対立相手を明確化すれば支持率はグンと上がる!

以前書いたように、ストーリーの基本構造は以下のようなものです。

日常(主人公は日常で生活しながらもどこか不満を感じている)→分離(ある出来事が起こって主人公が日常から分離される)→敗北(最初の敗北を喫する)→試練(訓練などによって欠点を克服した主人公が敵にいどむ)→勝利(試練を経て勝利を手にする)→帰還(成長した主人公が日常に帰る)

パワポを捨ててストーリーを語れ! 

このようなストーリーによって、観客は主人公に感情移入し、ハラハラ・ドキドキさせられて、最終的に精神的満足感を得ることができます。心の奥底にある感情面を揺さぶられるだけに、理屈よりもはるかに効果的です。

ところで、この構造からわかるように、ストーリーの中核は主人公と敵との「対立構造」なのです。
スターウォーズのルーク・スカイウォーカーであれば帝国との対立、ふしぎの国のアリスなら魔女との対立、宇宙戦艦ヤマトならガミラスとの対立というところでしょう。対立相手である敵を鮮明にすればするほど、観客は主人公により一層の感情移入をします。

政治の世界でも対立相手を明確にした人は、大きな支持を得ています。かつての米国のレーガン大統領はソ連を「悪の枢軸」と明言しました。英国の故サッチャー首相は「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちになりません」と断言して労働党を明確な対立相手にしました。

9・11テロ直後のジョージ・W・ブッシュ大統領は、アルカイダを明確な対立相手にすることで大幅に支持率を伸ばしました。

日本でも、小泉元首相は郵政民営化の反対勢力を対立相手として選挙で大勝利をおさめました。小池都知事は東京五輪や豊洲移転問題に関する対立相手を明確にすることによって大きな支持を得ています。小泉進次郎氏は旧態然たる農業既得権益を対立相手として戦っています。安倍内閣も、従来の役所主導を政治主導に切り替え、規制によって守られている既得権益を対立相手として支持を得ています。

このような手法に対しては、「劇場型」という批判がつきまとうことがあります。まさに、ストーリーの主人公になって対立相手と戦うのですから「劇場型」という表現はピッタリでしょう。

「劇場型」を演出したために、大惨事が巻き起こったのはイラク戦争を例に出せば十分でしょう。大量破壊兵器が存在しなかったのに、「存在する」とイチャモンを付けて主権国家を破壊してしまったブッシュ元大統領は、戦争犯罪人として死刑に処されても止むを得ないと思うのですが…。

日本の野党に元気がないのは、明確な対立軸を作れていないことに原因があると思っています。スキャンダルを材料にして政府批判をしても喜ぶのはメディアと下衆な野次馬だけで、国民の心を打つことはありません。

国民が心底怒りを憶えるような対立相手をあぶり出すことが必要なのです。
選択性夫婦別姓は政治でしか実現できないということを以前書きました。

選択的夫婦別姓は、政治によってしか解決しない!

夫婦別姓に反対するとしたら、おそらく保守派のベテラン議員が中心でしょう。「家庭はかくあるべし」という凝り固まった考えを持っている人たちです。野党としては、選択的夫婦別姓を推進し、対立相手である保守派の議員たちを表に引っ張り出せば支持率を大きく上げることができると考えます。

選択的夫婦別姓は実現しても誰にも迷惑をかけません(嫌な人は同姓にすればいいだけですから)。にもかかわらず、別姓が認められずに多大な不利益を受けている人たちがたくさんいます。間違いなく民心は推進派を支持するでしょうし、支持率を上げることもできるでしょう。

選択的夫婦別姓でなくとも、子どもの貧困問題のように、多くの人々が支持してくれるテーマはたくさんあります。「義を見てせざるは勇なきなり」と言います。是非、勇気を奮って義を行っていただきたいと願っています。

荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。