ニコンのデジタルカメラに特許侵害の疑いがあるとして、米国際貿易委員会が調査を始めると発表した。ドイツのカールツァイスなどの求めに応じたものと報道されている。
米国特許商標庁の特許データベースで両社の特許取得状況を調べてみた。その結果、ツァイスはデジタルカメラに関連する米国特許を11件取得していることがわかった。もっとも古い特許は2011年に出願し2014年に特許権が成立している。対して、ニコンは89件の米国特許を持っている。その中には2006年出願のものも含まれている。
ツァイスは特許権の数でも、それを蓄積してきた歴史でもニコンに負けている。国際貿易委員会がツァイスの訴えを認めたとしても、ニコンが反訴すればツァイスも特許侵害していると認定される恐れがある。それでも、なぜツァイスは訴えたのだろうか。
それは、半導体露光装置の特許侵害について、ニコンがオランダのASMLとドイツのカールツァイスをオランダ・ドイツ・日本で訴えたからだ。半導体露光装置に関する特許侵害訴訟を有利に決着するために、負けも覚悟のうえでデジタルカメラについて米国で訴えたと、ツァイスの行動は理解できる。
なぜツァイスは日本で侵害訴訟を起こさなかったのだろうか。日本の特許庁の特許データベースを調べればすぐにわかる。ツァイスの持つデジタルカメラ関連に日本特許は33件だった。ニコンは4417件である。これでは彼我の差があり過ぎて勝負にならない。
特許権は企業の盛衰に大きく影響する。だから、少しでもわが社を有利にしようと提訴と反訴が繰り返される。その状況がよくわかる一件だった。