高校野球しかしてこなかった人材はビジネスで活躍できるか?

松本 孝行

8月7日の月曜日から、今年も夏の甲子園大会がはじまります。毎年毎年ネット上では「真夏に野球をさせるのは危険」「残酷ショーだ」「秋にやるかドームでやれ」といった批判が上がります。それでもテレビの力と言うのは強いもので、感動を与えてくれるものとして放送され、ファンもたくさん存在しています。先日はアメトーーク!で「高校野球大好き芸人」なんてやってましたね。

大阪でも大阪桐蔭が地区大会に優勝し、甲子園出場を決めたそうです。おめでとうございます。高校時代は輝かしい青春として語られるかと思いますが、人生は長いものでそこから60年ほど続いていきます。彼らのその後の人生、特にビジネスシーンでは活躍が可能なのでしょうか?

寮生活、週7日野球漬けの大阪桐蔭

大阪桐蔭が優勝したという記事には、野球部の厳しいルールが紹介されていました。

  • 3年間寮生活
  • 携帯電話所持禁止
  • 練習は週7日
  • 親と会えるのは2ヶ月に1回、制限時間2時間
  • 外出禁止、外出できるのは1ヶ月に1度のコンビニやショッピングモール

これだけ見てもなかなか厳しいなぁと思いますし、そもそもこういう学校に親もよく入れるなと個人的には思います。それだけ野球や大阪桐蔭に思い入れがある人が多いのでしょうか。

このような学校があることは特に否定はしません。戸塚ヨットスクールだってありますし、子供自身がどの学校に行くかを決める権利があるわけですし、親も助言・判断の手助けができるのですから。嫌なら入らなければいいだけです。

高校時代にまったく勉強せずにビジネスで活躍できるか?

個人的に気になるのは高校時代に野球ばかりをして、まったく勉強をしないことです。こういった高校を選ぶのですから、おそらく中学もさほど勉強していない人も多いかと思われます。小・中、そして高校といえば学力の基礎と応用を学ぶ時期です。しかも10代の吸収力のある脳を活用できる貴重な時期です。その頃にまったく勉強していないという人が、一体ビジネスで活躍できるのでしょうか?

一点注意すべき点として、就職については簡単だと思います。甲子園出場ならさらに簡単に就職できるでしょう。高校野球3年間、まるで軍隊のような規律ある生活をしてきたというのですから、不動産の営業職などにはピッタリです。また体力もありますから、夜勤のある仕事もいいでしょう。介護現場などは引く手あまたではないかと思います。

しかしここで問題にしたいのは就職というビジネス社会の入り口に入れるかどうかではありません。ビジネス社会に入った後、生産性の高い職(=給料の高い職)につけるか?という点です。経済学者の野口悠紀雄さんは下記のようにおっしゃっています。

つまり昔は高生産性だった製造業から今は低生産性のサービス業に労働力が移動しており、これが原因で賃金が下がっているというのです。であれば製造業の求人を増やせばいいわけですが、現在日本の製造業は世界でも苦戦を強いられています。サムスンやファーウェイをはじめとした競争に勝ち続けている企業は生産性の高い人材を高い給与で引き抜いて行きます。

製造業だけでなく、高付加価値な業界であれば金融関係やITといった業界も生産性が高い業界です。アップル・Google・マイクロソフト・Facebook・AmazonとIT企業が時価総額の上位を占めています。またイギリスは金融に力を入れて、英国病から立ち直ったと言われています。

金融系やIT系、グローバルな製造業など生産性の高い業界は存在します。しかしそこに参入していくにはそれなりの技術・知識・訓練が必要になります。高校時代の3年間に野球だけしかして来ていない人材を高生産性の(=高い給与を払う)企業が欲しがるでしょうか?

せめて高校では普通に授業を受けてほしい

繰り返しますが大阪桐蔭の野球部が悪いというわけではありません。そういう人生も間違いではありません。ただ、週7日野球漬けの毎日を送ることは、子どもたちの将来の選択肢を狭めている可能性があるのではないか?ということです

高校野球を頑張るのは素晴らしいことです。しかし子どもたちの将来のことを考えたら、せめて高校の勉強は普通にしたほうがよいのではないか?と思うのですがいかがでしょうか。子どもたちの教育として、私は文武両道を少しでも目指してほしいと思うのです。