東京都議選が近くなり、小池百合子都知事の動向および都議選の情勢が注目されています。そんな中、宇佐美典也さんが「小池都知事が女性に人気がある理由がよくわからない」という動画を[アゴラチャンネル]にアップロードされています。
この動画で、論理明晰で理性溢れる【男性 male】である宇佐美さんが、異性である【女性 female】の心理について客観的な観点から真摯に推察されていますが、【性別 sex/gender】という【属性 property】にイントリンシックに潜在する、あるいは社会的に影響を受けて生じる【性差 sex difference/gender difference】が意思決定に与える影響には窮されているようで、本当にお気の毒に感じます(笑)。私はけっして【女性】という【属性】の代表的サンプルであるとは思っていませんが、一応は女なので(笑)、少しは【女性】特有の【サガ disposition】を知っているのではないかと推察します。以下、私見を述べさせていただきます。
小池都政に関する世論の傾向
宇佐美さんも指摘されているように、2017年5月に実施された産経新聞社とFNNの合同世論調査の結果は、小池都政に対する評価が【男性】【女性】で異なる傾向を示しています。
小池都政の10カ月間の成果に対する評価は分かれた。(中略)
就任からまもなく10カ月を迎える小池知事が期待された通りの成果を上げていると思うかを尋ねたところ、「思う」が4割台後半(48.3%)で上回ったものの、「思わない」と答えた人も4割(41.8%)にのぼり、評価が分かれた。特に女性は、全ての世代で成果を上げていると「思う」と答えたのに対し、男性は、50代を除く全ての世代で「思わない」が上回り、小池都政への評価は、男女で逆転している。
大半の世代で男女の結果に逆転していることから、小池都政の評価には統計的に有意な【性差】が存在すると考えられ、【男性】【女性】という【属性】に起因してこのような差を生じさせる【サガ】を持つ人が一定数含まれていると推察されます。女性は小池都知事を支持する【サガ】をもつ人が男性よりも多いと考えられます。
小池都知事はこれまでに何をやってきたか
小池百合子氏が都知事としてこれまでにどのような仕事をしてきたのかと言えば、残念ながら宇佐美さんのおっしゃるようにあまりピンとくるものはありません(笑)。ここで注目したいのは、小池都知事自身が小池都政に対して一体どのように自己評価しているのかということですが、まさに2017年5月19日の東京都知事定例会見の質疑応答において、そのことを垣間見る絶好のやり取りがありました。
会見の質疑応答において、ある記者から豊洲移転関連の厳しい質問を受けていた小池都知事は、おもむろにその質問を遮り、[小池都知事の“好意的記者”ランキング]のトップに輝く日本テレビの久野村有加記者を指名しました(笑)。久野村記者は「どうぞ小池都知事のPRをして下さい」と言わんばかりの質問を行い、都知事は「待ってました」かのように延々と自己PRを始めました。
参照:[小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成29年5月19日)] (動画は31:30頃からのやりとり)
小池都知事
(記者からの豊洲問題の厳しい質問に答えて)まさしく総合的な対応が必要であり、判断が必要になってくると、このように思っております。
記者
その総合的な判断・・・(問い詰める記者)
小池都知事
はい、ありがとうございます。もう、ちょっと、次にまいりますので、失礼します。久野村さんどうぞ
久野村有加記者(日本テレビ)
日本テレビの久野村です。小池知事が知事に就任されてから間もなく300日で10ヶ月くらいたつんですけれども、小池知事ご自身はこれまでの知事の都政運営についてどのように評価されているかということと、点数があれば点数を踏まえて、あと、これだけは達成したということがございましたらお願いします。
小池都知事
振り返ってみますと、一番最初に自らで決められるところを議会の方でお認めいただいた件というのが、知事報酬の半減ということでありました。スパンと決めさせていただきました。ちなみに今回次の第二定例会議がございますけれども、こちらでもこれを継続するという条例の改正を続けるということを議会の方にお諮りをするということになっております。そこを皮切りにいたしまして、私自身はまず自分の身の周りでできるということ、例えば公用車の使い方の厳格な使用ですね。それから様々な私の周りのお金の話ですね。前任者の方が批判された部分など、これについては正してきたつもりでございます。それから議会でございますけれども、これについては議会側がお決めになることではございますけれども、議会改革が緒についた、いろいろと議会の皆様もいろんな改革に取り組もうとされていると思います。しかしまだまだ私自身は改革ということで、前へ進めているつもりでありますけれども、このスピード感が伴わないようでは困るということから、東京大改革は議会側も、それから都庁側も同時に進めていくということであります。それから情報公開ですね。皆様方もいろいろ閲覧する中でノリ弁のノリがとれてかなり見やすくなったのではないかと思います。つまり見える化を進めてきたということであります。議会の見える化も、あれだけ皆さんが報道して下さる、関心が高まるということで、見える化が結果的に進んでいるということは、大きい効果があったと思います。(後略)
まるで、小学校の授業参観日に、先生のお気に入りの優等生が、先生を喜ばせるようなサクラ質問をして、参観している父兄にアピールさせるような感じです(笑)。この質疑応答からわかることとして、小池都知事が具体的に自己申告した小池都政の成果は次の通りです。
・知事報酬の半減
・公用車の使用法の厳格化
・情報公開(公文書原則開示)
このうち知事報酬の半減というのは、他の給与に波及効果があれば別ですが、現在のところ、一部の【ルサンチマン ressentiment】を解消する以外は、都民にとっては実質上あまり影響がないことと言えます。公用車の使用法の厳格化も当然のことであり、多く見積もっても都民の懐は一人当たり年間10円くらい得したくらいです(笑)。情報公開における公文書原則開示については、どのような功罪があったかは不明です。強いて言えば、公文書のコピー代が20円から10円に値下げして他府県と同レベルになったのは小池都知事の功績かもしれません。ただし、築地市場の地下汚染データの隠蔽や豊洲市場専門家会議の事前情報リークなど、情報管理の不徹底には大きな問題があると言えます。
以上の通り、小池都知事はほとんど実質的な成果を上げていませんが、一年足らずで何から何までできるわけはなく、「成果を上げているか」というメディアの質問自体がほとんど無意味であると言えます。久野村記者の質問はさらに続きます。
久野村有加記者(日本テレビ)
知事は大義と共感を大事にされていて、様々なご意見を聴いているというのは重々承知しているんですけれども、知事が先日テレビに出られた時に「決められない知事」じゃないかというご指摘も受けていたかと思うのですが、その点について知事の御意見があればお願いします。
小池都知事
いや、これほど決めてきた知事はいないのではないでしょうか。はい。自らのことを決め、またスパンと決めるものは決め、そして例えば豊洲の問題などは中途半端に決めたから私は立ち止ったのであります。だからこそ今、決められるようにそのことをテーブルに出しているということでありまして、「早く早く」と言っている人達は、何か都合が悪い人達ではないかというふうに思います。ですから行政手続きに従って一つ一つ積み上げていくということでございます。もちろん早いに越したことはありませんが、拙速という言葉もありますので、私は一つづつこれを見て行きたいと思っております。それから、余計なことかもしれませんが、クルーザーの問題がクローズアップされていますけれども、今あらためて見直しをしています。それで面白いんですけれども、私も新東京丸というのは、この視察船ですね、なんかセレブが乗る船だということに喧伝されているけれど、セレブの方も乗るかもしれないけれど、都民は毎年12000人お乗りになっているわけで、今、あの船に乗りたいという人が殺到しているということで、むしろクローズアップされていると。それだけにワイズスペンディングなものにしていく、そのために大胆な見直しも必要かと思っております。
これもまさに自然な形で都知事に公然と批判を弁解させる機会を与えるナイスな質問と言えます(笑)。選挙中に「メディアを味方につける」と公言していた小池都知事は見事に「公約」を達成していると言えます(笑)。「早く早くと言っている人達は、何か都合が悪い人達」といったような【ポピュリズム populism】も絶好調です。早期移転を求めている人達が主張しているのは、移転に伴う問題が見当たらないにもかかわらず、理不尽に無駄な補償費が生じていることはもとより、業者の方々が事業展開をまともに検討できない不透明な状況を一刻も早く解消するということです。
これまでに多くの関係者がボトムアップで積み上げながら進めてきた豊洲市場と東京五輪というプロジェクトに対して、沖縄基地移転問題における鳩山元首相の事例のように、確固たる論理なく踏み込んで、不必要なステイクホルダーの混乱と時間の損失(経済的損失)を招いたことは、小池都政のネガティヴな成果であると言えます。
なお、20億円のクルーザーについては、有権者一人当たり200円程度の出費となります。もちろん、小池都知事の人格とはまったく関係がない通常の政策事案です。妥当と価値判断すれば許容すればよいし、不妥当と判断すれば反対すればよい程度の問題と考えます。視察の頻度にもよりますが、収益が期待できる事業であるのであれば、民間に委託するのも選択肢の一つになると考えます。
人間は何をもって事物を判断するのか
さて、小池都政に対する評価など、人間が事物に対して判断をする上での基準となる概念に【真・偽 true/false】【善・悪 good/evil】【美・醜 beautiful/ugly】があります。基本的に人間には、【真】であり【善】であり【美】であるものを積極的に選択する傾向があります。
【真・偽】とは、事物がこの4次元の時空間を支配する【論理 logic】に適っているか適っていないかを表すカテゴリカルな値です。【客観的 objective】で【普遍的 universal】な尺度によって判定されるため、値は一意に定まります。この値ですべての事物を判断すれば基本的に争点はなくなりますが、政治的な問題のように帰納的な解法が要求される場合には、【真・偽】の判定が蓋然性の有無に帰結してしまうことが普通であり、ときにゼロリスクの追及にまで発展することがあります。
【善・悪】とは、事物が4次元の時空間を俯瞰する5次元の軸を作っている人間の精神に存在する【倫理 ethics】に適っているか適っていないかを表す値です。【論理】が一意に定まるのに対して、【倫理】は個人の【主観的 subjective】な価値感によって定まる規範であるため、個人の数だけ存在することになり、値は一意に定まりません。【哲学 philosophy】と【宗教 religion】は共通の規範を提議しますが、残念ながら【普遍的】な規範の存在が証明されているわけではありません。そんな中、【普遍的】であることを目指した規範として知られているのが、カントの【定言命法 categorical imperative】に代表される【義務論 deontology】とベンサムの【功利主義 utilitarianism】に代表される【帰結主義 consequentialism】です。このような考え方によって、「殺人をしてはいけない」「盗んではいけない」「嘘をついてはいけない」などの【モーゼの十戒 ten commandments】や【教育勅語 imperial rescript on education】に見られるようなごく常識的な規範を設定することが可能となります。
【美・醜】とは、事物が人間の精神に存在する【美学/エステティック aesthetics】に適っているか適っていないかを表す値です。この概念は「美しいものはイデア(美そのもの)をもっているから美しい」としたプラトンに遡ります。【美学】という言葉の創始者であるバウムガルテンは「快と不快の感情をもたらす感性による事物の認識」として美を理解し、「事物が完全であると同時に鑑賞能力が完全であるときに認識される」としました。これに対して、カントは、著作の「判断力批判」において、「美は美を感じる側にあり、社会の共通感覚がこれを生み出す」とし、「美は【主観的】であるが【普遍的】である」としました。
以上のように、【真・偽】を判定するのは容易ではなく、【善・悪】【美・醜】については普遍的な原理が発見されていないというのが現状ですが、男性・女性に拘わらずこのような概念を意識的あるいは無意識に持ちながら事物を判断しているというのは【真】であると考えます。なお、政治の評価に必要なのは、あくまでも政策の【真・偽】【善・悪】【美・醜】であり、政治家の【善・悪】【美・醜】は【コンテクスト context】に過ぎません。もちろん、法律がある以上、政治家の資格(国籍等)の【真・偽】は問われることになります。
判断に影響を与える性差とは
世論調査で明確な男女差があったのは、各種判断にあたって人間の心理に【性差】があるためと考えられます。心理学的な【性差】は、先天的に発生する【生物学的性差 sex difference】と後天的に発生する【社会学的性差 gender difference】に分けられます。以下、各性差について説明しながら、小池都知事が女性に人気がある理由について分析していきたいと思います。
生物学的性差
女性の心理に影響を与える生物学的要因としては、(1)ホルモンバランスが乱れやすい、(2)左右の脳の情報交換が活発であることを挙げることができますが、このうち、(2)の要因が大きな影響を及ぼすことが知られています。
女性は男性に比べて、右脳と左脳を連携させる【脳梁 corpus】が太く、【前交連 anterior commissure】が大きいことが科学的に明らかになっています。このことが左右の脳の情報交換を活発化し、【性差】を生じさせます。
まず、右脳と左脳がよく連携するため、女性は【同時並行 concurrent】して多くのことを考えることができるとされています。これは子育てをしながら他の事もするという行動に有利に働きます。その一方で、多様な考えが一度に脳に巡るため【不安 anxiety】を感じやすいということが指摘されています。【論理】的には不要な感情までもが思考に飛び込んできて不安を煽るのです。例えば、「豊洲市場の地下水には猛毒のヒ素が環境基準の4割も含まれている」と聞くと、「家族の健康は大丈夫であるか」とすぐに考えを巡らします。このとき、他者の好意に対してお返しをする【返報性の原理 reciprocity of liking 】により情報提供者に好感を持つことになります。実際には「猛毒のヒ素が環境基準の4割も含まれている」という表現は不安を煽る単なる【情報歪曲 distortion】に過ぎませんが、情報受信者が事情を知らない場合には心理操作の方法として有効であると言えます。ワイドショーが年がら年中不安を煽るような報道を繰り返すのも、そのメインターゲットである主婦層の心理を巧みにマーケティングしているためと考えられます。そのような意味で、豊洲市場問題で地下空間の所在を明らかにして不安を認識させてくれた小池都知事に女性が好感を示しているというのは合理的です。【論理】的には、汚染の多重バリアとなりうる地下空間が存在した方が安全であることなど関係ありません(笑)。ホルモンバランスが乱れやすいことも関係して不安を感じやすい女性は、【被暗示性 suggestibility】という暗示にかかりやすい存在であり、たとえ不安をもたらすだけの情報公開であってもありがたく受け取る傾向があるわけです。ここに小池都知事の「情報公開」というスローガンが高く支持されることになります。実際には築地市場の汚染隠しとか不都合なことは隠しているんですけれどね(笑)。いずれにしても、【被暗示性】が強いということは、小池都知事のように大衆の敵を作ってそれに対峙する【ポピュリズム】に無抵抗であると言え、恰好のターゲットにされている可能性があります。大衆は【ポピュリスト populist】を【善】の存在と認定し、支持します。
女性は、右脳と左脳が連携するため、女性は考えるための右脳と話すための左脳を同時に使って話をすると言われています。加えて、女性は言語を理解する大脳側頭葉ウエルニッケ野の神経細胞が多く、大脳前頭葉ブローカ野が機能を果たすため、言語能力 linguistic performanceが高いと考えられています。小池都知事は元キャスターでもあり、女性の中でも言語能力に特に長けていると考えられ、実際、話し言葉においても構文が明瞭です。これはスポークスマンとしては素晴らしいスキルであると言えます。ただし、残念なのは「築地はコンクリートに覆われているから大丈夫」発言など、政治家に必要な【論理】の構成がかなりハチャメチャなことです(笑)。さて、小池都知事の会見のスタイルは、結論に不必要なエピソードが含まれているなど冗長であり、結論を中々言いません。実は、これは典型的な女性の会話であると言えます。おそらく右脳と左脳が別動する男性にとっては、不必要なエピソードは鬱陶しく感じるものと推察しますが、女性は結果よりもプロセスを大切にすることが知られていて、結論を言わない会話にむしろ寛容です。【論理】的に考えれば「自明」な豊洲移転について、不必要なプロセスを重ね「総合的判断」を先送りするという小池都知事の運営は、時間コストの無駄遣いに他なりませんが、結果よりもプロセスを大事にする女性とっては、小池都知事の方法を【論理】的に【真】であると考え、好感を持っている可能性があります。なお、私は右脳と左脳が別行動しているのか(笑)、結論がない会話は最高に苦手です。私がここで指摘しているのはあくまで「傾向」であり、このような傾向がすべての女性に当てはまるわけではありません。
女性は、右脳と左脳が連携するため、【細かい観察能力 observation capability】にも長けていると考えられています。言葉以外にも表情や身振りなどのいわゆる【非言語コミュニケーション nonverbal communication】を見逃しません。これは体力的に男性に劣る女性が常に他者の行動を監視して、安全を確保してきたことに通じるものと考えられます。すなわち、女性は他者の挙動や場の空気を巧みに察知する能力に長けていると言えます。ここで、小池都知事の挙動に注目すると、小池都知事は、民進党の蓮舫代表や山尾志桜里議員のように、けっして感情に任せて声を荒げて血相を変えながら他者を直接的に罵ったりすることはしません。あくまでも感情を抑えて普段の声で微妙な喜怒哀楽を見せながら相手を比喩によって間接的に貶めるのです(笑)。おそらく観察能力に長けた女性の眼には、蓮舫代表や山尾志桜里議員の批判は下品に写り、小池都知事の批判は上品に写るものと思われます。やっていることは同じような人格攻撃なのですが(笑)、女性は小池都知事の方法を【美】と認識し、好感を持っている可能性があります。
社会学的性差
心理の社会的性差が生じるのは、次のような理論によって説明されています。[参照:ジェンダー・アイデンティティ尺度の作成]
・発達的同一視理論:同性の親を同一視して性差を認知する
・社会的学習理論:社会の慣習を観察して性差を認知する
・認知発達理論:成長とともに性差を認知する
・ジェンダー・スキーマ理論:男性/女性的なものをカテゴリー区分して性差を認知する
このようにして生じた社会的性差も政治の評価に対して大きな影響を持つと考えられます。
悠久の過去において、男性は動物性の食物を捕獲し、女性は植物性の食物を採るという役割分担があり、つい最近までの日本でも男性が外で働き、女性が家事をするという役割分担がありました。このとき、男性が大きな利益を得るチャンスを追及するのに対して、女性は小さな利益を得ることを追及していました。このような社会性が反映されたのか、女性は【ささやかな幸せ a little happiness】やちょっとした【お得感 reasonable】を大切にすると言われています。そんな中で、小池都知事が知事報酬を半減し、公用車の使用を制限し、公文書のコピー代を20円から10円に引き下げたという成果は、それだけではマクロな都の収支にまったく影響を及ぼしませんが、タックスペイヤーであることを意識する一部女性にとっては、ちょっとしたお得感をもつ内容であり、小池都知事の【対人魅力 interpersonal attraction】を上昇するには効果があったものと思われます。
社会的な観点から男性と女性の大きな違いの一つは、事実上、女性には身だしなみとして【化粧 makeup】が要請されることであると言えます。これは生殖のために【見た目 appearance】に拘ることが有利であるという人類長期間の経験によるものです。これによって、心理的にどのような効果が生まれるかと言えば、【美】に対して敏感になるということです。女性が意味もなく「かわいい」を連発するのは、実は自分が美を評価する感性があることをアピールしているのです。そんな中、いつもベーシックなファッションを身に着けて清潔感溢れる外見を呈する小池都知事は、多くの女性にとって【美】を感じる対象であると言えます。【美・醜】の観点から小池都知事を支持する人も多いのではと推察する次第です。ただし、仮にそうだとしたら、女性はそのことと政治とはまったく関係がないことに気付く必要があります。そもそも政治において容姿をアピールすることは【情報歪曲】であると考えます。例えば、小沢一郎議員は新進党時代途中からずっと眉毛を書いてますが、これは新進党時代の小池百合子議員の指南によるものです。細川護煕首相にプロンプターを指南したのも小池百合子議員です。もちろん、演説や記者会見などで原稿を読み上げて政治的見解を正確に伝えることは非常に重要なことであると考えますが、それを【対人魅力】のアップのために使うのは本末転倒です。私が言いたいのは、政治家の風貌を改善して人気を得るメソッドは有害であるということです。
おわりに
私は、小池都知事は他の政治家が掲げない【美】の政策を作るという点で優秀な政治家であると思っています。「クールビズ」はもとより、「地中線化」「満員電車解消」等の政策は経済的なフィージビリティを伴えば、【論理】にかなって【美学】にもかなう可能性があると考えます。特に「活力とゆとりのある高度成熟都市」などの構想にあたっては小池都知事のカラーが出ていると思います。しかしながら、現在行っているのは、積み上げてきた行政をひっくり返すことを厭わない【ポピュリズム】であり、「政局ファースト」の都政運営はけっして「都民ファースト」ではないと考えます。行政のルーティンワークの延長は、非論理的な【側近 kitchen cabinet】に委任するのではなく、論理的な【専門家 expert】集団に委任して、本当の意味での開示された都政を行っていただきたく存じます。
編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2017年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。