【映画評】家族はつらいよ2

渡 まち子

提供:松竹

平田周造と富子の熟年離婚の危機から数年後。周造は、マイカーでのドライブが趣味だったが、近ごろ、車に凹みや傷がめだつようになった。軽い接触事故を起こしてしまった父に、家族は、高齢者の危険運転を心配し、何とか運転を止めさせようとする。一方、周造は、ドライブの途中で高校時代の友人・丸田と再会。事業に失敗し妻にも逃げられ、わびしい独居老人となった丸田を励まそうと小さな同窓会を開く。酔っぱらって平田家に泊まった丸田だったが、翌朝、彼は息を引き取ってしまった。てんやわんやの大騒ぎとなる平田家だが…。

離婚危機を乗り越えた平田家が、旧友との再会から新たな騒動を巻き起こす「家族はつらいよ2」。一軒家で二世帯三世代同居の生活。何かと問題はあるが、その度に、家を離れた妹夫婦や弟夫婦が集まり、にぎやかな家族会議を開く。核家族化が顕著な現代社会では、これ自体がもはやファンタジーだ。だが、そんな彼らが直面する問題は、ことごとくリアルで、今回は、高齢者の危険運転と独居老人の孤独、無縁社会の現実を描く。次男の庄太は、看護師の憲子と結婚し家を出ているが、憲子の母親が、認知症の祖母と同居している設定で、認知症と介護の問題もちょっぴり盛り込んでいる。憲子は、母子家庭で育ったため、大家族に憧れがあるのだろう、時に身勝手なことばかり言い合う、平田家の家族たちを、いつも口数は少ないが、優しいまなざしで見つめている。一方、二階に泊めた丸田が息を引き取っていると知った時、誰もがうろたえる中、一番、冷静でてきぱきとした対応をみせるのもまた憲子だ。看護師という職業である以上に、人の生死にきちんと向き合う覚悟が日頃からできているのだろう。

ただ、平田家は誰もが根っこの部分はいい人ばかり。それが分かるのが、丸田の葬儀の場面だ。たとえ面識はなくても、こうして自分たちと少しだけでも縁があった老人をひとりぼっちで葬(おく)るのは悲しすぎる。丸田が最後に関わった平田家の家族たちが心優しく善良な人であることが、救いとなっている。今回も、前作のメンバーが全員集合。チョイ役にも豪華なキャストが揃うのがさすがは山田組だ。無縁社会の悲哀を体現する丸田役の小林稔侍も味があっていい。いい歳のおやじたちが小料理屋で嬉しそうにバカ騒ぎする様は、小津映画を見ているようだった。
【65点】
(原題「家族はつらいよ2」)
(日本/山田洋次監督/橋爪功、吉行和子、西村雅彦、他)
(悲喜劇度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。