「オススメ」を頼むべきか?

以前、飯島勲氏の著書を読んでいたら「店のオススメは決して頼んではいけない。店側としては儲かるものをオススメにしているので、損をするだけだ」という趣旨のことが書かれていました(細かな違いはご容赦を)。塚崎公義氏の「経済暴論」にも、「お勧めはどれですかと聞いてはいけない」という項目があり、店側にとって利益率の高い商品を勧められる場合が多いと書かれています。

しかし、私の行動規範では、飲食店や居酒屋で「オススメ」があると、多くの場合それを注文します。

飯島・塚崎説と荘司説、はたしてどちらが正しいのでしょうか(笑)

ゲーム理論で、隣接する2つのガソリンスタンドの例がよく挙げられます。互いに客を奪い合うための値引き競争をしていると、双方ともに利益がでなくなってしまいます(場合によっては赤字になって潰れてしまうかもしれません)。

そこで、2つの店は相互に同じ金額(例えば120円)を掲示することにします(決して相談するのではなく「協調戦略」を双方が採用するのです)。すると、同じ条件であれば、客は半々になって大儲けはできないものの潰れる心配はなくなります。

もし、一方の店が裏切って110円にして全ての客を奪うようなことをすれば、他方は105円にして「しっぺ返し」をします。裏切った店が反省して「協調行動」に戻れば、「しっぺ返し」をした店も「協調行動」に戻るというものです。

この例のように、ライバル関係が無限に続くと思える状況であれば、「しっぺ返し戦略」が最強の戦略だとゲーム理論は結論付けています。

飲食店の店主としては、利幅の高い「オススメ」で一度は客から暴利を得ることができても、私のような客は二度とその店に行かずに別の店に行くでしょうからリピーターを獲得し損ねます。だから、リピーターとして利用できる店かどうかを確認する意味合いで、私は敢えて「オススメ」を頼むようにしているのです。

しかし、滅多に行かない観光地のような所にある店は「協調行動」をとってリピーターを増やす必要はありません。となれば、思いっきり利幅の高い商品を「オススメ」にする可能性が高いでしょう。私は、三重県の伊勢市出身ですが、伊勢志摩の観光地で飲食することは滅多にありません。私の友人や私のような観光地の地元民は、地元民をリピーターにして「協調行動」をとってくれる店に足を運んでいたのです。

東京の繁華街には、「一見客狙い」の店とリピーター狙いの店があるので当たりハズレもありますが、グルメサイトの普及によって「一見客狙い」はずいぶん駆逐されたのではないでしょうか?

もっとも、資金繰りに行き詰まって早晩店をたたむ予定の飲食店の場合はリピーターを獲得する必要はありません。回数有限ゲームよろしく、すべて「敵対行動」をとります。嫌われてもかまわないので、利幅の大きい商品でボロ儲けをしようとするでしょう。

あなたにはご経験がありませんか?
「こんな店、二度とくるもんか」と怒っていたところ、ある日気がついたら店がなくなっていたという経験。

実は私は何度か経験しています。最後の餌食にされた苦い経験が…(汗)ということで、「オススメ」を頼むのも決して正解ではないのでご注意を…自爆覚悟の相手ほど怖いものはありません。

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。