日本企業に「やる気のない社員」が多いのは、社員ではなく会社のせい

内藤 忍

人材コンサルティングのギャラップ社が、世界各国の企業を対象に実施した調査によれば、日本は「熱意あふれる社員」の割合がわずか6%と調査した139カ国中132位と最下位クラスだということです。アメリカの32%と比べるとかなり低く、さらに「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%と仕事に対する意欲が極めて低いことがわかったと、日本経済新聞の記事は紹介しています。

調査の方法に興味があって、ネットで調べてみると、どうやら次のような12の質問を行い、5段階で回答してもらい、その結果を分析しているようです。

Q1:職場で自分が何を期待されているのかを知っている
Q2:仕事を上手く行うために必要な、材料や道具を与えられている
Q3:職場でもっとも得意なことをする機会を毎日与えられている
Q4:この1週間で、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
Q5:上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気にかけてくれている
Q6:職場の誰かが自分の成長を促してくれる
Q7:職場で自分の意見が尊重されている
Q8:会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
Q9:職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
Q10:職場に仲の良い友達がいる
Q11:半年のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
Q12:この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった

もし、この設問が本当だとすると、日本の会社にやる気が無い社員や、不満をまき散らす社員が多いという結論は、随分ミスリーディングです。

仕事をしている多くの人は、自分の仕事をフェアに評価して欲しいと願い、仕事を通じて自己実現を果たし、結果を出したいと思っています。そして、主体的に仕事をして、自分の存在意義を感じられるようにするために必要な環境やツールを使いたいと感じています。

しかし、一般的に日本の会社では「褒める」ということをあまりしません。また、会社の成長と個人の成長の「ベクトル合わせ」が行われにくく、個人としての成長を感じる機会が少ないのです。また、パソコンや通信手段などのツールはセキュリティやコストの問題から、「古いまま」になっている会社も珍しくありません。多くの金融機関では、個人情報漏洩を恐れ、会社のメールからの個人顧客へのメール配信を厳しく制限しています。

さらに、大企業になると業務が硬直化し、職務分担が細かく決まっているため、新しいことにチャレンジしにくい風潮があり、工夫して新しい価値を生み出そうというインセンティブが生まれにくくなっているところが多いと思います。

このような環境の中で、上記の12の質問にYesと回答できる日本の会社員は、少ないのでは無いでしょうか。

仕事をする人たちの意識はこの数年間で急激に変わりました。会社のために自分を犠牲にするといった滅私奉公ではなく、仕事に自分の存在価値を見出し、自己成長を通じて会社に貢献したいと考える人が増えています。また、与えられたことをこなすだけの社員ではなく、自ら課題を見つけ、解決していくような主体的な仕事を求める傾向があるのです。環境さえ与えられれば、以前よりも仕事をする人たちのやる気は高まってくると思います。

ギャラップ社の調査結果は、日本企業が従業員のニーズに合った職場環境を作れなくなっていることを示しているというのが私の見立てです。問題は社員ではなく、むしろ会社側にあるように思えてなりません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。