中国を舞台に、再びビットコインの動向が注目を集めています。同国当局が9月4日に新規仮想通貨公開(ICO)を禁止した後、9月8日には財新が中国国内でビットコイン取引所が閉鎖される可能性を大々的に報じました。対象は北京を拠点とするOKコインとHuobi、上海を拠点とするBTCチャイナ、Bitfinexと考えられます。ビットコイン市場の約3割が中国国内で取引されているだけに、大きな衝撃を呼びました。
ビットコインは10日に一時4,000ドルを割り込み、10日につけた4,950ドルから約20%も急落。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が自国の仮想通貨を検討するエストニアに対し、「ユーロ加盟国は自国通貨を発行できない」と発言したことも冷や水を浴びせたのでしょう。
時をほぼ同じくして、9月11日付けで人民銀行が為替フォワード取引に義務付けていた準備金の預け入れを求める規則を撤廃しました。8日に商業銀行に通知済みで、金融機関が顧客のために外貨買い・人民元売り予約を行う際、20%相当を準備金として預け入れてきましたが、11日からゼロとなります。10月18日に共産党大会を控え国威発揚に伴う人民元高誘導が意識されていたものの、急速な人民元高は輸出企業の業績を圧迫しかねず当局が打開策に踏み切ったようです。
人民元安圧力が掛かれば、中国人投資家の間でビットコイン買い意欲が高まるとの通説があります。これが正しいなら、中国当局はビットコインを取得する手段を断ってしまえばよい。ビットコインの取引所閉鎖のニュースを流し、人民元安加速の一端を封じ込めようとしたと考えられないでしょうか。
しかし、年初の流れをみると人民元とビットコインはほぼ比例して推移してきました。
過去は相関関係薄く。
(作成:My Big Apple NY)
その理由に考えをめぐらせると、思い出すのが一連の中国での資本規制強化です。外貨両替制限は1年間で5万ドル相当のところ、個人が20万元=約3万ドルを超える送金を行う場合、当局に報告する義務が生じます。さらに、新たな規制では外貨両替制限を通じた債券や保険関連商品の購入、さらに不動産への資金割り当てを禁止しました。このように、中国人にとって海外投資は一段と困難になっています。
規制強化が今後いつまで続くか分からないのであれば、保有する人民元でいかに外貨を獲得するかが重要になってきますよね。今ある資産を有効活用すべく、人民元高局面でビットコイン買い意欲が高まったとしても不思議ではないような気がします。
もちろん、企業にも及ぶ資本規制が奏功し人民元が上昇したのであって、ビットコインも偶然同じタイミングで買いが優勢となったとも考えられます。例えば、日本政府は今年4月にビットコインを貨幣として機能を持つものとして承認されましたよね。
ビットコインは20%下落した後、米株でいう弱気相場に突入したところで下げ渋りをみせています。中国社会科学院の金融研究所関係者による「取引停止は一時的」との発言が仮想通貨関連情報を扱うサイトから10日に伝わり、材料視されたのかもしれません。果たして本当にビットコインをめぐる規制強化が「一時的」にとどまるのか、中国の真意を確かめるには、次の一手が待たれます。
(カバー写真:Mitch Altman/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年9月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。