オーベルジュとは、宿泊施設を備えたレストランです。フランスにある多くの有名フレンチレストランは、パリだけではなく全国にオーベルジュとして点在しており、世界中から予約して訪れる顧客は、わざわざ何時間もかけてお店までやってきて、ゆっくりと食事を楽しみ、宿泊して旅をするのです。
日本にも東京近郊の箱根や伊豆には多くのオーベルジュがありますが、個人事業のような小規模経営が多く、地方に行くとミシュランの星付きといった有名店は、ほとんど見かけません。
唯一の例外ともいえるのが、「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」です。ホテルというカテゴリーですが、宿泊客の多くはレストランでの食事が目的のオーベルジュ利用です。
施設内にあるレストラン、ミシェル・ブラスについては、本日の資産デザイン研究所メールの「グルメ設計塾」で紹介予定ですが、圧倒的という一言に集約されます(写真は100種類の野菜を使ったサラダ)。
ウィンザーホテルが開業したのはバブルが崩壊を始めていた1993年です。1997年に破たんした北海道拓殖銀行(拓銀)から650億円の融資を受けて、建設会社カブトデコムの関連会社エイペックスが開業。拓銀の破たんで、2000年にセコム子会社が60億円で土地建物を取得。200億円をかけて改装し、復活しました。その後洞爺湖サミットの会場にも使われ、北海道を代表するホテルになっています。現在は、明治海運という会社が所有者になっているようです。
このホテルの歴史を調べてみると、一人の人物が浮かんできます。ホテルマンの代名詞と言われ、テレビドラマのモデルにもなったと言われる窪山哲雄氏です。帝国ホテルで仕事をし、コーネル大学のホテル経営学科を卒業して、NYのウォルドルフアストリアホテルにもいたというホテルを知り尽くした人物。
彼が、2002年にウィンザーホテルの中核としてフランスのミシュランガイド3つ星獲得レストラン「ミシェル・ブラス」(Michel Bras)世界初の支店「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」を招聘し、イタリア料理全盛だった当時、北海道発信の新たなフランス料理ブームを呼び起こし、経営を安定させることに成功しました。
ウィンザーホテルのある洞爺湖は観光地ではありますが、札幌から電車で2時間近くかかる、レストランの立地としてはフランス郊外のオーベルジュ並みの不便な場所です。そこに日本だけではなく、世界から食事を楽しむために予約をして人がやってくる。日本のオーベルジュとしては、稀有な存在です。
壮大なスケールで、このホテル&レストラン事業を成功させられたのは、窪山氏の経験とビジョンがベースになり、それを実現していくだけの、熱意と戦略があったからだと思います。
ミシェル・ブラス トーヤ ジャポンでのディナーには、東京との「時差」を感じませんでした。世界レベルの付加価値を提供し続けるマネジメントの能力は、流石というしかありません。ウィンザーホテルのような観光施設が日本各地に増えてくれば、インバウンド消費も高付加価値化が進み、さらに幅広い外国人観光客を東京や京都だけではなく、全国に呼ぶことができるようになると思います。
(パンには名前が入っていました)
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