トランプ政権誕生が決定した2016年、家計所得は過去最高更新

不動産王の異名で知られるドナルド・トランプ氏が2016年の米大統領選で白人の中低所得者層の支持を得て勝利した理由に、「低迷する所得」への不満が挙げられていましたよね。

格差社会が問題視されたものの、こんなデータが飛び出してきました。

「米国の家計所得、中央値は2016年に前年比3.2%増の5万9,039ドルと過去最高を更新!」

はい、2016年の家計所得はインフレ調整済みで1999年のピークにあたる5万8,665ドルを抜けてきました。金融危機後に落ち込んだ所得は、低金利政策をはじめとした景気支援が奏功し改善していたんですね。

就任前でも、トランプ米大統領にとってはグッドニュース?


(作成:My Big Apple NY、米国勢調査局より)

それだけではありません。世帯所得別でのシェアをみると、中央値以下にあたる4万4,999ドル以下は低下基調をたどり、2016年に43.1%と1998〜99年と合わせ統計が開始した1966年以来で最低でした。10万ドル以上に至っては27.7%と、2年連続で過去最高を更新しています。逆に、中央値を含むレンジ5万〜7万4,999ドルは17.0%と過去最低をつけた2015年の16.6%を上回ったとはいえ、下限にとどまっていました。

所得別のシェア、10万ドル以上の上昇が顕著。


(作成:My Big Apple NY、米国勢調査局より)

年齢別でみれば、所得格差が浮き彫りになるのでしょうか?2016年の年齢別・所得中央値を前年比で比較すると、ミレニアル層の悲哀など嘘のよう。水準が低かった事情もあるとはいえ、15〜24歳が最大の伸び率を記録し13.9%に及んでいたのです。


(作成:My Big Apple NY、米国勢調査局より)

つまり、米国勢調査局が発表したデータだけを大雑把にみれば、格差は縮小しつつあり米国民は豊かになってきたと言えます。上位1%とその他99%との格差は依然として大きいのでしょうが、それはまた、別の話。

その割に、2016年の国内総生産(GDP)は1.5%増と2010年から突入した景気回復サイクルで最低にとどまりました。原油安で鉱業が落ち込み、関連産業へ波及して企業の設備投資が減速したためです。個人消費は2.7%増と、2010年以降の平均2.3%増を上回っていました。

中間層が縮小しているとの説は、フェイクニュースだったかのようです。とはいえ、年初から新車販売台数が前年割れを続けるように、Fedの金融政策正常化が家計に影響を与えつつある状況。米国勢調査局は過去に統計手法を変更した事情もあり、今後を占う上で2016年の結果を根拠に楽観的な見通しを描くのは早計かもしれません。

(カバー写真:Roma Novitskiy/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年9月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。