「千葉市長選挙ネット討論会」をニコ生などで10,000人以上が視聴
千葉市長選挙ネット討論会 http://live.nicovideo.jp/watch/lv298067124
5月17日、ニコニコ生放送で「千葉市長選挙ネット討論会」が生中継されたところ10,000人以上の方が来場した。
投票率の低下などが言われる中で、また18歳選挙権の実現により、「若者たちにどうやって伝えていくか」といった新たな課題も生まれている。こうした中で、どうしたらこれまで届かなかった層も含めて幅広い層にアウトリーチできるか、できる限り多くの皆さんに届く仕組みにするにはどうすればいいのか等と考えた結果生まれたのが、選挙の関心が高まる告示後に、ネットをメインに配信する仕組みにしようという今回の「千葉市長選挙ネット討論会」だった。
ニコ生にタイムシフトを公開してもらい、当日見られなかった皆さんも事後でも無料で見られるようにしてもらった。
是非、見てもらえればと思う。
【参加者】
熊谷 俊人 氏
大野 隆 氏
【コーディネーター】
高橋 亮平
何が新しいの「ネット討論会」。出来レースでない生の激論
今回企画するにあたり、見た目も「公開討論会」との違いもビジュアルに見せようと、アメリカ大統領選挙やつい先日のフランス大統領選挙さながらに候補者には立って行なってもらうスタイルにした。
ニコ生視聴者からはすかさず「立ちですかい」とのコメントが流れるなど、普段、政治家の討論会を見慣れている層に取っても斬新な印象を持ってもらう事ができたのではないかと思う。ただ、重要なのは言うまでもなく見栄えではない。
今回のネット討論会では、「事前に一問一答の答えを準備してもらって、台本を読む」といういわゆるシナリオ型だけでは対応できない、相手の候補者への質問や、その答えなど、その場でしか答えられないような工夫をした。実際に動画を見てもらうのが一番分かりやすいとは思うが、こうした取り組みによって、より候補者の本当の考え方や人となりが見えるものになったのではないかと思う。
今回のネット討論会では、討論してもらう内容についても工夫をした。投票を行う際に、有権者一人一人が「日常から感じている思いを主観的に考えて判断すること」、これも重要な要素である。ただ一方で、多くの有権者は、街全体を俯瞰的に見た際に、自分たちの住む街にどういう課題があり、どこに問題があるのかといった事を普段考えているというわけでもないだろう。もちろん候補者が提示する「街の課題」だけが街の課題というわけではなく、場合によっては、ある候補者の提示する課題なんて課題だとは思わないという事も今後はあるかもしれない。
しかしそうは言っても仮にも選挙に立候補しようという人たちである。
そういった人たちが「政治家になりたい」ではなく、「何か問題を感じてそれを解決したい」と思っているのであるとしたら、有権者がそれを共有して選ぶことは非常に重要なことであり、また、有権者自身が「それぞれが思う街の課題」を考えてもらうためにも非常に価値のある情報になるのではないかと思うのだ。
一方で、政治家たちに求められるのは「これが問題なんです!」という問題提示だけではない。
むしろそれを「どうやって解決するのか」が重要だ。それが「政策」である。
「選挙でどうやって候補者を選ぶのがいいのか」と聞くと、よく模範解答のように「政策を比較して投票する」という言葉を聞くが、皆さんはどのように比較しているだろうか。
大事なのは、投票する政治家がそもそも「自分と同じことを課題と感じているか」、「目指すべき方向性は一緒か」、「本当にそれを解決できる策を提示しているか」、「その政治家はそれを本気でやる気か」なのではないかと思うのだ。
その意味でも今回の構成自体も非常に面白い内容になったのではないだろうか。今回の「千葉市長選挙ネット討論会」では、さらにそうした前提の元に今回の千葉市長選挙の争点をそれぞれの候補者はどう考えているのか。またそれぞれの候補者に対して、自分が市長になる事で千葉市はどうなるのかについても議論してもらった。90分という限られた時間の中では、密度の濃い情報を入れ込む事ができたのではないかと思っている。
若者に質問させたり、若者に関係する政策ばかりを議論させる事が「18歳選挙権」対策ではない
18歳選挙権の実現により選挙権自体の対象は拡大したわけだが、一方で、選挙以外の若者の参画の仕組みの整備や政治教育の充実という意味では、一向に進んでこない部分もある。
最近は「公開討論会」の中でも若者を意識した取り組みも少しずつ増えてきている。こうした場に若者も当事者として巻き込んでいく事自体はいい事だと思うし、こうした若者を見る事で同世代も「自分ももう少し考えてみようか」と感じたり、上の世代からも「最近の若者もこんなにしっかりしているのか」と思ってもらう機会にもなるかもしれない。
今回においても主催した日本青年会議所の意向もあり、大学生から直接質問をしてもらう機会も作ったわけだが、一方で「若者を参加させればいい」という事には疑問がある。公開討論会の中には新たに増えた有権者を含めこうした若者を意識する事で、討論会のテーマ自体を大きく若者に関わる政策に寄せている取り組みもある。
しかし、公開討論会で行うべき内容は、とくに首長選挙などにおいては、自分たちのまちが次の4年間でどうなるのかという事が重要なのであり、そのテーマは決して若者が関心を持っているテーマばかりではないはずだ。むしろ若者たちに対しても、自分たちの街にはどう行った課題があるのか、また自分たち世代としては「当たり前」だと思う事が通らない背景には他の世代のどういった利害関係があるためなのか。さらにはこうしたそれぞれの思惑の中でどういう争点があるのかなどについても考えてもらえるようになってもらいたいのだ。
有権者が投票に行かないのは、投票用紙の書き方や投票箱への入れ方が分からないからではない。さらに言えば、重要なのは投票率ですらなく、どうそれぞれの投票の質を高めていくかではないかとも思う。その点から考えても、今回の「千葉市長選挙ネット討論会」の動画は、選挙の終わった後にも政治教育の教材としても使ってもらえるものになったのではないかと思っている。
政治家たち自身も今後はこうした討論会に対応できる能力をつけてもらいたい
最後にあらためて今回こうした全国初となる市長選挙でのネット討論会を実施するために、まさに身を粉にしながらも実現してくれた日本青年会議所政治参画教育委員会委員長の岡村徳久さん、小川智右さん、主催してくれた公益社団法人日本青年会議所および公益社団法人千葉青年会議所の皆さん、視聴者がつかない可能性があると思いながら協力してくれたドワンゴの皆さん、その他ご協力いただいた多くの皆さんには感謝を申し上げたいと思う。
今回行われた「千葉市長選挙ネット討論会」の取り組みは、もちろん修正しなければならない部分もあるとは思うが、間違いなくこれまで行ってきた「公開討論会」を進化させる選挙時における民主主義の新たなインフラの先導的モデルとなったのではないかと思っている。
ただ一方で、候補者にとっては、非常に厳しい時代になる事を示したものでもあったように思う。どの選挙かとまでは言わないが、これまでの「公開討論会」ですら、「うちの候補者は話をするところを見せると票が減るから出さない方がいい」と辞退する陣営があった。これまでの「公開討論会」であれば、事前に質問項目を知って、流れも押さえておけば、スタッフやブレーンが答えを作り、話をする練習をした上で参加すればいい形であったにも関わらずだ。
今回行った「千葉市長選挙ネット討論会」では、それぞれが準備できる部分もあるが、テーマについても相手側が提案したテーマへの質問もあり、何より候補者同士が質疑応答し合う構成になっていた。選挙戦における候補者の心境は、熱い想いを持ってビジョンや政策を訴える事で有権者の心を掴みたいという一方で、余計な発言をしたり、重箱の隅をつつかれるような事も含め、発言によって余計な問題や敵を作らないようにしなければと細心の注意を持って発言することになる。
こうした事をリアルタイムで対応しなければならず、しかもその動画が保存され選挙期間中繰り返し非常に多くの方々に見られるという事を考えれば、候補者の負担や緊張はかなり大きなものがあっただろうと容易に想像できる。それでもなおこうした場に出て、有権者である100万の千葉市民と千葉市の未来を想い、真摯に話をしてくれた熊谷俊人さん、大野隆さんにはあらためて感謝を申し上げたいと思う。
まさにこれからの時代における政治家の像を示してくれたのではないだろうか。今後、こうした「ネット討論会」の取り組みは、日本青年会議所とともにさらに多くの地域へと広げていきたいと思っている。
そこで問われるのは、まさに政治家としての質である。全国にいる政治家たちには、是非こうした討論会にも対応できる能力と覚悟を持って挑んでもらえるようになってもらいたいと思う。
約100万人の千葉市民の皆さんにおかれましては、是非5月28日の投票日までに、それ以外の方々も今後の参考にと「千葉市長選挙ネット討論会」の動画を見てもらいたい。
千葉市長選挙ネット討論会 http://live.nicovideo.jp/watch/lv298067124
高橋亮平(たかはし・りょうへい)
一般社団法人政治教育センター代表理事、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て現職。学生時代訴え続けた18歳選挙権を実現。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。MXテレビ「TOKYO MX NEWS」では週一ペースで解説を務める。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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