トランプ米大統領は24日、バチカンを訪問し、ローマ法王フランシスコと会見する。バチカンの情報によると、会見は一般謁見前の午前8時半の予定だ。
ミラノ代表紙コリエーレ・デラ・セラ(21日付)によると、トランプ大統領のメラニア夫人はローマ法王に個人的な書簡を送り、「ローマ法王を謁見できることは大きな名誉です」と述べたという。夫人はスロベニア出身のカトリック信者だ。トランプ氏はプロテスタント派の長老派教会に所属。幼い時から聖書に強い関心があったという。就任式には親の代からの聖書を持参し、その上に手を置いて宣誓式に臨んでいる。
バチカン筋によると、トランプ大統領とフランシスコ法王との会談では6つの議題が挙げられているという。①移民対策、②気候変動、③貧困対策、④生命の尊厳、⑤宗教の自由、⑥キリスト者の迫害問題だ。
①移民問題ではトランプ大統領とフランシスコ法王と間には意見の隔たりがある。不法な移民の流入を阻止するためにメキシコ国境沿いに壁の建設を計画しているトランプ氏に対し、フランシスコ法王は「いかなる壁も建設すべきではない。壁を建設する者はキリスト者ではない」と主張してきた。②気候変動問題では、ローマ法王は環境問題に関する回勅「ラウダ―ト・シ「(“Laudato sii)を公表し、環境保護をアピールしてきたが、トランプ氏は環境汚染問題では懐疑派と受け取られている。
興味深い点は⑥だ。中東地域などに住む少数派キリスト信者たちはイスラム過激派から迫害され、1億人以上のキリスト者たちが故郷から追われて難民となっている。トランプ大統領は同問題でローマ法王と意見を交換することで、世界のキリスト者への連帯を表明する狙いがある(「キリスト者1億人以上が弾圧下に」2015年8月3日参考)。
トランプ大統領はバチカン訪問前にサウジアラビア、イスラエル、そしてパレスチナ自治区を訪問、イスラム教、ユダヤ教の中心地を巡礼し、中東の和平実現に強い関心を示してきたばかりだ。
ちなみに、フランシスコ法王は2014年6月8日、「信仰の祖」アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3宗派代表をバチカン法王庁に招き、中東の和平実現のために祈祷会を開催している。ローマ・カトリック教会の最高指導者フランシスコ法王、ユダヤ教代表のイスラエルのペレス大統領(当時)、そしてイスラム教代表のパレスチナ自治政府アッバス議長の3人は、バチカン内の庭園で祈りを捧げた(「『祈り』で中東和平は実現できるか」2014年6月1日参考)。
トランプ大統領はバチカン訪問後、25日にはブリュッセルに飛び、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談に参加した後、26日から27日にかけイタリア・シチリア島で開催される先進7カ国首脳会談(G7サミット)に初デビューするが、「トランプ大統領はローマ法王との会見を先進7カ国首脳会談(G7)より重要視している」という。
なお、トランプ大統領は19日、駐バチカン米大使にニュート・キングリッチ元下院議長の夫人、カリスタ・キングリッチ氏(51)を任命したばかりだ。上院の承認を受けて正式に就任する。キングリッチ夫人はカトリック信者だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年5月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。