読売は「御用下ネタ新聞」か

池田 信夫

アゴラはむずかしい話ばかりだと思われているので、たまには息抜きに加計学園の本筋とは関係ない話。この問題が特異なのは、朝日新聞が5月17日の朝刊1面トップで怪文書を取り上げ、その情報源が取り沙汰されている22日に、読売が朝刊で「前川前次官 出会い系バー通い」と書いたことだ。

この記事には加計学園のことは書いてないが、私でも「怪文書のネタ元だな」と気づいた。その後、前川氏が25日に記者会見して「文書は存在する」と証言し、出会い系バーの件も認めたが、ネットの話題はもっぱらこの歌舞伎町の「恋活バー」だ。

昨年秋に杉田和博官房副長官から受けた注意処分の話が、今ごろ出てくるのは不自然だ。注意処分ぐらいだと公表されず、関係者以外は知らない。杉田氏は警察庁出身だから、警察ルートの情報だと思われるが、前川氏は実名で管理売春に登録していたのか。彼の身元はどうやって割れたのか。

歌舞伎町のフーゾクの客なんて何万人もいるので、家宅捜索で身元が割れたとは考えにくい。(天下り問題が発覚する前の)去年秋から警察が前川氏を尾行していたということもありえない。歌舞伎町を巡回する警官が見つけた可能性もあるが、私服警官が事務次官を警護していたのかもしれない。

前川氏は怪文書を朝日だけではなく民進党にも売り込んだと思われ、第1報は16日21:32にNHKが出している。朝日が翌日の朝刊で大きく取り上げたが、読売は書いていない。情報提供をボツにしたのかもしれない。

では「出会い系バー」の情報源は誰か。これは官邸の陰謀というような大げさな話ではなく、読売のサツ回りが夜回りでつかんだネタだと思う。警察としては、すでに注意処分になった話なので、「ちょっとおもしろいネタがあるよ」と教えたのだろう。

しかし取材源を守るというルールを破って、内部告発者と思われる人の下ネタを書くのは、「読売は御用新聞に成り下がった」と批判されてもしょうがない。安倍首相が国会で憲法改正案について「読売新聞を読んでください」と答弁したことと合わせ考えると、主筆の意図が感じられる。

いつも私は朝日新聞を批判しているが、新聞が政府の情報操作に使われるのは危険だ。社会部が軽い気持ちで書いたのかもしれないが、読売は報道機関として国家権力との距離を保ってほしい。