原油価格が暴落を始めた2014年のクリスマス直後、某テレビ局から「OPEC対シェールという構図で特集番組を作りたいのですが」との相談を受けた。OPECが産油国政府の団体組織であるのに対し、シェールオイルを生産しているのは経済原則で動く私企業群だから、「テレビ的にはわかりやすいでしょうが、ミスリーディングだと思う」と反対した記憶がある。
OPECの場合は意思決定の主体は産油国政府だが、シェールといった場合は「誰」と特定できない。あえて言えば「市場」ということになる。どう考えても「対立軸」として並列させることには無理がある。だが、世の中は「OPEC対シェール」という構図に慣れてきたようだ。
今朝ブルムバーグが “Deeper OPEC cuts would help shale, former Qatar minister warns” (updated July 14, 2017 8:01 by Wael Mahadi & Angellina Rascouet) という記事を掲載しているのもその一つだ。
この記事の要点は、サブタイトルとしている次の二点で理解できる。
―OPECは販売シェアーを失うリスクがある、とアル・アッティヤはいう
―OPECの減産遵守率は100%ではないが「非常に良い」
当該記事は、弊ブログでも紹介したサウジアラムコのCEOアミン・ナサールやシェルのベン・バン・バーデンがスピーチを行ったイスタンブールでの会合で、カタールのアッティヤ前石油相がブルムバーグの インタビューに応えて語ったものだ。
アッティヤ前大臣はつぎのように語ったそうだ。
「減産を拡大することはOPECのためにはならない。なぜなら価格が上昇し、シェール生産業者などがOPECのシェアーを奪う事になるからだ」
「問題は、暗闇で誰かがOPECを待ち伏せしていることだ。それはシェール生産業者で、価格が上がればいつでも増産する」
「これは新しい状況だ。かつて石油の競争相手は石炭や再生可能エネルギーだった。今では、在来型と非在来型との激しい戦いが行われている」
なるほどね。
結局は「市場」に任せ、需要が供給に追いついてくるまで何もしないことがOPECのためになることなのかな。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年7月14日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。