別稿:小島敏郎氏による市場関係者への説明会発言録

(アゴラ編集部より:以下は川松真一朗氏のブログに掲載された、東京都特別顧問・小島敏郎氏の市場関係者への説明会議事録の内容です。一部レイアウトや語句補充の補正)

2017年7月18日  小島氏による説明会@東卸会館  14:00~16:21

(参加者)今回、小池都知事からスローガンとして「築地を守る、豊洲は活かす」という発表があった。その経緯・経過について皆さんも分からない点が多いと思う。また、それについて東京都はまだ説明会を開催する事すら拒んでいる。時間が無い中、情報をきちんと共有し、現状どのようになっているのか、これからどうしたら良いのかを仲卸として真剣に考えていかないといけない。今日は若手の皆さんに集まって頂いた。小島先生には、なぜこういう経緯・経過になったのか、なぜ築地と豊洲を活かすという、双方を市場として活用するような形で考えられたのかという事をご説明頂きたい。また、今日は中央区選出の都議会議員の西郷さんにも来て頂いた。西郷さんには、小池知事とも都民ファーストの会としてパイプ役になって頂けるという事だ。今日は皆さんの意見を聞きたいということで参集して頂いた。

(西郷歩美・現都議)私は23日から都議会議員に就任する。皆様の意見を沢山頂き小池都知事へパイプ役として繋げ、頑張っていくので、今後ともよろしくお願いしたい。

(小島)私はずっと行政官として政府の仕事をしていたが、役所の仕事というのは一つは条例である。国の方が自由度が高いので、何か問題があれば法律を作れば良いとか、法律を直せば良いと考える。これが地方自治体や一般の会社になると、“法律がこうなっているからできない”とか、“条例でこう決まっているからできない”となる。霞が関にいた人間は法律を作ってきた側になるが、“法律(政令)、または条例を変えれば良い、通達さえ変えればできるのではないか”、というふうに物事を考えるので、予め法律がこうなっているからできないという議論は、ほとんどしない。小池さんは、問題があれば法律を変えてもらえば良いんじゃないか、という感覚を持っていると思う。また、議会は予算もそうだが、多数でないと何もできない。過半数が取れなければ、結局、意見を言っているだけで何も変わらない。過半数をどうやって取るかが大事。今は都民ファーストと公明党で過半数はいくが、案件によってはそうならない場合もある。そうはいかなくても、いろんな組み合わせで多数を得れば、予算を通し条例も通るという事になる。どうやって数を計算するかが非常に大事。西郷さんには、過半数を取るためにはどうしたら良いか、また、与党が過半数を取れば何でもできるという訳ではないので、案件ごとに良く話し合い予算を取って頂きたい。

知事選を始めた時には、11/7の移転は決まっていた。当選後すぐ、まず農水省への認可申請をしなければいけなかった。当時は、“市場はもうできている、土壌汚染対策もやっている、議会も了解している、業界団体も皆了解していて現場の反対はない、11/7に移転しないと環状2号線がオリ・パラに間に合わない、移転の準備をしている業者も混乱し迷惑する、だから11/7に移転しなければいけない”と言われていた。小池さんが立候補し、“築地はどうしようか、どうすれば良いか”という話になったが、とにかく材料が殆どない。一体何がどうなっているかが分からず、“当選したら色々と材料が入るから、その時点で考えましょう、拙速に移転するとか移転しないとか言う事はできませんよ”、ということで“立ち止まって考える”という事を言った。この結論に至るまで10日位かかった。かなりいろいろと考えていて、軽々しく言った訳ではない。結果、当選し8/2に知事就任となった。その後、移転延期まで1か月かかった。これは都庁の中でいろんな材料を探して、もう少し慎重にやらないと危ないという事で、豊洲移転を延期した。そして、1年かけて「築地を守る、豊洲をいかす」という基本方針を決めた。この基本方針は変わらない。1年かけたものをそうそう変える事はない。これは、築地市場は5年後を目途に再開発をする、環状2号線は五輪後に開通させて輸送拠点として活用する、その後食のテーマパーク機能を有する新たな場として東京をけん引する一大拠点とする、豊洲は冷凍・冷蔵・物流・加工等の機能を強化して総合物流拠点にする、というもの。なぜ再開発をするのかというと…

1、 築地ブランド価値を更に高める。
築地は2020年のオリンピック以降も、東京の世界への発信の重要な拠点になる。築地の土地を民間とともに有効活用して、自立的な経営を目指す。場外と一体となって、世界の食の関連事業者を集積するという構想が考えられている。移転する理由は、まずは時間である。最も短い時間で築地を開発する。施設の老朽化は早くやらないといけない。いつ地震があるか分からないというのが一つの課題である。また、特に仲卸は経営状況が厳しく、いつまで持つのかというのが現実にある。営業しながらの改修は難しい。今の築地は、築地市場協会を含め6団体の合意がなければできないというルールの中で、その合意が得られる見込みがない。そこで建替えの種地を外に求める、その種地が豊洲市場という事だ。ローリングは種地が無いとできない。新しいブランドを創造するという点でも、今のままでは、この築地市場内の古い慣行で何もできない。新しい経営スタイルを作らないと発展はない。また、卸売市場の変化もある。取引はセリから相対取引が増加し、市場の役割は物流・加工機能が増加している。つまり、市場には未来がない。ところが、築地にはポテンシャルがある。これは築地だからである。立地の良さも活きるのではないか。5年後に作る築地の市場は、仲卸の目利きを活かしたセリ、市場内取引の確保というのがメリットになる。築地のノウハウとブランドを生かした消費者向けの新事業をやる。これは世界に開かれた食の集積。地域との一体化で一大観光拠点として発展する。

2、 市場の持続性
市場を取り巻く環境と仲卸の経営状況は厳しい。卸売市場、特に仲卸業はこのままでは衰退するという認識は、多分農水省も同じだ。卸売市場は斜陽産業の特徴を備えている。中間流通の抜本的な合理化が、今の政府の課題だ。これは、実態は先行していて、後から卸売市場法が追いかけているという状況になっている。これまでは、市場施設は豊洲が良いのか築地が良いのかという議論をしていたが、それ以前に、仲卸が無くなっていくという大きな問題がある。取り扱う生鮮食品の需要が減少傾向にあり、マーケットが縮小している。卸売市場そのものの役割も減少している。競合の流通ルートが出ている。斜陽産業はどういう運命を辿るかというと、税金を投入して延命するが最終的にはマーケットから廃業し、無くなる。人口の減少、高齢者の増加、食生活の変化等で生鮮食料品の需要そのものが減少。農水省のデータを見ても、着実に魚介類の需要は減っていく。市場流通の割合も減少、担い手も減少する。取扱量もどんどん減って、今、魚介類の市場経由率は51.9%。東京の卸売市場も平成に入ってから半分になった。この右肩下がりの傾向は変わらない。仲卸業者を全国で見ると、この10年間に4割位が廃業しており、業者数も着実に減少している。築地も毎年20事業者ほどが廃業している。利益率があまり高くなく、水産業は全体的に見ても経営は厳しい。卸も減少・再編が進んでいる。市場の数も減っており、どの数字を見ても右肩下がりである。流通の仕方も、セリは約2割で相対取引がほとんど。仲卸の販売先の50%を占めるスーパーも、鮮魚部門は不振である。単身世帯の増加、調理時間の減少等により全然儲かっていない。最近はネット大手が生鮮食料品に関心を持ち、流通の実態が大きく変わりつつある。例えば、アマゾンフレッシュ。サービス対象はアマゾンプレミアム会員で送料はタダ。会員向けに常温、冷蔵、冷凍の3つの温度管理をする。こういうサービスはお客様に高く評価されていく。これに対抗し、セブンiホールディングスはアスクルと業務提携し、単身世帯に狙いを定めた。ネットで注文すると全部がセットで届く。調理方法も全部書いてあり、それが10分作れてしまう、アスクルと提携する事により、1時間単位の時間指定で翌日届く。こういうサービス・動きがこれから大々的に進んでいくだろう。

法律面では卸売市場法が改正される。まず大幅な規制緩和がされる中で、将来的には時代遅れの規制は廃止する。自民党はずっと農業改革をやっていた。農産物の流通に比べると水産物は少ない。ある意味では水産物は巻き添えをくうのだが、水産物にはそれだけの政治力がない。今これは進んでいて、今年の6月9日に閣議決定がされた。経済社会情勢の変化を踏まえて卸売市場法を抜本的に見直し、合理的理由の無くなっている規制は廃止すべく、平成29年末までに具体的結論を得て運用等を改めるという事で、今年の末には成案が得られるという事になっている。規制緩和については、今まで卸売市場の重要な原則であったものを廃止する。第三者販売の禁止、直荷引きの禁止、商物一致の原則。あと2つの原則もどうするかが検討事項に上がっている。
以上をまとめると、少子高齢化で世帯構成も変わり、生鮮食料品全体のマーケットは縮小。大規模小売店のネット販売等の強力な競争相手が出現・拡大する事により、右肩下がりの取扱量や取扱額は更にその傾向を強めていく。市場流通の担い手そのものの数も減少し、10年後はかなり大きく変わっているだろう。法律も来年には大きく変わる。そうすると、仲卸業者はこれまでの営業形態では20年、30年を考えるとなかなか生き残れない。今までの法律に頼って、あるいは法律が変わる度にビクビクするようでは先の展望は開けない。これが、仮説としての結論である。

仲卸はどうすれば生き残れるだろうか。卸売市場の変化を見ると希望がないように見えるが、たとえ日本から市場が無くなっても築地は生き残れるだろう。ものすごく厳しいが、どうしたら生き残れるか。既に基本方針は決定した。この基本方針に対して積極的に乗るかどうか、これは戦略の問題だ。自分達の仕事なのだから、自分の力で未来を切り開いていかないとしょうがない。

「築地は守る、豊洲を活かす」この考え方は市場機能の分離である。市場内流通は築地に、転配送と市場外流通は物流なので豊洲。この事が分かっていないので、同じ市場を2つ作るのか?卸と仲卸を分けるのか?という話になる。現状は築地に全部の機能がある。卸売市場を種地としての豊洲に移し、出来上がるまでの4年間をどうしのぐか。4年後には市場内取引は築地、物流機能は豊洲。その時に中央卸売市場はどうなるかというのは、来年の卸売市場法の改正の姿を見て考えれば良い。

築地再開発は民間会社が建設し運営する。東京都の入札を通すと建設費が高くなり、投資資金の回収は難しくなる。民間で1,000億円できるものが、東京都の入札を通すと2,000億円になる。それは単価が高いため。なので、できるだけ東京都から切り離す事が必要。東京都は各種調査のお金は払うが、建物を建てるのは民間のお金でやる。特定目的会社である管理会社と、東京都の間で運営基本協定を結ぶ。定期借地権を締結し、運営する。卸売業者との契約は、この基本協定の中に使用料の設定をして、高くならないようにする。民間になると使用料が高くなるのではないかという事だが、ここは協定事項を決めて安く設定する。

問題は中央卸売市場の看板が必要かどうかだが、必要ないと考えた方が私は良いと思う。なぜなら、卸売市場法は変わる。卸売市場という看板を背負うと豊洲の赤字を背負わなくてはいけない。築地で稼いで豊洲の赤字を埋めるという事になる。豊洲の赤字は巨大なものであり、その赤字に引きずられて他の市場が潰れていくという構造にある。各市場としても処分・整理して、確実に計算した方が非常に有利だ。今までは、築地と大田と食肉で稼いで皆がその利益を配賦していたが、豊洲の赤字はものすごく大きいので、皆が沈没してしまう。看板を背負うと赤字がついて回る。また、市場内取引をどうやって維持するか。現在の仕組みを前提とすれば、豊洲物流センターと機能を分けても問題ないだろう。大手スーパーは魚を先に確保し、トラックで豊洲へ運んで下ろし、荷捌きをして配送する。今はここの使用料を取っていない。卸は今の卸7社が前提ではない。青果は豊洲で完結し築地には戻らない。“中央卸売市場は豊洲市場“という前提であれば、青果はそこに残って営業となるだろう。青果にとって5街区は十分すぎるほどの施設である。ものすごく良い。だから赤字になりコストの回収ができない。水産物の買回りは豊洲場内でも遠く、2キロ位ある。2キロなら結局同じ。逆に、なまじ場内にあると、買出人の負担ではなく仲卸が持っていかなければいけないかもしれない。場所が変われば買出人の負担であり、それはそれで良い。食のワンダーランドなので、仲卸のいろんな店はこの築地に戻ってきて頂いて良い。

市場会計は事実上破綻している。最近、テレビ等で豊洲を見た一般都民が、「せっかく作ったから使わないと損だ」というコメントが流れているが、開場すればするほど大きな赤字になり、ここは使えば使うほど赤字が増える。それを言わないので、誤ったメッセージが流れる。使っていないと一日500万、使うと600万近くかかる。看板を背負うと赤字も背負う事になる、ここをどう考えるかだ。どうしても看板が欲しければ、これはちょっとこれからの話になるが、東京都の独自条例を作れば良い。そうすれば、法律がどう変わろうが東京都で判断ができる。市場の使用料収入は11市場で110億円しかない。豊洲1個で毎年21億円出る。議会で提出される予算・決算は、減価償却込みの数字が出るので、毎年100億近い赤字決算を承認しないといけない。これは何年か経つと、150億位になるだろう。それがずっと続く。今は皆さんが”開場しましょう“と言っても、代替わりした時、”誰がこんなものを開場したんだ“、と言う都議会議員が出てくる。毎年150億の赤字決算なんか承認できるのか。50年、60年続くんですよ。これは私はありえないと思う。でも、豊洲に”移転しろ、移転しろ“と言う人が、赤字決算を毎年承認する。今はこういう状況になっている。

築地で営業しながらの整備は実現の方策がない。以前築地でも説明したが、技術的には可能、できるかできないかは皆さん次第。皆さん次第というのは、了解が取れるかどうか。でも、結局、卸と青果の強い反対運動があって、これはなかなか難しい。強行に現在地再整備をしても動かない。そうなれば仲卸が持っている持ち時間がどんどん減っていく。うまくいって現在地再整備は10年弱だ。仲卸が10年も持つのかという話は先程もしたが、これがどんどん延びていくと、施設ができても仲卸がいない状態になる可能性がある。築地再整備案は、業界の合意が取れない。共産党だけでは過半数は取れず、再整備には予算が取れない。全くリアリティがない。経営は現実の世界なので、リアルに生き残りを考えないといけない。仲卸の人と話をしていて聞くのが、「自分たちは多数派だが主流派じゃない」という言葉。つまり、執行部にはいない。しかし、業界の合意というのは最終的には執行部でとやるので、それが得られない。仮に取れたとしても、時間がかかり過ぎる。現状の変化が早すぎるし、法律の改正も早すぎる。このまま残っていると、築地に残る古い慣行が温存される。相変わらず築地市場協会とか6団体との協議をやらないといけない。そもそもガバナンスのない人達を相手にするのはすごく大変。とにかく一掃して向こうに全部行って頂き、更地に新しいグループを作らないと機動的に動かない。

しかし、一時的にせよ豊洲移転にはいろんな課題がある。
1 安全・安心の課題の解決。他に客離れの不安、経営の不安。
2 使い勝手の不具合の解決。
これは営業していく上ではすごく大きな問題であり、一つ一つ解決していかなくてはいけない。解決する上では金がかかるが、これに金をかけているとまた赤字が増えて経営が難しくなるので、そう簡単には行かないところもある。

東京都の信頼回復のための行動で、豊洲移転について「安心・安全の問題はやる、風評被害の払拭はやる」とあった。ここで“豊洲に行ったら終わり”と諦めてしまうと思考停止になってしまう。何もしなければ物事は好転しない。生き残る道はある。ここからは皆さん次第なのだが、これからは交渉事なのだ。この場合、徹底して知事方針に賛成して生き残り・発展の条件を考え・提案し進めるべきだ。豊洲の5街区と7街区はかなり良い。これは、彼らが東京都と手を結んだから。6街区はごちゃごちゃしていたので、調整ができていない。動線から言っても6街区と7街区が今のようになっているのは、物の流れとしては理解しがたい。その時点で、仲卸としてはあの場所はものすごく使えない。逆に言うと、5年後に仲卸が帰ってきても、卸と青果は問題無い。そういう意味で、“賛成してやりましょう”と言う方が取れる事は取れる。これは交渉のテクニックの問題。整備されている理由はそういう事だ。協力する側が要求を出して良い物を作った。全面協力で何を得ていくのか?仲卸は全員移転で全員帰還が原則だが、現実にはそうならないだろう。“オリ・パラの動線(環状2号線)、駐車場にも協力すます、でも調整しましょう”と。帰還の補償はいろいろある。都議会で知事に表明してもらい、予算を立てる。“帰ってくる”というのも都議会で決議すれば良い。知事が表明し決議する。そして築地再開発を始動する。豊洲に行くまでには築地再開発の構想を作らないと間に合わない。もうその作業に入ってしまう。後で途中からひっくり返すのは大変だから、仲卸として最初の構想に入らないといけない。そこに仲卸として積極的な提案をする。

“豊洲への移転、築地への復帰に伴う業者、特に仲卸業者の経営支援措置については検討する”、 “情報公開をしながら相談しながらやる”という事を、知事の方針にも書いている。仲卸業者は帰ってきて頂く、他は帰って来なくて良い。本当に5年でやるのは、すごくタイト。オリ・パラが終わってアスファルトをはがして、すぐ工事にかかる。今、頭にあるのは2022年9月。うまくいくためには、開場した後の年末商戦で客が来る前に開店させる。その波に乗らないと新しいものが浮上していかない。新しいものを作るにはオープニングセールが絶対必要。そこで設定したのが2022年9月。5月に移転と出ているが、それまでもう1年ない。その前に基本構想を作ってしまう。土壌汚染調査、文化財調査、アセス等そういった手続きを全部2年間でやってしまう。かなり急がないとできない。9月で良いとか来年で良いとか言っていると、完全に間に合わない。これは新しい築地が延びるという事。どんどん市場を取り巻く環境や法律が変わっていく中で、無為に過ごしている時間はない。とにかくオリ・パラは協力すると言ってしまう。築地で必要なのはバスが850台、乗用車が1,800台。実はこれは楽勝で、全部更地にしなくても改修できる。勝どき駐車場も使えば良い。時間は敵か味方か、という問題を皆さんに良く考えて議論してもらわないといけないが、全般的に仲卸の経営は良くない、という統計しかない。リスクはいっぱいある。自然体での廃業、移転後の環境に適合できずに廃業、帰ってくる金が無くて廃業等々。そしてようやく生き残っても、軌道に乗るまでの経営をどうするのか。元々取り巻く環境が厳しく、法律も応援してくれないという中で、どういう措置を講ずれば大丈夫なのかというのは、今誰も考えていない。皆さんが心配になるのは当然の事だ。
ここからは知事が言わなかった事だが…

(ここから、小島氏の個人的な再開発構想を語る。スライドの写真が無く、発言も良く聞き取れないため、省略)

~意見交換~

(参加者)マイナス面が非常に多い中で豊洲に移転してどうなるのか。築地ブランドは仲卸が担っているという思いから、都知事がこういう事を考えているのだと思う。仲卸が築地の価値を高めるという点では合致しているので、ここは小池さんと協力して自分達のクオリティを守るためにも、自分達から声を出していかないといけない。今までは都が何でも作ってくれて、それに対して文句を言って話が済んでいたかもしれないが、もうそういう時代ではなくなっているということを、下の世代の人は感じていると思う。

(参加者)一番の懸念材料としてあるのは、民営化になった場合、商社等が築地に戻ってくる、あるいは築地で開業してから参入してくるという事。それは仲卸として認可さてしまうのか?

(小島)そもそもどういうルールを作るかを考えないといけないが、法律で仲卸だ卸だというのは、ほとんど無くなる。いわゆる“~の禁止“というのが無いから、札を持っていてもほとんど変わらない状態になる。原則そのものが皆撤廃されてしまう訳だから、誰に売っても誰から買っても良いというふうになる。条例でやれる形に落としてしまうのも手。つまり、みんな中央卸売市場になるみたいな。法律で無くなって必要に応じて条例で、というのはそういう事。だから、都条例でそれを書かないといけない。

(参加者)新しく作る都条例で、それを継承する事ができるという事か?

(小島)いざとなれば。都条例でやるのか協定でやるのかは、これから一定のルールが必要だ。今の築地市場のセリは、ある意味ではマグロの解体ショーみたいなもので、皆が見に来るようなああいう取引をやっている市場は世界にもあまりない。こういうものが残っているのはすごく特殊。議論すべきは、それを残すのは良い事なのか良くない事なのか。それが価値のある事ならば、金をかけても残すべき。相対取引も、品質管理上で非常に重要だという事であれば、価値がある事を証明しないといけない。

(参加者)同じ仲卸でも業会によってかなり形態が変わっている。今セリ物品は限られているが、そこで仲卸の目利き機能が発揮されているのは間違いないと思うので、そこはセットで考える人が多いと思う。

(小島)条例でも協定でも良いと思うが、わざわざ法律で廃止したものを東京都が残すならば説明をしなければ。自分達がこのルールに価値を見出し、それは都や都民のためになるんだという説明をしないといけない。

(参加者)それは最終的には議会でという事か?

(小島)いちいちそういう事をやるよりは、最初に民間と東京都の基本協定をやって、その中で議論していった方が良い。将来誰が知事になるか分からないし、議会だってどうなるか分からないから、自分達が話合いで運営できるようにした方が良い。契約の方が良いと思うが、今は知事与党が多数なので、条例という手もやろうと思えばやれると思う。

(参加者)以前、理事長の声明で、“中央卸売市場として残してくれ”という話があったが、中央卸売市場の看板とイコールになるようなものが受け皿としてできれば問題ないと思う。全体的に、この話に仲卸がついていけるかどうかという事だ。

(小島)法律が変わる段階で新たな事をやるには、新たな説明をしなければいけない。市場法の議論は、“昔は役に立っていたが今はそうではないから無くす”と言っているが、我々は今の時代だからこそ必要だという説明をして残そうとしている訳だから、ちゃんと議論しないといけない。

(参加者)逆にそれが築地のブランド価値を高めるという事になる。

(小島)小池さんも私も、仲卸が持っているこのシステムは今や世界ではほぼ無くなりつつあるシステムで、これは極めて経済的価値・文化的価値・加工的価値があると考えている。しかし、法律はそうではなく、流れは逆だ。逆行していくものを東京都は守っていく、違う形でこれを観光資源として発展させていく訳だから、ある意味流れに逆らった事をやるという事だ。

(参加者)中央卸売市場が無くなればセリも無くなると普通は考える。その場合、我々はどこから仕入れるのかというのが心配。今取引しているスーパー等は、おそらく豊洲に行くと思う。築地に仕入れに来るお客さんは料理屋、居酒屋等が主流となり、はっきり区別されると思う。今の築地魚河岸みたいなやり方で食べて行けるのかどうか。

(参加者)たとえ何年後という事であっても、築地に残れるというのは、自分はありがたいと思っている。しかし、不安要素はある。セリが無いとお客さんが築地に来てくれるのか、5年間の体力が持つのか、等々。でも、5年で築地に戻ってくる事を現実に思って、その5年間を皆で切磋琢磨して頑張れば良い。築地が繁栄する事が分かっていれば、荷受けも黙っていないのではないか。私は豊洲には魅力は感じていない。

(参加者)このまま行くと潰れてしまうのではないかという中で、どうしたら生き残れるかを考えなくて良いのか。新しい自分達の企業体として生き残る最後のチャンスだと思う。このままの仲卸で衰退していくのと、新しい形を作るのとどちらが良いかという事だ。ここにいる若手の皆さんがこれに乗ってみようと思えば、広がりが出てくるのではないか。

(参加者)今の市場法で行くと、間違いなく仲卸は消滅する。やはり、ここで我々はやり方を変えなくてはいけないと思う。

(参加者)築地再整備の道を残してくれたことに感謝しているし、期待しているのだが、資本を持っている外部が入ってくることは怖い。

(小槻)築地ブランドの中に合致するかしないか、そこは自分達でルール作りすれば良い。

(参加者)ある程度自分達で主体的にやっていかないと。作られたものだと、世の中が変わったらまたそれに対応しなければいけない。

(参加者)築地に戻る時にはどうしてくれるかではなく、どうしたいか。それを自分達から出していかないと、またいろいろなものに左右されてしまう。

(参加者)この計画には賛成しているが、実際帰って来られるのかという点が一番の不安。帰ってくる際には、補償もある程度してもらうという約束をしてもらえれば、皆の気持ちももっと変わると思う。

(参加者)今まで主流派は荷受けや青果で、我々は非主流派だったがそれが逆転する。問題はどう予算を付けてもらうかだ。仲卸が皆賛成して小池さんについているのだから、この案もアリだと思わせるのが大事。それには仲卸の方から、小池さんに話を持っていかないと。我々の価値を見出してくれているのは小池さんだと。そうすれば、我々の価値が上がるし今以上に儲けられる。

(小島)小池さんが言ったらもう結論だと、そうしてもらわないと困る。言ってしまったらそれで行くしかない。だから、次はかなり慎重にしないと。都民ファーストだけで過半数は取っていない。選挙の直前に言っただけであって、公明党とはまだこの構想について議論はしておらず、相談に乗るとしか言っていない。基本的には反対だろう。自民党と公明党は豊洲移転だった訳だから、これから調整しないといけない。でも、それは聞いてみないと分からない。

(参加者)豊洲にいく目途は立っているのか?

(小島)普通に考えてゴールデンウィークかシルバーウィークだろう。後ろに行けば行くほどスケジュールが詰まってくる。延ばせば何とかなるという状況ではない。こういうものはきちんと決めてやらないとできない。例えばどんなルールにするかというのも、東京都と特定目的会社との基本協定の中身をどうするかというのは、築地が市場内流通が成り立つような中身にして、仲卸から提案しなければいけない。帰ってくる時に何でもかんでも金を出せという訳にはいかない。一方で住民訴訟というのがあるので、住民訴訟で耐えられる内容の支援措置でないといけない。いろんな知恵を考えないといけない。あまり都が関わるとかえっていろいろトラブルの元になる。今までは、都が関わっていると良い事があったが、これからは都が関わっていると良い事は無い。

(参加者)舛添さんの時はいろんな人が嘆願書等を出しても、行政は一切見てくれなかったが、今は圧倒的にイニシアティブがある人の近くに仲卸がいる状況だと思う。積極的に協力する事によって自分達の次の舞台を作れる、そこに自分たちがその気になってもっと話を聞くかどうかだ。決まってしまったら当時と同じ思いをする。

(参加者)早山さんも慎重にならざるをえないと思うが、時間のない中でやらなければいけないとなると、理事長が動きやすい体制を作っていかないと。今日のような勉強会を皆さんにも聞いて頂き、総代や青団連の若手の方に声を上げてもらうのが良いと思う。

(小島)伊藤裕康さんや泉さんは上手かったというのも変だが、役所というのは、懐に飛び込んできた人の話は聞くが、反対している人の話は聞かない。今、懐に飛び込むかどうか、そういう交渉をするかどうか。ずっとアウトサイダーで要求だけしている人となるのか、協力をするからこれをやってほしいというネゴをするのか、今はその分岐点。

(参加者)知事はこの案は見ているのか?

(小島)調整は全くしていない。知っているかと言われれば知っている。

(参加者)まず仲卸全体に、先生の考えを一度認識してもらう必要がある。それに対してどう思うかは次の段階。具体的な不安材料は、築地に本当に戻れるのかという事と、2回の引越。先生の考えは確かに良い、だけど…という人は多いと思う。

(小島)知事の基本方針は公明党とすり合わせたものではないので、どの辺まで話を共有できるかはこれから。市場はかなりスペースがあるから何とでもなる。施設よりもどういうルールを作るかが大切。支援措置も、自分達の経営から考えるとこういう支援が必要だという事を言わないと、交渉のベースが無く議論ができない。工事が始まるまでの3年の間に、凝縮してプランを作っていく事になる。

以上


編集部より:このブログは東京都議会議員、川松真一朗氏(自民党、墨田区選出)の公式ブログ 2017年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、川松真一朗の「日に日に新たに!!」をご覧ください。