大人になれない大学生

山田 肇

ベネッセが『第3回大学生の学習・生活実態調査』を発表した。それによると、グループワーク・プレゼンテーション・ディスカッションなどを取り入れた、いわゆるアクティブ・ラーニング型の授業が増加したそうだ。大学側も大教室での一方的講義よりアクティブ・ラーニングを増やそうという方針を取っているので、それが調査結果に反映されている。アクティブ・ラーニングで自分の意見を言う、他者に配慮する学生が増加した。「異なる意見や立場に配慮する」と67.4%が回答し、2008年調査から13.9ポイントの増加だという。ここまでは歓迎すべきニュースである。

一方で、「興味のある学問分野があること」を重視して大学を選択した学生は減少(2008年64.8%→2016年54.5%)し、「あまり興味がなくても、単位を楽にとれる授業がよい」は増加(48.9%→61.4%)した。どんな勉強をしたいかわからないままに進学してくる学生が多いから一方的講義は効果が出ない。だから大学側はアクティブ・ラーニングを増やそうとしているが、アクティブ・ラーニングを選択しても単位が取れる程度に頑張っているだけでは効果は限定される。

学生生活については、単位僅少者などを除いて教員はほとんど指導しないのが普通である。これは大学生を大人と見なしているからだが、調査結果によると学生生活について教員の指導・支援を求める割合が15.3%から38.2%へと急増している。保護者のアドバイスや意見に従うことが多い学生、困ったことがあると保護者が助けてくれると考えている学生も年々増加し、前者は約半数で後者は過半数を超えている。総じて、大学生は大人になり切れていない。

学生の変化に大学側が対応するとすれば、自分で考える習慣を身に着けさせる方向に動き、単位を楽にとれる授業を減らし、アクティブ・ラーニングを増やすことだ。また、卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)をきちんと説明するのも重要である。ディプロマ・ポリシーを知って理解している学生のほうが、知らない学生より大学生活の総合的な満足度が高い(68.7%対47,3%)という結果が出ているからだ。