ビットコインは「世界で使えるパスモ」と思えばわかりやすい

内藤 忍

23日の日本経済新聞が仮想通貨ビットコインのドル建て価格が、1ビットコイン=2000ドルの大台に乗せたと報じています。年初からの価格は2.2倍になっているということで、過熱感を指摘する声も出ています(グラフも同紙から)。

先月、富裕層向けサイト「エンリッチ(Enrich)」の対談で、日本最大のビットコイン取引所を運営するビットフライヤーズの加納社長からお話を伺いました。仮想通貨に関する日本の第一人者の経営者です。

仮想通貨には金(ゴールド)に似た側面があるということです。金が常に右肩上がりに上昇しないのと同じように、ビットコインも貨幣や資本主義経済に対する信頼感によって、資産の逃避先として資金流入する傾向があるということです。

つまり仮想通貨の価格上昇の背景には既存の通貨に対する不信感があると言うことです。政府が管理し、発行量を自由に決められる一般の貨幣は政府の信用を背景に価値が維持されており、通貨発行量の増加や政府の信認の低下があれば、通貨価値が下落し、そこから仮想通貨に資金が流れ込むという説明です。

確かに、ビットコインの最近の価格上昇には、そのような側面もあるのかもしれません。しかし、一番大きな要素は商品やサービスの支払いに使えるお店が増えて、決済手段としての利便性が急速に高まってきたことだと思っています。SHINOBY’S BAR 銀座でもクレジットカードや現金と並んで、ビットコインでの飲食料金の支払いが可能になりました。

利用できる店舗が増え、ビットコインを保有する人が増えれば、ネットワーク性が高まり、より一般化していくことになります。日本国内でパスモやスイカといった鉄道系の決済カードが普及していますが、海外では使えません。

ビットコインはわかりやすく言えば「世界で使えるパスモ」です。ただし、通貨単位が円ではなく、ビットコインという変動しやすい単位になっている。このように理解すれば、その可能性が感覚的にわかるはずです。

さらに、価格上昇の背景には、投機的な面も否定できません。仮想通貨が上昇し、投資家の認知度が高まれば、市場に参加する人が増えますが、新規参入者はビットコインの「買い」から入ります。つまり、市場参入者が増えると、売る人よりも買う人が優勢になるのです。大口の保有者が売りに回るように流れが変わるまでは、このような新規の買いが優勢です。しかし、そこで調子に乗って買い上がっていくと、いつか梯子を外されます。そのリスクは徐々に高まっています。

フィンテックブームで、ビットコイン以外にも多くの仮想通貨が登場し、市場は玉石混交の状態になっています。同じ日本経済新聞には、仮想通貨「イーサリアム」が作る企業連合に三菱UFJフィナンシャル・グループやトヨタ自動車の子会社が参加するという記事も掲載されています。一方で、聞いたことのないような仮想通貨に投資をして一攫千金を狙う怪しい投資話も出回っているようで、今後「仮想通貨詐欺」のような事件が起こる懸念もあります。

私の仮想通貨との付き合い方は、利便性の高いものを決済手段として使うというものです。国内の小口資金の支払いや、海外へのまとまった資金の送金にはビットコインはコストと利便性で圧倒的にメリットがあります。しかし、大口の資金の決済手段としては、現時点では価格変動リスクが高すぎるのがデメリットです。

メリットを理解し、上手に付き合いたいものです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。