こんにちは。香川健介です。
本日は、おすすめの本について記事を書いてみようと思います。
本日紹介するのは、次の本です。
結論から言うと、本書は経済・財政・金融などの政策担当者をはじめとして、世に広く読まれるべき本だと思います。
「日本の場合、経済成長と財政再建はトレードオフであり、両立は不可能である」と考える人が多い中、著者の田代氏は債務問題に関する深い洞察を武器に、この2つを両立できる道を探っていきます。
著者は、重要なのは成長と債務の両面に目配りをすることであり、成長と債務への対処の両立に可能な方策はすべて検討すべきだと主張します。
それはよく言われる経済成長や財政調整だけでなく、金融抑圧、資産課税、民営化などの政府資産売却、デフォルトや債務再編、インフレなど、普段あまり議論されない選択肢があることを提示します。
その上で、これらをどう組み合わせると最善の効果が出るのか、論理とファクトを元に丁寧に考察します。
ひとつの手段に拘る論者が多い中、このような著者の考え方は、とても建設的かつフェアなものだと私は感じました。
また、財政の拡張や引き締めの基準・スタンスが、現状だと場当たり的で整合性に欠けるので、政府は安定した需要管理を中長期的に行っていくべきだという指摘も慧眼であり、もっと世に広く知られるべきポイントだと思います。
需要管理が不安定だと、経済成長と財政再建の両方に大きな悪影響があることも、本書を読めばよく理解できます。
(なお、第6章の最後などに書かれている財政余地の使い道は、本書では具体的にはあまり明示されていませんでしたが、個人的には子育て支援・少子化対策に最優先で回すのが、費用対効果など総合的に考えてベストなのではと思います。)
加えて、議論の間にはさまれる小話も面白いです。たとえば、
・まだギリシャ債務危機の最中だった2011年、「債務危機がどう人々の生活に影響するのか見てみたい」と考えた著者が、ギリシャを実際に訪れたときの話
・著者がピケティと日本の公的債務問題について議論したとき、ピケティが言ったコメント
などの興味深い話を、少し堅めの話の間にさらっと入れたりしています。
積み上がった政府債務の深刻さを軽視せず、かといって過度に楽観視もせず、広い視野から解決に向かい考察を深めていく本書の内容は、政治的にも実現性があるように感じます。
なんとなくですが、政府は今後、本書に書いてある内容を採用し、日本の経済財政政策に反映していく気がします。
政策担当者の人や、債務問題を深く理解したい人はもちろんのこと、日本の経済財政政策の行方を考えたい人などにも広く読まれるべきすばらしい本だと思い、書評を書きました。
貴重なお時間を割いて本記事を読んでいただき、どうもありがとうございました。
(本記事は、私がAmazonに書いたレビューをもとに作りました。)
あと、私も、先日本を出版しました。
タイトルは若干アレですが、財政・経済・社会保障について、割と真面目にわかりやすく書くことができたと思います。
これらの分野についてあまり詳しくない人には、お役にたてると思いますので、よかったら読んでみてください。