになることも期待出来るのだ。

米国は現在、大規模の戦力を半島周辺に展開している。米国本土まで届く恐れがある北朝鮮の核とミサイルを除去しない限り戦力を撤退しないだろう。ボールは既に北朝鮮側にある。米太平洋軍のハリス司令官は26日の米下院軍事委員会公聴会で「先制攻撃の様々な選択肢があるが公聴会では言えない」と発言した。

湾岸戦争で米軍は電子撹乱機を飛ばしてイラク軍の指揮、通信、電算網を麻痺させピンポイント空爆の開始後1時間で戦勝を収めた。この作戦は、外科手術前の麻酔と同じで、外科手術的攻撃(Surgical Strike)は30分~1時間で終わった例もある。米軍のハイテク兵器は27年前に比べて17倍以上、進歩している。韓国より40倍以上も貧しい北朝鮮の軍はほとんど中古車・中古兵器で、石油も足りない経済状況で本当に国家存亡の戦争が出来るのか、疑問だ。

北朝鮮は最悪の冒険シナリオを避けて半島の非核化に前向きな舵取りをするのが生き延びる選択肢である。韓半島の危機が平和的なソフトランディングの結末を迎えることを期待する。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授•元韓国国防省分析官)

高 永喆
ベストセラーズ
2017-03-25