【映画評】サクラダ リセット 後篇

特殊能力を持つ人々が住むサクラダ(咲良田)の街では、過去のすべての出来事を記憶する浅井ケイらが暮らしていた。ケイは、自らの記憶保持の能力と、時間をリセットする春埼の能力とを組み合わせて、死んだ同級生・菫を蘇らせようと奮闘する。一方で、サクラダでは、いたるところで能力の暴発事件が発生していた。強大な権力を持つ管理局が、サクラダの能力を一掃するという重大な計画をひそかに進めていることを知ったケイは、仲間の能力を組み合わせて、何とかそれを阻止しようとする…。

特殊能力を持つ者たちが暮らす街で繰り広げられる攻防を描く青春ミステリー2部作の完結篇「サクラダ リセット 後篇」。命を救えなかった菫を蘇らせようと奔走するケイは、仲間が持つ、ものを消す能力や、声を届ける能力、記憶操作、さらに、過去に体験したすべての記憶を保持する自らの能力と、リセットで世界を最大3日分巻き戻せる春埼の能力を使って、サクラダの能力を一掃しようとする管理局の計画の阻止を図る。この計画が複雑すぎて、混乱するのだが、そこは能力者である少年少女たちの奮闘として理解しておこう。ケイを巡っての菫と春埼のマイルドな三角関係や、ケイと母親との関係性など、この後篇では、心理描写もそこそこ描かれる。だが問題は、後篇こそは、彼らの特殊能力のパワーがさく裂するのかと思いきや、管理局の室長や彼の補佐であるキーパーソンとのバトルが、実際はバトルでもなんでもなく、話し合い…というより説得…というより会話になってしまっていることだ。

無論、ハリウッド大作などに匹敵する迫力など期待してはいないが、単なる言葉のやりとりでは、特殊能力者である必要性も薄くなる。ストーリーとは関係ないが、前篇の不評からか、後篇の公開日を変更する劇場まであったと聞くと、そもそも、2部作という公開スタイルが間違っていたのでは…と思ってしまう。物語の性質上、かなりややこしい展開なので、一気に見る方がスッキリするはずだ。「泣いている人を見たらリセットしてしまう」という優しさの本質の是非と、悲しみや後悔があるのが人生だということを、彼らが本当に学んでいくのは、年齢を重ねてから。サクラダで生きると決めた主人公ケイに、静かな覚悟を感じた後篇だった。
【50点】
(原題「サクラダ リセット 後篇」)
(日本/深川栄洋監督/野村周平、黒島結菜、平祐奈、他)
(複雑度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年5月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。