民進党がなぜ自民党候補を応援…戦略のない自殺行為

横浜市長選に見る民進党の「野党共闘候補」と、なぜか自民党候補に「民進党の応援」

いよいよ7月30日、横浜市長選挙の投票日となる。
自民党・公明党推薦の現職である林文子市長に2候補が挑む。
民進党は過去2回の横浜市長選では林文子市長を推薦してきたが、カジノを中心とする統合型リゾートの推進に反発する旧維新の党系のグループが民進党市議の伊藤大貴氏を擁立し、自主投票となった。

今回の横浜市長選の場合、さらに元民主党衆議院議員の長島一由氏も含め、民進党系3分裂選挙となっている。

こうした中、選挙戦終盤の27日に民進党国民運動局長でもある山尾志桜里 衆議院議員が現職の林文子市長の応援に入った事がネット上で話題になっている。

今回の横浜市長選挙においては、上記のように民進党は「自主投票」としており、民進党議員がどの候補者を応援するかは自由であり、個々の議員側から見れば、反党行為でも造反行為でもなく、単に「最も横浜市長にふさわしいと思う人をそれぞれが応援する」という事に過ぎない。

「国会議員政党」と言われる事の多い民進党だが、「地域事情」という説明で、現職の首長に連合と共に乗る構造はよくあるケースであり、その組み合わせもまさに地域によって異なる。

9月に行われる同じ政令指定都市の市長選である堺市長選挙では、現職に自民党に加え民進党が推薦をし、維新の会が対抗馬を出すという構図になりそうだ。

個人的には、「国会議員ありき」の民主党時代からのやり方に疑問を持っていた部分もあり、その意味では地方議員や地元党員の声を反映するという事の重要性はよく分かる。

「ただ」だ。

地域地域で「民進党候補」の位置付けをして首長選挙で勝てるほどの甘い状況ではない事はいうまでもないが、こうした民進党の対応を見て有権者が「何がしたい政党なのか分からない」と思うのは間違いないだろう。

市川市でも民主党が応援した市長候補2人が自民党に

私の住む市川市でも今年11月に市長選挙が行われる。
思い出すのが今回の横浜市長選同様に「3分裂選挙」と言われた8年前の市川市長選である。

民進党だけでなく、自民党も3分裂した選挙は、得票数も3.9万票、3.5万票、3.5万票と3分裂した。

3万5千人もの有権者に「高橋亮平」と書いてもらいながら結果が出せなかった事は、今でも本当に不甲斐ないとの思いでいっぱいだ。あれ以来、自治体部長職としての経験や、自公も巻き込んだ「18歳選挙権の実現」、中央大学での特任准教授としての経験など自らの研鑽を重ねてきたが、いつの日か故郷である市川市にこの経験が還元できればと思っている。

今回ご紹介したいのはそんな話ではなく、その際に民主党千葉5区で当時現職だった村越祐民 元衆議院議員の支援を受けて当選したのが、現職の市川市長の大久保博氏だが、結局この現職市長は当選すると自民党にシフトし、国政選挙でも自民党を応援する有様。

ちなみにこの現職市長の現在の後援会長は全日警の会長が務め、この会長は、自民党が支援する県知事や同じ千葉5区選出の自民党の薗浦健太郎 衆議院議員の後援会長も務めるという笑い話のような事になっている。

民進党にとっては、まさに「オウンゴール」である。
当時、民主党県議会議員であり、もう1人の候補者であった小泉文人 市議会議員も現在、自民党公認になっている。自民党県連会長の桜田義孝 衆議院議員の甥っ子であり、そもそも何で民主党にいたんだという気もするが、先述の民進党総支部長の村越氏の昭和学院時代の同級生という事で、当時、「民主党なら議員になれる」と市川市議選に出馬。市川市議選では落選するものの民主党の絶頂期に自民党が候補者を出さない県議補欠選挙に村越氏がねじ込み当選していた。小泉氏については先日のコラム『中1女子へのわいせつで市川市議逮捕、政務活動費での切手大量購入換金疑惑など不祥事が続く市川市議会…』も参照いただきたい。

こうした「地域事情」という説明で行われる民進党の首長選挙は、実際には国政選挙における民進党にとって逆効果になっているという事が、非常に多い。
その場その場の場当たり的な対応や、各総支部長や地方議員たちのその後の自分の選挙の都合や場合によっては個人の人間関係における「好き嫌い」で判断する事は止め、政党として目指すべき姿を明確にすると共に、中長期のスパンを持った戦略的な対応が必要なのではないだろうか。

仲間や優秀な同志を大切にしない政党に未来はない

先週末7月23日に行われ「民進候補勝利」と言われた仙台市長選挙。
民進党県連・社民党県連支持、共産党県委員会・自由党支援の民進党前衆議院議員の郡和子氏が勝利した、自民党にとっては都議選に続く「悪夢」として衝撃を与えた選挙だった。

ただ一方で気になっているのが、同時にこの選挙で39歳の林宙紀 前民進党衆議院議員も出馬し、民進党分裂選挙になってしまった事だ。

勿論、各地域地域において「地域事情」があるのだろう。
むしろ民進系一本化に乗らなかったのは林氏ではないかとも思う。
しかしだ。
ただでさえ仲間の数が減っている民進党の中で、「同志を無駄に減らしている場合か」と思ってならない。

昨日、『蓮舫代表辞任の民進党は「解党→都民ファ合流」ではない「次世代の政権選択政党」の絵を描き直せ』を書いたばかりだが、この国において「政権選択政党」をもう一度創るという事を考えた際には、民進党には、もう一度しっかりと考えてもらわなければならない事がいくつもあるように思う。

民進党に所属している者でもなければ、党員でもなく、現在は、自民党、公明党、都民ファースト、民進党、維新の会、共産党、無所属まで、幅広くこの国の将来を憂いどうすればそれを解決する事ができるかと考えている同志や友人、お世話になっている方々がいる。

こうした人材は決して、「ある政党にだけいる」ということもなく、イデオロギーによって「優秀な議員がいない」という事もない。

既に国民の多くには「過去の政党」として信頼を失ってしまっている民進党だが、党内には、他党と比較しても優秀な人材が数多くいる。
国会での活動データから、以前『議員活動データで見る「民進党」の意外な実力 国民の”選択肢”となれるか?』とコラムを書いた事もある。

民進党にとって残された道は、この残った「人材をどう活かせるか」なのではないだろうか。

振り返れば、民主党の中で、「この国をよりよくするための政党」へと様々な活動や働きかけ、提言を行っていたような優秀な人材、積極的に活動する人材がどんどんと党から出ていってしまった。

党の対応に幻滅し出ていった者、党の内部政治の中で切られていった者…
1年前の民進党代表選の際、『蓮舫・前原・玉木3候補が出揃った。民進党は2020の政権政党創造を目指せ!』なども書かせてもらったが、1996年から1998年の旧民主党時代、1998年から2016年の民主党時代には、既に袂を分かってしまった「一度は民主党に関わった人材」をもう一度集める事を考えて行くべきではないだろうか。

横浜で矢面に出て人生をかけて戦う優秀な39歳のはしごを外さず全力で支援しろ

冒頭で触れたように、いよいよ明日7月30日、横浜市長選挙は投開票となる。
この戦いに民進党の同志である市議会議員が人生をかけて挑戦をしている。
筆者は、超党派400人の地方議員の会である全国若手市議会議員の会で会長を務めるなど、これまでに党派を超えて1,000人近くの若手地方議員たちを見てきた。

こうした経験からしても、横浜で市長選に挑戦している伊藤大貴候補は非常に優秀な同年代の議員でもある。

蓮舫代表の急な辞任によって民進党はこの後代表選挙が予定される。
しかし党再生のためには、代表の顔が変わればいいということではない。
党の同志をどう守って行くかは、今後の党にとって重要なポイントではないだろうか。
優秀な39歳のはしごを外す事などは絶対になくし、全力で支援してもらいたい。

横浜市民の皆さんには、若き政治家への支援をお願いすると共に、横浜市街の方々からも全国から横浜市内の友人、知人へと、未来を創る追い風を吹かせる事をお願いしたい。
もう、若き優秀な政治家たちが、老練な政治屋たちに人生を振り回されるような時代は終わらせてもらいたいと思う。


高橋亮平(たかはし・りょうへい)
一般社団法人政治教育センター代表理事、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て現職

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