日本には衆参合わせて42人の30代国会議員がいる
極右政党の台頭と、イギリスに次いでフランスまで離脱してのEU崩壊の可能性が問われたフランス大統領選挙が、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相の勝利で幕を閉じた。
政権を担った事のある政党に属さない大統領の誕生については、また別に書くことにしたいが、同時にマクロンの当選は、フランス史上最年少39歳の大統領の誕生にもなった。
個人的にはEU存続についても安堵だが、世界のリーダーの1人がこれだけ若くなった事には大きな可能性を感じる。
そこで、日本における若手政治家の実態について、今回は紹介していくことにしたい。
高橋亮平(一般社団法人政治教育センター代表理事・NPO法人 Rights代表理事・元中央大学特任准教授・元市川市議・元市川市長候補)ブログでも2年前の2015年4月に『地方創生のカギを握るのは「優秀な若手」である ~若手地方議員 都道府県別ランキング』として紹介してるので、興味がある方は合わせて読んでもらいたいと思う。
日本においては被選挙権が30歳からのため制度上20代の参議院議員はいないのだが、残念なことに、20代で当選した衆議院議員も30代になってしまったため現在は衆参合わせても20代の国会議員は一人もいない。
ただ日本においても30代の国会議員は、42人いる。
しかし、全国会議員に占める割合から見ると、30代議員はわずか5.87%でしかない。
今回あらためて調べてみたところ、30代以下の若手議員の割合が一番多いのは無所属の17.39%、政党では共産党で14.29%、次いで公明党の8.33%、自民党は大量当選の影響もあって5.83%と比較的多くなってきたが、一方で維新の会は3.70%、若手が一気に落選した民進党は2.07%となっていた。
図表: 若手国会議員数と割合
出典:筆者作成
図表: 30代国会議員一覧
出典: 筆者作成
2015年統一地方選挙では30代以下の政治家が1,208人誕生
図表: 自治体における若手政治家(2015年統一地方選挙当選者)
図表: 筆者作成
国会議員で見ると37人という狭き門である若手政治家だが、地方議員で見ると、2015年の統一地方選挙だけでも1,208人もの30代以下の若手政治家が誕生している。
東京都の特別区における区議会では18.12%、政令指定都市の市議会でも13.89%と、特に都市部における議会では、1割から2割を30代以下の議員が占めるようになってきている。
県議会や市議会においてもそれぞれ8%を超える若手政治家がいるが、一方で町村議員では未だ2.81%にしか満たないという状況も見えてきた。
こうした数字から見ると、地方における若手政治家をどう育てていくかは一つの課題であるようにも思う。
また、議会では一定の若手政治家が誕生している一方で、首長についてはまだまだ若手にとってはハードルが高いことも分かる。
2015年の統一地方選挙のタイミングで選挙があった地域に限られるが、知事も政令指定都市の市長も、特別区の区長も一人も誕生しなかった。そんな中、2015年の統一地方選の最年少は34歳の市長が誕生するなど、30代で3人の市長が誕生しているのは、新たな兆しと言えるかもしれない。
都道府県で市区議の若手率が最も高かったのは東京、次いで大阪、神奈川…
図表:都道府県別市区議若手率ランキング(2015年統一地方選挙)
出典: 筆者作成
日本における30代以下の市議会議員・区議会議員の数を調べて見ると、2015年の統一地方選挙で当選しただけで885人いるのだが、全世代の当選者に占めるこの若手議員の割合を都道府県別で比較してみた。
最も30代以下の当選割合が大きかったのは、東京都の16.09%、2位が僅差で大阪府の16.07%、次いで、神奈川県の13.08%、兵庫県の12.34%、埼玉県の12.13%と続いた。
総務省のデータに岩手県、宮城県、富山県、鳥取県、島根県、沖縄県のデータがなかったが、ちなみにデータがあった中で最低だったのは、鹿児島県が0人で0.00%、次いで広島県の2.07%、岡山県の3.19%、高知県の3.28%、宮城県の3.38%と続いた。
データ上では上位は首都圏と近畿圏の都市部が占めるような構図となった。
ただ、20代議員の割合に限定して見ると様子も少し変わった。
東京都は1.99%と10位に落ち、逆に和歌山県が4.00%で最も割合が高くなった。
2位も山口県の3.57%だった。
ちなみに当選者の平均年齢が50歳と最も若かったのは群馬県だった。
「政治家は若ければ若いほどいい」などと野暮な事は言わないが、各世代の声を反映することもまた政治家の役目ということを考えれば、先日書いたようにただでさえ自分たちの声が反映されにくくなっている若者たちにとっては、同世代の代表を正解に送り込む事は重要と言えるかもしれない。
また、地方創生などの視点で、街を活性化するのに必要な人材として、「よそ者、馬鹿者、若者」と言ったりする。
若い人材は地域活性の中では非常に重要であり、特に地方自治の現場において、どうやって若い人材を集めるかという視点においても、優秀な若い人材を地域に集め、若手政治家を増やすというのは一つの方法のように思う。
それぞれがお住まいの町の議会の構造はどうなっているかについても是非調べて見てほしいと思う。
日本の歴代最年少総理は44歳の伊藤博文、戦後では安倍総理が最年少
日本の歴代総理大臣の中で最も若く総理になったのは初代の伊藤博文であることを知っているだろうか。
44歳での就任だった。
以来、それより若い総理は誕生していない。
今回のフランスの大統領に当選したのは39歳のマクロンだが、オバマも47歳でアメリカ大統領になった。ケネディは43歳だった。海外で若いリーダーたちが生まれる中で、日本の戦後最年少総理は安倍晋三 総理の52歳だ。
日本においても若き指導者が生まれないだろうかと期待する。
戦後最年少大臣は、34歳で内閣府特命担当大臣(男女共同参画・少子化対策)になった小渕優子議員だが、初当選は26歳だった。
ちなみにその前の最年少記録は、39歳で経済企画庁長官を務めた船田元 議員だが、船田議員は25歳で初当選している。
地方議会も含め、若く初当選する議員を生みやすい仕組みをつくる必要もあるのではないだろうかと考える。