高金利外貨預金で「金融機関のカモ」になってはいけない

法人の手続きで久しぶりにメガバンクの店頭に行くと、写真のようなパンフレットが置いてありました。6月末までの、「特別金利」と「為替手数料優遇」の外貨預金の案内です。

米ドルの外貨預金金利が年4.5%。為替手数料は通常の半額というキャンペーンですが、よく見ると「買ってはいけない」金融商品であることがわかります。

特別金利は4.5%と高いですが、適用期間は2か月だけ。パンフレットに小さく書いてありますが、当初2か月で得られる税引き後の利息は、3万米ドルの預け入れで176.83ドルです。

もう1つ優遇される為替手数料ですが、こちらは買付時だけ半額に優遇されます。同じ3万米ドルの場合、15,000円になります。しかし、外貨預金が満期になって引き出す時にも米ドルから円への為替手数料がかかります。こちらは優遇されない通常の手数料で30,000円かかり、合計で45,000円です。

つまり、為替レートが全く変動しない場合、利息は2万円弱で、為替手数料は往復45,000円と2万円以上の損になってしまうのです。

パンフレットの右側で紹介されている豪ドル定期預金になるともっとひどく、購入時の優遇されている為替手数料だけで37,500円かかり、当初2か月の優遇金利で受け取る216.12豪ドルを上回っています。為替が動かなければ、購入時点の為替手数料だけで、損が発生するという訳です。

大きく書かれた年間の金利だけを見ると、高金利商品に見えますが、手取りを計算すると合法的なトリックであることがわかります。為替リスクという高いリスクを取っているにも関わらず、為替手数料とたっぷり取られて低いリターンしか期待できない、「ハイリスク・ローリターン」の「カモ」商品です。

為替リスクを取って外貨資産を保有するのであれば、高コストの外貨預金より、FX(為替証拠金取引)を使った方が圧倒的に有利です。FXの為替取引のコストは、米ドルの場合で買いと売りの差がわずか0.3銭。メガバンクの通常の為替手数料が片道1円(=100銭)ですから、330分の1です。ほとんどゼロコストといってよいかもしれません。

外貨預金とは商品の仕組みは異なりますが、為替のリスクを取るという点では同じです。預金金利の代わりにスワップポイントが毎日受け取れます(金利差によっては支払いになることもあります)。

「外貨預金は安心で、FXは何だか怖い」というのが一般的なイメージだと思いますが、商品の仕組みを理解すれば、実態は逆であることがわかります。FXでレバレッジを1倍にすれば為替の変動に対するリスクは外貨預金と同じです。であれば、圧倒的にコストの低い商品を活用するのが賢明な投資家です。

金融商品で大切なのは「コスト」です。正しい情報を集めて、知識を持たないと、こうやって資産が合法的に搾取されていく。それが資本主義です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年6月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。