FTの記事「サウジ在住外国人への課徴金が不動産市場に影響を与えている」(”Saudi expats levy weighs on property market” around 13:00 on 9th Sep 2017 Tokyo time)を読みながら、そういえばMBSが皇太子に昇格したとき、副皇太子は任命されなかったことを思い出していた。
7月下旬には、サルマン国王が生前退位する際の声明がすでに録音されている、という真意不明のニュースが流れており、一方で来年早々にサルマン国王が訪米するとの報道もある。確たることはよく分からないが、時間の問題でMBSが即位する方向であることは間違いがないだろう。だが、その時、誰が皇太子になるのだろうか?
副皇太子を置かないことは、過去の事例をみても別に不思議ではない。だが、国王即位のときに皇太子を置かない、ということは考えにくい。でも、現在32歳のMBSが国王となった場合、彼より年長の王子が皇太子になることはないだろうから、より若い世代が任命されるのだろうが、適任者がいるのかな。
外からは伺い知れない王族内では、すでに議論がなされているのだろうか。
サウジ通の人の話が聞きたいな。
さて、折角だからFT記事の要点を少しだけ紹介しておこう。
・石油依存のサウジ経済は、2014年に石油価格が崩壊して以降、ほぼゼロ成長となっている。この影響が不動産市場に及んでいるのは不思議ではない。
・主要都市ではすでに住宅用、商業用、小売物件、すべてで賃貸料の落ち込みが見られる。
・あるコンサルの調査では、2014年以降、首都リヤドで年率3%のペースで下落している。紅海沿いのジェッダでは2Qに前年比9%下落しており、来年にかけてさらに下落すると見られている。
・7月に導入された外国人とその扶養家族への課徴金などの新制度が市場に影を落としており、多くの外国人が帰国するものと見られている。
・サウジ最大のイスラム銀行の投資銀行部門のMazen al-Sudeiri(あの、スデイリ・セブンの親戚?)曰く「新制度は外国人を帰国させる、すなわち人口減、需要減につながる」。
・地元の英字紙Saudi Gazetteのコラムニストは、1000万人以上いる外国人労働者とその家族にとって耐えられないほど生活コストが上昇するため、2018年末までに3,300万人の人口から250万人もの外国人が帰国することになるだろう、と書いている。
・課徴金は、当初一人あたり月額26ドルで、向こう3年間に増額される予定。政府は初年度7億ドルの収入を見込んでいる。
・だが、この財政改善策がすでに悪化している不動産市場にさらなる悪影響を与えている。場所によっては不動産価格および賃貸料は50%も下落するところがあるだろうし、「逆移民」は他の経済分野にも悪影響を与えるだろうと指摘するコンサルタントもいる。
・住宅建設を含むインフラ、交通関連支出は、2017年前半、124億リヤル(33億米ドル)だったが、これは年間支出予定額の1/4だった。保健、教育、軍事部門は計画通り、年間予算の半分を支出している。
・MBSは昨年暮れ、住宅不足問題を解決するため、ソフトローンと政府の不動産開発基金からの資金で「揺りかごから墓場まで」の福祉に慣れきったサウジ国民のため、住宅建設を行う、と発表していた。
・だが、住宅不足は「1~2年で解決できる問題ではない。より長期的な取り組みが必要だ」とあるコンサルは指摘する。
そういえば「ビジョン2030」への具体策として昨年6月に発表された「国家移行計画=NTP」の見直しが行われている、というニュースも流れていたな。
アラムコのIPOは予定とおり行われるのかな?
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年9月9日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。