バチカンで宇宙物理学、天文学者らの国際会議が9日、開催されたが、ローマ法王フランシスコは12日、同会議に参加した35人の学者たちを招いた。フランシスコ法王は「真理を探究することに拘ってほしい。真理の前に不安を抱く必要性はない。科学者は真理の発見を謙虚に受け入れなければならない」と強調し、科学者を鼓舞した。バチカン放送が12日、報じた。
会議にはオランダの理論物理学者ヘーラルト・トホーフト氏(1999年ノーベル物理学賞受賞)、イギリス人の宇宙物理学者ロジャー・ペンローズ氏らの著名な学者、 天文学者たちが参加し、ローマ南東約23キロのカステル・ガンドルフォの「バチカン天文台観測所」でブラック・ホール、重力波、時空の重力の特異点などについて話し合った。
フランシスコ法王は、「宇宙に関する問題は教会とその精神的生活にとって特別関心が強い分野だ。なぜならば、宇宙に関する内容はわれわれ人間の深層意識を喚起するからだ」と説明し、「人間の知性で説明できない領域に入った時、神との出会いの機会となる」と述べた。
フランシスコ法王は最後に、「自然科学と神学の間の方法論的違いは大切だ。この相違こそが短絡的な結論から科学と信仰の両面を守ることになる」と強調している。
ポーランド出身の天文学者ニコラウス・コペルニクス(1473~1543年)は地球中心説(天動説)を否定し、太陽中心説(地動説)を主張して、ローマ・カトリック教会を震撼させた話は有名だ。それ以来、科学的真理と宗教的真理は対立する概念のように受け取られてきた面がある。科学が進歩すれば、宗教、ひいては神の存在も否定されるという一種の科学至上主義の“信仰”が拡大していった。
しかし、現実ではそうではない。当方はこのコラム欄で、「大多数の科学者は『神』を信じている」(2017年4月参考)を書いたが、世界の科学者300人を対象に調査したところ、8~9割の科学者たちが神を信じている、という調査結果が発表されたことがある。
「300人の内、神を信じない人は僅か20人だった。一方、神を信じる人は242人で、世界的に著名なニュートン、エジソン、X線を発見したヴィルヘルム・レントゲン、電池を発明したアレッサンドロ・ボルタ、アンドレ・マリ・アンペール、ゲオルク・オーム、キュリー夫人、アインシュタイン等々がその中に名を連ねている」(中国反体制派メディア「大紀元」)という。
宇宙の誕生時、物質と反物質は同数あったと考えられるが、現在の宇宙は物質で満たされ、反物質はほとんど存在しない。『消えた反物質』について、世界の宇宙物理学者が競って探求している。宇宙発生時の内容が解明される時もそう遠くはないかもしれない。もちろん、反物質が検証されたとしても神の存在には影響はない。神を宇宙の第一原因と考えれば、科学の究極目標はその第一原因の解明ということになるからだ。
世界的量子物理学者ツァイリンガー教授は、「神は証明できない。説明できないものは多く存在する。例えば、自然法則だ。重力はなぜ存在するのか。誰も知らない。存在するだけだ。無神論者は神はいないと主張するが、実証していない」と述べている(「量子物理学者と『神』の存在について」2016年8月22日参考)。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年5月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。