昨日(5月30日)、行政改革推進本部の官民電波利活用PTから『公共用周波数の民間開放に関する緊急提言』を河野太郎本部長、平将明本部長代理とともに発表しました。
提言の背景
すでに2010年⇨2016年で通信量は20倍に増加しており、今後さらに自動運転、ドローンなどIoTの普及、さらに2020年オリンピックパラリンピックを見据えると、電波の不足が予想されます。
米国や英国では、公共用に割り当てられた周波数を効率化・再編し、民間開放する取り組みが進められています。一方、日本では開放以前に情報開示が十分でなく、有効に活用されているかも不透明です。さらに、民間開放について数値目標もありません。
このままでは周波数の確保がボトルネックになり、第四次産業革命で遅れをとる可能性があります。
このような問題意識から、国や自治体に割り当てられた周波数という、政府の保有する資産を有効に利用し、新たな経済成長のボトルネックの種をいかにスピーディに解消できるよう、提言をまとめました。これは『成長戦略に直結する行政改革』であると考えています。
提言要点
1.ブラックボックス状態の透明化、第三者機関による監査
国や自治体に割り当てられた公共用周波数については、警察、防衛、消防などはじめ、現状では、どこに割り当てられているのかさえ情報が開示されておらず、ほぼブラックボックス状態である。これでは民間開放はおぼつかない。米国の場合は、軍などの政府機関についても、利用機関と用途が詳細に開示されている。まず、米国並みの情報開示を行うよう、速やかに制度改正すべき。
2.公共用周波数を政府の資産として管理・有効活用
国や自治体に割り当てられた公共用周波数は、政府(国・自治体)の保有する資産である。資産価値を速やかに精査し、そのうえで財務省・総務省・行政改革推進本部等、関係省庁が連携し、政府の資産として管理・有効活用する体制整備を行うべき。資産価値は少なくとも7.4兆円と考えられる。
3.民間開放の目標設定
公共用周波数のうち少なくとも1000MHz幅を2022年までに民間開放(資産価値は、前期の暫定的概算に基づき、3GHz以下の帯域で現状の半分を民間開放すると仮定すれば、少なくとも3.7兆円分)といった水準で設定すべき
4.利用料設定など、民間開放のインセンティブの制度化
効率的な利用と不用帯域の開放を進めるため、公共用周波数(国の機関用を含む)にも利用料を設定する、利用水準が低い場合にペナルティを課すなどの方策を速やかに検討すべき
5.周波数割当行政の体制見直し
今回の緊急提言1~4に関わる総務省の取り組みが不十分であると判断された場合は、資産管理の観点から指令塔機能の切り離し(前記1で、資産管理・有効活用の体制整備)、チェック機能の切り離し(前記2で、第三者機関による監査導入)を速やかに行うべき
以下本文
公共用周波数の民間開放に関する緊急提言
平成29年5月30日
自由民主党 行政改革推進本部
官民電波利活用PT
第四次産業革命の進行に伴い、IoT、自動走行、自動飛行などをはじめ、あらゆるモノがつながり、これまで不可能だったサービスや機能が現実化しつつある。それを支える基盤のひとつが電波である。
電波の利用ニーズは、これまでもスマホの普及拡大などに伴い急速に拡大してきた(移動通信トラヒックは2010年から16年までに約20倍)。今後、第五世代移動通信システム(5G)が導入され、さらに第四次産業革命が加速していけば、より飛躍的な拡大が見込まれる。また、短期的には2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも、電波の利用ニーズ拡大が見込まれる。
新たな電波の利用ニーズに応えるため、米国や英国では、公共用に割り当てられた周波数を効率化・再編し、民間開放する取組が進められている。平時は民間、必要なときは官が利用するといったダイナミックな共用技術の開発・導入の動きもある。
このような取組に関して、我が国は出遅れている。民間開放以前に、公共用周波数に係る情報開示すら十分ではなく、有効に利用されているかどうかも不透明である。米英のように民間開放の目標設定もなされていない。このままでは、周波数の確保がボトルネックになり、第四次産業革命で我が国が後れをとることにつながりかねない。また、東京オリンピック・パラリンピックでの不十分な対応や混乱にもつながりかねないと危惧する。
政府の規制改革推進会議でも、同様の問題意識から検討がなされている。しかし、これは単に規制改革の課題ではない。国や自治体に割り当てられた周波数という、政府の保有する資産をいかに有効に利用し、新たな経済成長のボトルネックの種をいかにスピーディに解消するか。すなわち「成長戦略に直結する行政改革」である。当PTでは、こうした見地から、識者や関係省からの意見聴取、検討を行った。これを踏まえ、政府が緊急に取り組むべき施策を提言する。
1.ブラックボックス状態の透明化、第三者機関による監査
国や自治体に割り当てられた公共用周波数については、警察、防衛、消防などはじめ、現状では、どこに割り当てられているのかさえ情報が開示されておらず、ほぼブラックボックス状態である。これでは民間開放はおぼつかない。米国の場合は、軍などの政府機関についても、利用機関と用途が詳細に開示されている。まず、米国並みの情報開示を行うよう、速やかに制度改正すべきである(電波法施行規則改正)。
また、公共用周波数がどれだけ有効に活用されているのかも不明である。現行の利用状況調査は、3年に一度なされる自己申告のアンケートが基本であり、十分なチェックとはいえない。平成25年に会計検査院から、需要調査も行わないまま公共機関に割当がなされ、有効活用されていなかった事例が指摘されたが、これは氷山の一角と考えられる。改善のため、第三者機関による監査、利用水準が低い場合の退出スキームなどを導入すべきである。
2.公共用周波数を政府の資産として管理・有効活用
国や自治体に割り当てられた公共用周波数は、政府(国・自治体)の保有する資産である。資産価値を速やかに精査し、そのうえで財務省・総務省・行政改革推進本部等、関係省庁が連携し、政府の資産として管理・有効活用する体制整備を行うべきである。
なお、暫定的な概算として、公共用周波数の帯域の単価を57.5億円/MHzと仮定し、公共用周波数が占用・共用分を含め1290MHz幅(価値の高い3GHz以下の帯域で、共用帯域の半分が公共用と仮定)とすれば、資産価値は少なくとも約7.4兆円となる。また、この一部を民間開放して成長産業で有効に活用した場合、携帯通信会社の売上規模を参考にすれば(帯域あたりで試算すると210億円/MHzなど)、より大きな経済効果が期待される。
3.民間開放の目標設定
公共用周波数の民間開放について、米国では「連邦政府用から1000MHz幅」、英国では「政府用から2022年までに750MHz幅」といった目標設定がなされ、成果があげられつつある。我が国ではこれまで、「移動通信用周波数のため2020年までに2700MHz幅を確保」(民間用・公共用のいずれからかは問わず)との目標(平成26年電波政策ビジョン懇談会最終報告)が示された例はあるが、公共用周波数の民間開放に焦点をあてた目標設定はなされていない。政府として目標設定を速やかに行うべきである。
目標値は、情報開示や利用状況の監査などを経て最終確定する必要があるが、米英の取組をベンチマークとして、「公共用周波数のうち少なくとも1000MHz幅を2022年までに民間開放」(資産価値は、前期の暫定的概算に基づき、3GHz以下の帯域で現状の半分を民間開放すると仮定すれば、少なくとも3.7兆円分)といった水準で設定すべきである。
4.利用料設定など、民間開放のインセンティブの制度化
公共用周波数の民間開放を進めるためには、目標設定とともに、公共機関にインセンティブを与えることも重要である。他国でも実施ないし検討例があるように、効率的な利用と不用帯域の開放を進めるため、公共用周波数(国の機関用を含む)にも利用料を設定する、利用水準が低い場合にペナルティを課すなどの方策を速やかに検討すべきである。
5.周波数割当行政の体制見直し
現在の周波数割当行政では、目標設定、官民それぞれへの割当、利用状況のチェックなどをすべて総務省が担っている。公共用周波数の民間開放に向け、このような体制のままで機能するのか、具体的には、横並びの役所のひとつである総務省が再編を大胆に進められるのか、割当とチェックを同じ総務省が担って機能するのかなどに疑義がある。また、割当機関に関して、他国に例があるような独立性の高い機関が必要でないかとの議論もかねてよりある。
こうした中、今回の緊急提言1~4に関わる総務省の取り組みが不十分であると判断された場合は、資産管理の観点から指令塔機能の切り離し(前記1で、資産管理・有効活用の体制整備)、チェック機能の切り離し(前記2で、第三者機関による監査導入)を速やかに行うべきである。
以上のとおり、本緊急提言では、「公共用周波数の民間開放」に焦点をあて、政府の取り組むべき施策を示した。しかし、本来は、課題はそれだけにとどまらず、民間部門に割り当てられ有効に活用されていない周波数についても取組が必要である。以上で提起した項目のいくつかは、公共用だけでなく民間部門にも応用する可能性が考えられる。
(以 上)
編集部より:この記事は、衆議院議員・小林史明氏(自由民主党、広島7区選出)のオフィシャルブログ 2017年5月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。