【映画評】バッド・バディ! 私と彼の暗殺デート

なぜかダメ男とばかりつきあい失恋を繰り返す少し変わった女の子・マーサは、ある日、理想の男性フランシスと出会い、互いに運命的な恋に落ちる。だが彼の正体は、伝説の殺し屋で、しかも人殺しが許せず、依頼主を殺すという一風変わったヒットマン。おかげで彼は世界中の殺し屋やFBIから命を狙われていた。そんなフランシスと一緒にいるうちに、マーサの中で眠っていた暗殺能力が覚醒し、最強の殺し屋としての素質に目覚めていく…。

風変わりな女の子が伝説のヒットマンと恋に落ちたことから暗殺能力に目覚めていくアクション・ラブコメディ「バッド・バディ! 私と彼の暗殺デート」。うだつのあがらない主人公が実は凄腕で…というラブコメはどこかで見たような…と思ったら、快作「エージェント・ウルトラ」と同じ脚本家だった。どうりでまるで姉妹編のようなノリである。どこにでもいる、でもちょっぴり変わった女の子のマーサが凄腕の殺し屋として覚醒するという、ありえないドタバタ劇なのだが、これが予想外に楽しいのだ。笑わせるのは、フランシスがダンス好きの“踊る殺し屋”という点で、なるほど、相手の力を利用する格闘能力は、ダンスのよう。そんな彼を理想の男性と思ってしまうヒロインは、中身はピュアだが暴走気味の失恋女子で、ある意味、殺し屋よりアブナイ性格である。割れ鍋に綴じ蓋といったところだが、このカップルが実にキュートなのだ。そう見えるのは、演じるアナ・ケンドリックとサム・ロックウェルの好演があるからこそ。特に猫耳をつけたケンドリックの笑顔が可愛すぎる。ガール・ミーツ・ボーイならぬ、失恋女子・ミーツ・ヒットマン。ティム・ロスの怪演もひそかな見所だし、マーサの能力をフランシスが引き出すナイフのシークエンスは、痛快だ。クレイジーなのに笑えるというギャップが楽しい、憎めない1本である。
【60点】
(原題「MR.RIGHT」)
(アメリカ/パコ・カベサス監督/サム・ロックウェル、アナ・ケンドリック、ティム・ロス、他)
(クレイジー度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年5月25日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。