オーストリア日刊紙プレッセ(12日付)に興味深いコラムが掲載されていた。「呪われた8月、攻撃の月がまた1カ月間」という見出しのアンネリーゼ・ローラー記者の記事だ。
それによると近代史で「8月」になぜか歴史的な戦争や出来事が集中的に勃発しているというのだ。その背景には、米国と北朝鮮の間でひょっとしたら核戦争が勃発するのではないかといった占星学的な予感がある。実際、ガブリエル独外相は最近、2017年8月の世界の政情を1914年8月の第1次世界大戦勃発前の状況と酷似していると指摘、「8月」という月の占星術的な意味を示唆したばかりだ。
同記者が挙げた「呪われた8月」の例を羅列する。
①1914年8月、第1次世界大戦勃発
②1939年8月、第2次世界大戦の契機となったヒトラー・スターリン協定(独ソ不可侵条約)
③1945年8月、米軍、広島と長崎に原爆を投下
④1961年8月、「ベルリンの壁」建設開始
⑤1968年8月、ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻
⑥1974年8月、米ニクソン大統領、辞任
⑦1990年8月、イラクのクウェート侵攻
⑧1991年8月、ゴルバチョフ大統領へのクーデター未遂事件、ソ連解体
そして21世紀に入り、2017年8月が米朝間の核戦争勃発の月となるのではないか、といった予感が生まれてくるわけだ。
歴史学者ならば別の出来事を羅列し、別の「月」に世界史的な出来事が集中しているといった説を構築できるだろう。その意味で、同記者が挙げた実例はたまたま「8月」に起きたのであり、それ以上でもそれ以下でもないのかもしれない。しかし、そういってしまえば何も面白くなくなるので、当方を含むジャーナリストはやはり「8月」の占星術的な意味を考えてしまうのだ。
当方が思い出す「呪われた8月」としては、エルヴィス・プレスリーの死(1977年8月16日)、ダイアナ妃の事故死(1997年8月31日)、そして日本航空123便墜落事故(1985年8月12日)などが挙げられる。
基本的に、8月は暑い月だ。特に、今年は猛暑の8月だ。暑すぎて外に出かけるのも嫌になる。だから、歴史的な出来事が8月に集中したのは単なる偶然ではなく、人の考える力が暑さで消耗し、理性的な言動活動ができなくなる結果、いがみ合い、紛争、犯罪、ひいては戦争が勃発するのではないか、といった解釈も出てくる。
現実の「8月」に戻って考える。米朝間で核戦争が勃発するだろうか。メディアはその危機を煽っている面もあるが、決して根拠のない予感ではない。戦争はいつでも起きるからだ。
世界の人々が米朝間の核戦争を恐れる最大の理由は、核戦争のカギを握っている指導者が尋常ではないからだ。トランプ大統領は就任後、多くの時間をゴルフ場で費やし、その言動は移り変わりやすい。北朝鮮がグアム攻撃を威嚇した時、同大統領はゴルフ場から警告を発した。一方、金正恩労働党委員長は130キロの体重を持て余し、「核とミサイル」に政権の生存の夢を追う独裁者だ。この2人の指導者が2017年の「呪われた8月」危機の主役を演じているのだ。この事実に世界は大きな不安と恐れを感じているのだ。
ローラー記者は最後に、「占星術的観点からみて、8月はひょっとしたら人間を攻撃的にするのかもしれないが、核戦争はお断りだ」と述べている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年8月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。