民進党の皆さんが世間の注目を浴びるには離党を口にする外ない、という厳しい状況を踏まえての捨て身の記者会見だったと言うべきだろう。
なんでこの時期に、と疑問を述べられる方がおられるだろうが、世間の関心が内閣改造に集中し、民進党の代表選挙のことなど殆ど話題にも上らない、という今だからこその決断だったのだと思う。
村田蓮舫代表と野田幹事長が共に辞任を表明した段階ですでに民進党の支持率は一桁台に低落していたのだから、今回の細野氏の離党意向表明でさらに支持率が下がっても、大したことはないと言えば大したことはない。
支持率が一桁台にまで落ちて、なおこれを回復できたのは、自民党の森内閣から小泉内閣への転換時ぐらいなもので、普通の場合は時を経るごとに支持率は下がって行くものである。
森さんの時代の自民党は気息奄々で、絶対に目前に迫った参議院選挙で自民党が勝利できる展望はなかった。
派閥の論理だけで考えたら、自民党で圧倒的な地位を占めていた経世会の橋本龍太郎元総理が総裁選挙に勝利し、総理大臣に再任されたはずだが、開かれた総裁選挙を実現するという、当時の古賀幹事長の大英断で、小泉純一郎という稀代の天才を世に送り出すことに成功し、あれよあれよという間に世の中の空気を変えてしまった。
一桁台で低迷した支持率を反転上昇させる秘策などないというのが常識だが、時にはこういう奇跡的なことが起きることがある。
しかし、今の民進党にはそういう奇跡を起こすような可能性はどこにもないから、細野氏がこの段階で記者会見を開いて離党の意向を表明することには何の問題もない。
むしろ、細野氏は自分の離党自体を一つのドラマに仕立てようとしてこの段階での記者会見に踏み切ったのだろうと思う。
少なくとも、枝野氏や前原氏よりも世間の関心を呼ぶはずであり、上手に立ち回ると集団離党に向けての動きを作り上げることが出来る。
長島氏の場合は単独での離党だったが、単独で動いていたのではなかなか新しいうねりを呼び起こすことは出来ない。
離党に向けたプロセスを丁寧に踏んでいくことで、上手くすると一人、二人と同志を獲得出来る。
細野氏には小池さんほどの広報戦略はなさそうだが、どこでどう動けばマスコミが飛び付いてくるか、マスコミが飛び付いてくれば世間がどう反応するかなどのことが本能的に分かっているのだと思う。
世間の反応次第では自分と行動する人が増えるだろう、と予測していれば、あらゆる機会を利用して自分の動きをアピールするはずである。
小池さんほどの華やかさはないが、新たな政治の潮流を作り出そうというその意図は買ってあげてもいいのかも知れない。
まあ、民進党の支援者の方々や細野氏と共に歩むことに拒否感を持っておられる方々からは相当激しいバッシングが起きるだろうが、何かを生み出す時は何かを壊さなければならないこともあるのが世間の常だから、離党の方向に舵を切ったのなら上手にこの先の荒波も乗り越えることである。
本当に政権交代可能な政党を作るというのであれば、それなりの覚悟が必要になる。
若狭さんと手を結ぶのがいい。
私が言えるのは、そこまでだ。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年8月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。