北朝鮮への追加制裁米国草案全文を読みたい!

英文記事も検索してみたが、ヒットしない。でも、読みたい。
日経だけかと思ったら、NHKも「液化天然ガス」も禁止対象商品だと書いているからだ。
きっと、間違いに違いない。

しつこく探してみたら、朝日がカッコつきで「石油、(原油の一種の)コンデンセート、石油精製品、天然ガス液の輸出禁止」と書いていた。
そうだよね、「天然ガス液」だよね。

これは、英語でNatural Gas Liquidと書く。だから業界では「NGL」と呼んでいる。Liquefied Natural Gas、すなわち「LNG」とはまったく別物だ。こちらが「液化天然ガス」である。
北朝鮮には「LNG」を受け入れる装置はない。

NGLとは、高温高圧の地下深いところでは「気体」だが、常温常圧の地上に出ると「液体」になる溜分だ。当然、天然ガスと一緒に生産される。

OPEC全体のNGL生産量は約600万BDもある。これは「生産枠」だとか「減産」だとかの議論の際には脇に置かれる。対象外なのだ。天然ガス生産量の多いカタールとかイランがNGLの生産量が多い。

シェール革命でシェールオイルのみならずシェールガスの生産量が急増しているアメリカも、当然のことだがNGLの生産量は多い。最近では、日本の石油消費量とほぼ同量の400万BD近く生産している。

北朝鮮のエネルギー事情についてはあまり情報がない。
弊エネブロでも4月25日に「#339 中国が北朝鮮向け石油供給を止めたら?」で紹介したが、2014年ベースのIEAによる北朝鮮データを日本と比べると、一次エネルギー全体で2.5%、石油に至っては0.3%(57.4万トン)でしかない。人口が5分の1程度であることを考慮しても、圧倒的に少ない。

ちなみに一次エネルギーの70%は国産の石炭である。
世界銀行による自動車保有台数でも、2010年当時で27万台程度でしかない(日本は7~8千万台)。
したがって、石油禁輸は庶民の生活云々ではなく、もろに戦車とか戦闘機などの軍事用燃料供給を遮断しよう、ということなのだ。

だが、拒否権を持つ中国やロシアが反対しているようだから、成立しない可能性が高い。さらに、プーチン大統領がいみじくも漏らしていたように、最近ロシアは3ヶ月間で4万トンの石油を輸出したそうだ。これは年間16万トンに相当する。

北朝鮮の石油需要はせいぜい年間50万トンから100万トン。1万~2万BDだ。これはISがちょこちょこ密売していた程度の数量だから、仮に禁輸しても密輸入で対応可能だろう。だから、公海における商船臨検許可も草案に盛り込んだのだろうな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年9月7日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。