高校球児から教わる「算数」「数学」の攻略法

荘司 雅彦

甲子園の高校野球を見ていてつくづく思うことは、「強いチームはバントがうまい」ということです。

以前、高校時代に野球部で活躍されていた佐山展生先生にお話を伺う機会がありました。先生曰く、「野球の基本であるバントだけは徹底的に練習をさせられた。プロ野球の投手がウエストするボールにでも食らいつける自信がついた」とのことでした。強豪校は、例外なく基本練習をしっかりやっているということを、甲子園大会を観て痛感しました。

ところで、中学受験算数や高校大学受験数学に苦手意識を持っている人がたくさんいます。
私は大学受験では文系だったのですが、実は、最大の得意科目は数学で最も不得手な科目は現代国語でした。現代国語に至っては、地方の公立の中高合わせて「5」をもらったのはたったの一度きりという悲惨な状況でした(汗)

入試レベル程度の数学の得手不得手と頭の良さは、あまり関係はありません(少なくとも私はそう思っています)。
基本問題を徹底的に反復練習するだけでかなりのレベルに達することができ、応用問題で力試しをする余裕があれば、東大文系数学4問中3問完答程度のレベルには到達します。

あれこれ理屈を考える必要はさほど(あくまで「さほど」です)ありません。
分数を分数で割るとき、割る方の分数をひっくり返して掛け算をしますよね。どうしてそうするのかをあれこれ考えず、「そんなものだ」と思って反復練習をすればいいのです。これは、確率であろうと微積分であろうと同じです。反復練習をしているうちに、なんとなく理解できるようになります。

ところが、多くの受験生は、基本問題の反復練習をあまりやらずに入試問題レベルの応用問題に取り組んでしまいます。銀行員時代の私の上司が、「僕は数学はものすごく理解できたのに、なぜか点数が伸びなかったんだよ」とボヤいていたことがありました。

私が「条件反射的に手が動くくらい基本問題を解きましたか?」と尋ねると、「だって、そんなの時間の無駄だろう」とのお答えでした。きっと、その上司は頭が良すぎて基本を怠ってしまったのでしょう。

このように、数学の成績は頭の善し悪しではなく、基本問題が条件反射的にできるようになるかという練習量の違いなのです。基本問題が条件反射的にできるからこそ、基本問題の組み合わせである応用問題が解けるようになるのです。基本事項が反射的に出てこなければ、(基本の組み合わの)応用問題を考える時間がなくなってしまいますから。

中学受験算数では、基本問題の反復練習の重要性がより一層高まります。日々成長している小学生の頭脳にとって、3ヶ月前に練習した基本問題と今練習する基本問題は理解が全く違ってくるからです。

そのあたりを理解せず、基本問題の反復練習をさせることを私が怠ってしまったため、娘は中学受験算数の成績がとても不安定でした。幸いにして、6年生の後半になってミスターツカムこと塚本誠一郎先生の「基本問題を7回繰り返せ」という言葉に出会うことができたため、本試験はいずれも楽勝でした。入試直前は、過去問以外はひたすら基本問題を反復練習させました。

甲子園強豪校の選手といえば、東大合格者や有名中学合格者の比ではありません。強豪校の選手全員集めても、せいぜい100人くらいでしょう。他方、東大は毎年3000人以上も合格します。

どちらが難関かは一目瞭然ですよね。

そんな甲子園強豪校の選手たちが、基本であるバント練習を繰り返しているのです。
数学や算数が苦手だと投げてしまう前に、いじいじと基本問題の反復練習をしてみましょう。きっと、驚くような成果が出せるはずです。

荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年8月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。