トランプノミクスの一つ、規制緩和は静かに進行中

トランプノミクスという言葉が懐かしいこの頃、第45代大統領は8月7日に就任200日を迎えました。

選挙公約にあった医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃・代替案の移行は失敗し、トランプノミクスを担う税制改革やインフラ投資の行方も不透明。米株も内需株で占めるラッセル2000の年初来リターンがマイナスに転じるなど、トランプ・ラリーも遂に息切れしたように見えます。

企業の間でも、トランプノミクスへの期待は剥落しているかのようです。ファクトセットによると、S&P500構成企業のうち米4~6月期決算発表のカンファレンス・コールで“トランプ”、“政権”と言及した企業は全体の12%に過ぎません。米大統領選直後にあたる2016年10~12月期時点の49%から急減してしまったのです。

政策別でも、ご覧のような結果となりました。


(作成:My Big Apple NY)

とはいえトランプ政権下、1月20日以降の法案成立数は就任200日時点で44本とレーガン以降の大統領1期目平均の47本とさほど変わらないのです。このうち3割に相当する14本は、オバマ前政権が発表した規則の発効を阻止したものでした。共和党の努力の賜物で、共和党が両院の過半数を獲得していた1996年に成立した議会審査法を活用しています。同法によると、管轄当局が新規則を公布してから一定期間以内に議会上下両院が過半数で合同決議が可決すれば、大統領が拒否権を行使しない限り発効を阻止できるのですよ。オバマ前政権の遺産を葬る期限は4月末までだったところ、共和党が実績作りの一環として新規性の成立にブレーキを掛けたといえます。導入が見送られた規制一覧は、こちらをご覧下さい。

もちろん、大統領も規制の発効を阻止する手段を有しています。2月24日に署名した大統領令で各省庁に見直しを求めタスクフォースの設置を命じました。さらに、大統領直属機関で予算策定のほか経済的評価を担当する行政管理予算局傘下の情報・規制問題室(OIRA)は7月、2016年秋時点で検討段階にある規則のうち469件の取り下げ、391件の再評価の実施を発表しています。トランプ政権と共和党議会は、静かにそして着実に規制緩和を推進していたのですね。だからこそ、規制改革担当の特別顧問だったアイカーン氏がOIRA室長に就任するラオ氏に遠慮したとも言えるのでしょう・・・少なくとも建前上は。

(カバー写真:Brandon Warren/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年8月22日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。