小池知事の「市場の方向性」記者会見への反論

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

突然の方向性発表

昨日の記者会見で、小池知事は、豊洲市場への移転ばかりか、築地市場を「食のテーマパーク」として商業利用する案を採用する方針を表明されました。結論は、築地残留か、豊洲移転かのみで、豊洲市場問題に第三の道は無いと知事は明言していたにも関わらず、これに反する道を選ばれた事になります。この選択は、選びうる選択肢のなかで、最も中途半端で最悪の選択をしたと言わざるを得ません。都知事としての責任を果たせていないと感じます。

以下に私の項目毎の考えを記しておきます。

①開場に向けて知事がなすべきこと

いわゆるロードマップでは、総合的判断の後、移転時期を本年冬から来年春を目標に定めています。しかし、時間稼ぎの「市場のあり方戦略本部」の設置や、市場問題プロジェクトチームの小島座長が、本年3月末に築地市場改修・再整備の私案を公表することを許したのもある意味においては知事であります。4月8日に築地市場で唐突に私案を披歴して以来、市場関係者に混乱と分断が広がっているのは言うまでもありません。既に知事自身がロードマップから外れて迷走していたのが現状なのです。

小島座長は、築地再整備の成否は市場関係者のやる気にかかっているかのような発言をされ、市場関係者を惑わし責任を転嫁して、修復しがたい深い亀裂を生じさせました。この間、市場関係者は、風評被害により長年の顧客も離れ、営業や商売上も、艱難辛苦の連続であったと語っています。

一体誰がこの混乱を収拾し、豊洲移転に向けて誰が市場関係者と合意をとり結んでいくのか。中央卸売市場の開設者として、知事が現場に赴き、最初にすべきは、豊洲市場の「安全宣言」であり、豊洲市場を含む豊洲埠頭における風評被害の払拭のはずです。これが無ければ、市場関係者は、もはや豊洲市場には行けない。それほど、深い傷を負っていると私は認識しています。

知事が先頭に立って市場関係者を説得し、その理解と納得を得るのは当然です。知事の覚悟を明らかにして頂きたかったと考えます。

②都民の食生活と卸売市場の重要性

築地市場を結節点とする全国の物流網は、豊洲市場で活かせるとしても、無人の配送センターもどきの物流拠点に成り下がれば、四季折々の新鮮な食材を選び抜き、旬を見極めながら、血の通った評価を的確に下していく仲卸の磨き抜かれた目利きは廃れていくのは自明です。そうなれば、風味、食味、色艶、香りなど五感を総動員して、自然の豊かな恵みを享受していくことは次第に困難となり、日本の古き良き食文化の伝統を紡いでいくことは不可能となることは必定です。築地市場の豊洲への完全移転は必須なのです。

また、食のテーマパークでは、事業者が厳しい世界を生き抜く術としての目利きではなくなり、観光資源としての見せかけの「目利き」だけが残り、磨き抜かれた技として後世に継承される機会は失われます。ひいては、世界文化遺産に登録された和食文化も揺らぎかねません。伝統と文化をもの珍しさとして切り売りし、消耗するような愚行を世界都市東京でなぜ強行しようとしているのか。今回の案についての哲学の理解に苦しみます。

③思想なき「市場」運営はやめるべき

知事は、市場の事業継続性が問題だと、ことある度に問題を指摘してきたにも関わらず、財源の見通しも明確にしないまま、築地も豊洲も両方使うという了見はいったいどういうことなのでしょうか。

豊洲市場の整備費に、築地市場跡地の売却収入を充てることもできず、また、築地市場の再整備費に豊洲市場用地の売却収入を充てることもできないわけです。一体、どこから両市場の整備費用を捻出するつもりなのでしょうか。市場の財政運営を微塵も考慮しておらず、定期借地による収入をまたず、返済時期には資金不足に陥る危険性があります。

両市場の整備費を都民の税金で賄うつもりなら、余りに知恵の無い天下の愚策であると言われるかねません。このような愚策を臆面もなく、市場関係者、国、都議会などの関係者と何らの調整もないまま決定事項として伝えられることに、怒りを感じるどころか、行政運営の資質と能力には戦慄すら覚えるわけです。

④無害化と築地の土壌汚染について

今月1日に、都議会本会議において、小池知事は、2010年当初予算案の議決に附した付帯決議では、開場時の無害化を求めていましたが、これをどう乗り越えたのか、都議会に対する説明がありません。

我々は情緒的な印象操作には、冷静な事実に基づく議論を求めて、やむを得ず営業中の築地市場の土壌調査を取り上げてきました。その築地市場の土壌調査において、地表からわずか50cmの部分にヒ素・水銀・鉛など基準値を超える有害物質の存在が明らかになり、深刻な汚染が広がっている可能性を専門家から示唆されております。築地市場用地は、食のテーマパークとして、食品を扱う場所として真にふさわしい土地といえるのか。早急に詳細調査を実施し、都民に実態を公表すべきです。

豊洲に厳しく、築地に甘い、知事ブレーン団のダブルスタンダードとは決別しなければなりません。知事の個人的感情と思惑で、豊洲も築地も両方とも良いのだということならば、これまでの議論は一体何だったのか。ご都合主義にではないのでしょうか。

⑤知事としての責任ある行動を起こすべき

豊洲の風評被害は、知事自身の優柔不断の言動が、ネガティブなイメージとして全国に喧伝されたことで広がったと私は思っています。だからこそ、知事は、豊洲市場の安全宣言を現地で発し、豊洲埠頭地区の風評被害対策に全力を傾けることを明らかにすべきです。そのことが、小池知事のこの問題での責任の取り方であり、リーダーシップのあるべき姿と思います。そして、失われた時間を取り戻し、納得できる開場の条件を整えるため、市場関係者と直に向き合い、今度こそ、真摯に話し合っていくべきです。そうでなければ、都民の理解と納得は到底得られないものと考えます。

改めて、申し上げますが、私自身は豊洲移転を目的にしてきた訳ではありません。日本の卸売市場の新たな歴史をスタートさせるべく、築地の伝統を継承・発展させた新たな豊洲ブランドの確立に全力を注ぐことを強く求めます。

豊洲市場のこの先10年20年と繋がる夢と希望あふれる素晴らしい市場としてじっくりくと使いこなしていく市場なのです。

↓生田よしかつさんとの対談

↓豊洲市場の内部リポート


編集部より:このブログは東京都議会議員、川松真一朗氏(自民党、墨田区選出)の公式ブログ 2017年6月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、川松真一朗の「日に日に新たに!!」をご覧ください。